■12月のメモ「大人の務め」■
アニメ業界の友人から、「あんたは『マイマイ新子と千年の魔法』については、十分に役割を果たした。だから、そろそろ手を引くべきだよ」と強く言われたのだけど、前岡和之さんのブログ「B2/P.I.L」を見て、やはり大人しくしてはいられなくなった。以下、引用。
現在の署名数を見て欲しい。
署名されたかたがたのことを愚弄する気は、
殊更ないのは理解して頂きたい。
ね、たった1000人ですよ。
たかが1000人の署名しか集まってないのですよ。
ご覧になったかたには、わかりますよね。
そんなスケールで語れる内容の作品でしたか?
これって何を表しているか考えましょうよ。
『ザ・シンプソンズ』の声優変更問題のとき、署名運動をやっておられた方から、マイマイ署名について、励ましのお便りをいただいた。その後、『ザ・シンプソンズ』の署名者数が3,000名を越していたことを知る――。
もちろん、署名は強制じゃないし、僕の考えに賛同できなければ、署名しなくても構わないんです。でも、それなら、署名の代わりに、作品に対して何をしてくれたのかな、と思う。
上に引用させていただいた前岡さんは、DVD化が絶望視されていた『ガンヘッド』を、パッケージからメニュー画面まで、全て自作したんですよ。彼が優れたお手本を示したお陰で、ほぼ同じ仕様で、DVDが発売されました。
あるいは、僕がパンフレットに関わった『ROBO☆ROCK』の話をしましょうか。この映画は、『マイマイ新子』より過酷な上映規模だったにも関わらず、地方の熱烈なファンたちが、配給会社に何度もメールを送り続け、ついには地方上映を実現させてしまったんです。
この『ROBO☆ROCK』がいい例だと思うけど、まず、そんな映画のタイトル、知らないでしょ? 監督とスタッフと3人で観に行ったら、僕らを入れて、観客は6人だったから。地方での上映が決まっても、東京での上映は酷いままだった。
その後、DVDが、何度か仕事させていただいたメディア・ファクトリーさんから出ると聞いたので、担当の方を紹介していただいたんですよ。
でも、ブックレットひとつ作らず、明らかに安上がりのDVDが発売されて、それで終了ですよ。まして、制作予算のかかるブルーレイなんて、出るわけがない。興行成績の悪かった映画の末路なんて、そんなもんです。
ヒット作・話題作ばかり追っかけてたら、こういう現実も見えてこない。
先日も紹介したけれど、札幌のシアターキノに『マイマイ新子』の上映リクエストをしたtegitさん。彼は、売り上げに貢献するため、シアターキノに足を運んだっていうじゃない。「とにかく上映してくれ」じゃなくて、映画館にも、いい思いをしてもらう。みんなで幸せになる。tegitさんは、それを実践してるんですよ。
誰かが、後を引き継いでくれるなら、僕はもう『マイマイ新子』のことは書かないし、余計なことはしないよ。
だけど、前岡さんの言葉を借りるなら、「子供に見せたい」と思ったら、「子供に見せられる環境をつくる」のが、大人の務めってもんでしょ? 僕たち大人が、ちょっとずつ何かをサボってきた結果が、今の状況なんだ。『マイマイ新子』だけの問題じゃないですよ。
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前から書こうと思っていたけど、『王立宇宙軍』って、今でこそアニメ史に残る名作になって、ブルーレイも出ているけど、興行面では苦戦したんですよ。ただ、前年公開の『天空の城 ラピュタ』よりは、ちょっとはマシな成績を残せた、と聞いたことがある。
思い起こせば、『王立宇宙軍』の新聞広告に、宮崎駿が「最大級の賛辞を贈る」とコメントしたんだった。それで、ちょっと持ち直したのかな、という気がする(宮崎アニメがブレイクするのは、その後の『魔女の宅急便』だけど)。
何しろ、『王立宇宙軍』は、映画の地味さにビビったバンダイが「ロボットだけでも出せないか」と打診したぐらいだから。バンダイの情報誌「B-CLUB」に、何ページもわたって「とにかく観に行ってくれ」と書かれていたのも、公開前の不安が高じた結果だったのかも知れない。
こういう話は、負の遺産なのかも知れないけど、学ぶべきところは多い。誰かが語り継がなければいけないと思う。
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今から、何本か邦画を見て、原稿を書きます。某アニメ誌編集部、編プロなどが、年末年始も絶賛営業中。頼もしい。
ウエダハジメさんのマイマイ本、友人が入手したので、ちかぢか見せてもらうことに。楽しみ。
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