■1月のメモ「話に尾ひれがつく」■
日曜日のスーパーフェスティバル用に作成したチラシに、Twitterで見かけた熱烈な『マイマイ新子』ファンのpencroftさんの言葉を、コピーとして使わせていただくことにした。 「マイマイ新子は日本映画史/世界アニメ史において「事件」なのですが、それをどう伝えればよいのか困ります」
……これを読んだとき、思わず膝を打ったというか、「でしょ?でしょ?」と思ったし、「そこまで言う人が現れたか!」と驚きもした。
このツイートは、たまごまごさんの「マイマイ新子見てきた。これ話題にならないとおかしいだろう・・・。宮崎アニメと同じくらい話題になっていい作品だと思う。...」に答えたもので、僕はこのやりとりをキッカケに、熱心にTwitterをのぞくようになった。
9日からのラピュタ阿佐ヶ谷でのアンコール上映、30日からのシネ・ヌーヴォでのレイトショー。これらは、ネットでの言葉が糾合された成果だと、僕は思っている。
Twitterでの発言を、チラシに使うことを快諾してくださったpencroftさんには、この場でもう一度。ありがとうございます。これほど強力なコピーは、ありません。
なんで、スーフェスでチラシを配るのかというと、いまだに『マイマイ新子と千年の魔法』はビックリするぐらい、知名度がないからです。
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「あんたが買わなくて、誰が買うの?」と周囲から言われていた、小林誠さんの『ハイパーウェポン二〇〇九 宇宙戦艦と宇宙空母』を買った。凄い、ギャラクティカ本じゃん、これ!
カラー12ページに、『ギャラクティカ』の各メカの詳細なCG、模型が満載!
でも、ここまで『ヤマト』界隈のクリエイターが『ギャラクティカ』ラブだと、実写版『ヤマト』のビジュアル・イメージが似てくるのは、仕方ないよね。
似てしまうとか、あえて似せるとかいうのは、実はたいした問題じゃない。
実写版『ヤマト』が『ギャラクティカ』をお手本に、より素晴らしいビジュアルをつくってくれれば、それはそれで意義があるし、「せっかくなら、ギャラクティカを越えて欲しい」と願ってもいる。
だけど、評価・報道する側が『ギャラクティカ』を知らないという状況は、誰のためにもならない。
いまの時代は、情報が複合的に存在している。雑誌で読んでもらうことを待っているより、誰かがTwitterで名コピーをつくってしまい、それで広まる場合もある(実際、実写版『ヤマト』に関しては、「和製ギャラクティカ」という名フレーズが発明されている)。
ただ、それは既存のマスメディアに携わる人間が、無知でいてもいい理由にはならない。
「紙媒体はもう終わりだから、今度はTwitterで情報を流そう」とか、そんな単純なものではないのです。
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例えば、昨夜、あるアニメの取材のために四谷の飲み屋にいたのだけど、僕がすでに見た映画が、それなりの専門スキルを持った方の口から語られると、まるで別の聞こえ方をする。「その映画なら、もう見ましたよ」というスタンスに立っていては、そこでしか聞けない「情報」を取り逃がしてしまう。
それは、「情報を足で集める」ということとも、またちょっと違う。僕が別の飲み会で「四谷で、○○さんが、こんなこと言ってたよ」と誰かに呟いたとき、それがまた別の経路から、思わぬ加工を施される。
情報が複合的に存在している、とは「話に尾ひれがつく」過程に、ちょっと似ている。「話に尾ひれがつく」のは、その情報が生きている証だと思う。噂やデマも使いよう、ではないだろうか。
話がわき道にそれたが、スーフェスの準備もほぼ終わったし(僕の同人誌は刷り上ってきてないが)、とにかく映画館へ行こう。
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コメント
斯様な過ぎたお言葉をいただいて、こちらこそ本当にありがとうございます。廣田さんのメールに承諾の返信をした後、一日ステキな気分で過ごしました。
本屋で映画雑誌なんぞ立ち読みしますと、2009年ベストテンだのゼロ年代ベストだのにぎやかにやってまして、そこには「マイマイ新子」なんてカゲも形もありゃしない。おい、マジかよ! と思うのです。銀幕でこれほどの事件が起こっているのに、誰も気づいてない。つい10年前には、「クレヨンしんちゃん」で原恵一監督が「発見」されたではないですか。「マイマイ新子」はあれを超える大事件だと、自分は確信しています。
投稿: pencroft | 2010年1月 8日 (金) 00時25分
■pencroft様
わざわざお越しいただき、ありがとうございます。「どう伝えればいいのか困ります」という一言で、ちゃんと伝わっているのが凄いです。
>映画雑誌
試写には、毎回、何人かはプレス関係者が見えられていたんですよ。彼らは、この映画に何をしてくれたんだろうな、と思うんです。
僕は映画雑誌の選ぶベスト10には、何の権威も感じていません。それでも、評論家には自ら進んで作品を発見し、読者に伝える義務があると思います。一般の人より早く、タダで見られるんですから、その時点で義務が生じているんですよ。
『マイマイ新子』って、キービジュアルはああなってしまったけど、実は尖っているじゃないですか。過激だと思います。そういう、宣材に隠された部分を見つけた人が、とても鋭い言葉で、本質を言い当てますよね。pencroftさんだって、そうです。
雲の上の映画論壇は、それ以前の状態なんでしょうね。
投稿: 廣田恵介 | 2010年1月 8日 (金) 00時59分
と、そこで口を挟みにくいのですが、昨夜阿佐ヶ谷でギムレットさんから「ナギコさまファンブック」と、廣田さんが執筆されているギャラクティカ記事のある本を受け取りました。
ありがたかったです。
ついでに宣伝B社M君からBSG75のジャンパーもらってしまいました。
急にギャラクティカ成金になった気分です。
『ギャラクティカ』はなんでみんな興味持たないんだろう、と思っておりましたので、ちょっと窓が開けた気分です。
そういう意味では、ウエダさんの「マイマイ本」に関しても同じような気分を感じたような気もします。「自分しか知らなかったものを、世の中で鏡に映している人がいる」的な。
うーーん、マイマイに関しては、今だに自分にしてそのような感触でおります。
投稿: 片渕 | 2010年1月10日 (日) 13時43分
■片渕さま
「ナギコさまファンブック」の件は、「監督に渡してきちゃいました」と本人から聞いております(笑)。
しかし、『ギャラクティカ』記事のある本というと、「グレートメカニックDX」でしょうか。私が『ギャラクティカ』の連載をしているのは、あの本だけです。
>ギャラクティカ成金
「BSG75」ジャンパー、私も持っています。Tシャツはさらにレアだと思いますが、よろしければ未開封品を差し上げます。『ギャラクティカ』クルーのドッグタグも、一個しかありませんが、よろしければどうぞ。
『マイマイ新子』の監督と『ギャラクティカ』の話が出来るなんて、本当に夢のようです(世界観としては『ブラックラグーン』に近いのかも知れませんが)。
ウエダハジメさんのマイマイ本に関しては、「あれを監督に見せるの?」という声もあったのですが、私はお見せするべきだと思いました。
ウエダさんという、もう一人の作家の中で、新しい『マイマイ』がうごめいているのが、とても良く感じられます。僕たちファンも、あの本には、元気づけられたような気がするんです……とても、妙な本ですが、確かな愛が感じられますから。
投稿: 廣田恵介 | 2010年1月10日 (日) 20時41分