■観客の役目■
吉祥寺バウスシアターで、『マイマイ新子と千年の魔法』のチラシが貼ってあったのに、上映がなくなった件。
なくなった経緯は、僕も知っているのだけど、別にバウスが悪いわけじゃないんですよ。
むしろ、理不尽な目に合わされているように、僕には思えた。
連続上映が無理なら、イベント上映みたいな形にできないか、バウスに提案しているし、監督にも相談した。僕らだけが苦労している、とは言わないよ。でも、「噂にすぎなかったじゃないか」「ダメだったんじゃないか」とガッカリさせないよう、努力しているし、それが僕らの「仕事」でしょ?
今まで、ずっとそうやってきたんだよ。泣き寝入りせずに、ずっと動いてきたんだよ。
バウスの古いスタッフは、『アリーテ姫』を上映したときのことを、今でも覚えているそうです。支配人さんも、『マイ新』本編を見て感激し、「上映したい」と立ち上がったそうです。
それを「大人の事情」で水に流していいの? それを止めるのが、僕らの役割じゃないの?
「何とか上映できるよう、努力します」と言ってくれた映画館さん、みんな黙っちゃいましたよ? なぜ? この映画には、客が入らないから? いまや、そうではありません。僕ら観客が、その定説をひっくり返して見せたじゃありませんか。
僕は、この映画の関係者ではないし、何ら特別な立場の人間ではありません。
最近では、ライターとも名乗らないし、署名のことも口にしません。口下手なので、電話は苦手なのですが、必要とあらば、目をつむってダイヤルを回します。必要とあらば。
僕みたいなヘタレに出来るんだから、皆さんにも出来ます。
泣き寝入りするヒマがあったら、行動を。
■
今日は、池袋まで、『ミツバチのささやき』と『エル・スール』を見に行く予定です。
誰かが見つづけ、誰かが語り継がねば、文化なんて残るわけがないんですよ。レンタル屋のスタッフが、ビクトル・エリセを知ってると思ったら、大間違い。シネコンの受付のお姉ちゃんなんて、自分が生まれたあとの映画しか見てないよ。テレビで、古い映画をやらなくなったんだから、仕方ない。
だけど、「やらなくなった」ってことは、「権利者が止めてる」ということでもあるんですよ。映画を解放するのは、僕たち観客の役目です。
■
追記。この春~夏は、プチ『ゼーガペイン』祭になるそうです。
4年前のアニメを、支えつづけたファンがいたからこそ、です。ここに至るまで、制作者の方は無念の涙を飲んできたそうです。そんな裏話も、今年は笑って話せるかも知れません。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント
>それを「大人の事情」で水に流していいの? それを止めるのが、僕らの役割じゃないの?
>泣き寝入りするヒマがあったら、行動を。
一昨日、レコミンツでなぜか「十二人の怒れる男」と「オトナ帝国」のDVDを買ってからラピュタに寄って、片淵監督に現状で思いついたかぎりでの宣伝アイデアをお渡ししてきました。
渡した瞬間、監督には苦笑いをされてしまいましたが(笑
なにやら、某魔法少女アニメ劇場版の興行収益が二日間でマイ新の二倍くらいになっている様子orz ここにきて各方面の足並みが乱れてしまうのは、なんとも歯がゆいかぎりです。
これからマイ新を広めていこうと思ったら、ファンが力を結集するしかないだろうと改めて感じるしだいです。なんとか、そういう体制が実現できればよいのですが……。
この作品が巡る今後の行方って、作品単体の評価に限らず、アニメ、映画全般をとりまくビジネスのあり方そのものを左右するんじゃないかと思うんですよ。
やはり、作り手がよい“作品”を作ったら、それが世間に届くという当たり前の事実を、観客の側が示さねばならないときだと思います。
投稿: すがり | 2010年1月31日 (日) 09時58分
バウスシアターで『アリーテ姫』を上映、舞台挨拶までしていたのですね!
http://www.arete.jp/arete/jisseki.html
私そのことは全く知らずに今まで動いておりました…。
もうこれは「運命」としか言いようがありません。
意地でもバウス上映を実現させなければ。
「あきらめちゃだめだよ、廣田さん!」
投稿: bokusatchii | 2010年1月31日 (日) 10時08分
バウスで『アリーテ姫』で舞台挨拶させていただいたのは、吉祥寺の商工会全体の地域イベントの中でだったように記憶します。
別の会場には、なりきりアリーテ姫という企画もあって、アリーテ姫の衣装と大きく作った城の背景がしつらえられていました。
そのとき、撮ったアリーテ姫の服を着た娘の写真があります。
投稿: 片渕 | 2010年1月31日 (日) 11時28分
■すがり様
「各方面の足並みの乱れ」ということで言うと、僕は11月21日時点で乱れていたんじゃないか、と思います(製作サイドの話ですが)。上映時間が午前~昼中心に移行した時点で、すでにマーケティングを見誤っていたのは、明らかでしょう。
ラピュタ阿佐ヶ谷でレイトショーが満席なのに、地方のシネコンは、まだ朝に上映している。情報が流れてないんです。
果たして、観客に配給・興行のくり返す不可解な営業スタイルを、是正することは出来るのだろうか? 「入場料というリスク」をしょているのは観客側ですから、要望を言う権利はあるのです。
>某魔法少女アニメ劇場版
『なのは』ですよね? タイトルは明記してしまって大丈夫と思います。
あれは、配給側が作品の内容と観客の資質を、入念にリサーチした結果だと思うんです。『マイ新』は、下手すると、いまだに「主婦と子供がターゲット」と言い出しかねないんですよ。
そういうヤバい空気は、何となく感じています。
>この作品が巡る今後の行方って、作品単体の評価に限らず、アニメ、映画全般をとりまくビジネスのあり方そのものを左右するんじゃないかと思うんですよ。
そうだと思います。そう信じたいです。
現状では、「マニア向けだから、レイトショーでのみ受けた」と解釈されても仕方ないと思います。実際、Twitterでは「アキバ系」などと書かれたりもしていますし(笑)。
もっと広範なヒットに導かないと、今後も同じ悲劇がくり返されます。
すがりさんは、とても行動力のある方とお見受けします。観客の声を糾合するだけでなく、ためしに映画館の意見・意向も聞いてみてください。思ったよりずっと、我々に近い目を持っていますし、味方になってくれます。
■bokusatchii様
原画展まで、開催されていたのですね。
「目指せ、全国県制覇」……今の『マイ新』には、『アリーテ姫』のときの勢いがない。
10年前と今とでは、映画館をとりまく状況も変わっているでしょう。「昔は、まだやりやすかったんですけど」とこぼす映画館さんも、いらっしゃいます。
署名をはじめた頃、「映画館に無理させて、潰すつもりか」と冷笑されましたが、こちらは映画館の意見、何が厳しいのか、障害になっているのか、ちゃんと生の声を聞いていますからね。
映画館の意志を汲んだ観客は、かなり手ごわいですよ。
■片渕様
町ぐるみのイベントだったわけですね。
今回も、地元の書店さんたちを巻き込んで何か出来ないか、考えています。
都内の別の館と、上映スタイルや規模、上映時期を変えれば、競合はしないと思います。
また、ほぼ忘れかけられていた署名について声を上げてくださり、誠にありがとうございます。
「未完の映画評」のかみぃさんが、大変示唆に富んだトラックバックを寄せてくれています。
http://cinema.filmcrew.jp/2010/01/maimai_shinko_kichijoji.html
皆様、この記事は、是非とも読んでください。この映画について、いま最も重要なことが書かれています。
投稿: 廣田恵介 | 2010年1月31日 (日) 11時57分
初めて書き込みさせていただきます。
先週の土曜に、シネ・ヌーヴォに行ってきましたが、今回二度目に観た感想は、「やはり、最初に観る前の印象と、実際の中身は全然ちがうなぁ」というものでした。
50年前の防府の少女達の物語。
こう書くと、ノスタルジックでローカルな子供向け映画、という印象ですが、実際は違うんですよね。
僕は、誰もが眠らせている子供時代の自分を目覚めさせる、大人のための映画だと思います。
「明日の約束を返せ!」
このセリフを聞いて、「約束なんて破ったり破られたりするものだよね」などといつのころからか考えていた自分に気づかされ、ショックを受けましたから。
資料などから当時の風景を忠実に再現したのも、当時の防府を知る人に懐かしがってもらうためではもちろんなくて、そのリアリティが、観る人に自分自身の過去を思い出させるのに必要だったからではと思います。
そういう大人にこそ、この映画は観られるべきだし、そういう方向で宣伝していく必要がありますよね。
個人的に、ぜーガペインのニュースも嬉しいです。これも深夜に放送していれば状況は違ったのでしょうか。だとしたら、やはりスタートの売り込み方は重要ですね。
とりとめのない長文失礼しました。
投稿: にひと | 2010年1月31日 (日) 22時07分
■にひと様
はじめまして。コメント、ありがとうございます。
おっしゃる通り、これは「防府の人に向けた映画」ではないと思います。日本人で、いい歳をすぎた大人全員に向けられているんですよね。
なのに、「ご当地映画」みたいな宣伝になってしまいました。もちろん、防府のお客さんにとってはいいことなんですが、県外に与える印象は、決して良くないんですよね。
いわゆる、ファミコン世代の都会人たちまで「懐かしい」と感じてしまう。そこに気がつかないと(僕は製作サイドの一部は、いまだに気がついてないと思います)、これから先も、及び腰な宣伝方針になってしまいます。
>ぜーガペインのニュースも嬉しいです。
僕も、深夜にやっていれば、どれだけ評価が違っただろう、と思います。他にも、最初のキービジュアルは、あれで良かったのだろうか?など、顧みるべき点はいくつかあります。
しかし、『ゼーガ』はファンの人たちが、決して見捨てなかったんですね。これに尽きると思います。
『ゼーガ』祭を盛り上げるべく、僕も力添えしたいと思っているんですよ。
投稿: 廣田恵介 | 2010年1月31日 (日) 23時36分
今すぐできることはなんだろう
ほんとに大事なものはなんだろう
僕の大好きなウルトラマンメビウスの
歌詞なんだけど、
あれから(どこからだよ!)ずっと考えていて、
あった、あったよ廣田さん!
マイマイ新子のことで
僕にできること見つけた!
いや、正確には“思い出した”。
そうだよ、
僕はずっと以前の自分の生業のことを
すっかり忘れてしまっていた。
お昼休みの30分、
今までは自転車磨きとメンテの時間に
していたけれど、
この30分を利用して
あるものを作ることに決めた。
出来上がったらブログに載せる前に
まず廣田さんに見せるからね。
投稿: 前岡 和之 | 2010年2月 4日 (木) 14時23分
■前岡和之様
「作る」んですね? 何だろう、楽しみです。
作ることは、何よりも尊いと思います。
僕は、ここ数日、かなりの無力感にとらわれています。何の行動も起こさず、「何が署名だ」「リスクを負え」と叩いてくれた方々の言葉が、思い出されます。
『マルコムX』を見て思ったのですが……本来、何かを提起するときは、その発言によって命を奪われるぐらいでないと、効力がないのではないか。
「黙らないと、殺すぞ」レベルで、ようやく言葉は力を持つのであろう、と思います。
投稿: 廣田恵介 | 2010年2月 4日 (木) 14時49分
そんな言葉に力を与えるものが
絵であり映像でありアニメなんだと思う。
逆も然りっすよ。
あなたの言葉の力により
ムーヴではなく
アニメートされてるなあ俺と
感じていたりします。
投稿: 前岡 和之 | 2010年2月 4日 (木) 20時26分
■前岡和之様
すみません。ただ、イライラしているだけなのですよ。
僕はおそらく、●●の二文字(漢字二文字)が書けないほど、脆弱な立場なんですよ。だから、2/7のイベントに行けるわけもない。「●●が来るなら行く!」と言ったんですけど、来ないなら、どうでもいい。
前岡さんは、礼儀ではなく、『マイマイ新子』を気に入ってくださった。それは結構、計算外でした。
だから、楽しみなのですよ。
なんか、こんな言い方しか出来なくて、すみません。
もっと思い切り、「俺は、『マイマイ新子』を、こうやって、バーッと変えるぜ!」と言いたいのですが……。別に、僕が配給するわけではないので、仕方ないです。
投稿: 廣田恵介 | 2010年2月 4日 (木) 23時30分
んな、松竹梅的なクラスターのことなんてどうでもいーじゃん!
梅レベルのことはもういいよ。
ほっとけっつーの。
ああ、あと俺どっか記憶が断線してる。
ホテルハイビスカス大好きな作品なのに。
思えばそのつくりや作品の知り方とか、
新子との共通点多いなあー。
投稿: 前岡和之 | 2010年2月 5日 (金) 03時09分
■前岡和之様
だって、何をどうやっても、松竹梅にぶつかるんですもん(笑)。
この4ヶ月、何がストレスって、それだったんですよ。あんた方の映画だろうに、どうしてそんな扱いが出来るの?って話ばかり。
>新子との共通点多いなあー。
だったら、すぐに見てみたいけど、『ギャラクティカ』シーズン4のサンプルが来たので、そっちを見ます(笑)
投稿: 廣田恵介 | 2010年2月 5日 (金) 11時59分