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2009年11月29日 (日)

■11月のメモ「時祭組、予告」■

アニマックスで『赤毛のアン』を見ていたら、マシュウのヒゲが色パカしていた。あと、マリラのお腹がBGImg_1447821_55836482_0組(机に隠れるラインで、お腹を区切って描く)だったけど、話すたびに、ぶよぶよ動いていた。
僕には、そういう計算外のノイズが、すべて「表現」に見える。プリントに失敗したのか、カットごとに色が違っていたりするけど、その揺らぎに世界とか人間の実在感があるような気がする。

『マイマイ新子と千年の魔法』の初日、友人が言っていた「昔のアニメみたいだ」というのは、そういうノイズのことだと思っている。
WEBアニメスタイルの【artwork】『マイマイ新子と千年の魔法』を見ていると、「こんな実験的なこと、よくやるな」と感服する一方、「失敗したらどうするんだろう」というヒヤヒヤ感もある。実際、『マイマイ新子~』には、意図的にノイズを忍ばせてある(色パカを混ぜてあるとか、そういう意味ではなくね)。
それが、「温かみ」として受容されるのだと思う。


『鉄腕バーディー:02』の騒動の時にも、似たようなことを書いたけど……
伊達に、「昔のアニメの方が良かった」と言ってるんじゃないんだ。僕が、雑誌にアニメの記事を書きはじめた10年前、「この道で書いていくなら、せめて勉強しなくては」と、昔のアニメを見まくった。『バーディー:02』の時は、みんな去年~今年のアニメばかり引き合いにだすもんだから、話がかみ合うわけがない。

昔のアニメを、ノスタルジアだけで見られるはずが、ないんだよ。過去を知らないと先のことも分からないから、遡って見るのであって。自分の勉強法は、自分でしか見つけられない。誰かに言われずとも、自ずと始めるもんだと思う。
『化物語』が売れてるけど、尾石達也さんは俺より若いのに、俺の生まれる前の映画を、ごく当たり前に見てますからね。過去の蓄積を知らずに、新しいものなんか作れっこない、という好例ですね。


『マイマイ新子~』の感想は、あまりアニメを見てない人のが面白い。『マイマイ新子~』を劇場で見た直後、別件で会った先輩に、強引にオススメしたとか。その気持ち、すごく分かる。
「良作だけど、興行的にはどうなの」とか言ってる暇があったら、周りにどんどん薦めればいい。価値を認める、とは、そういうことだと思う。


さて。『メガゾーン23』の同人誌『フェスティバル・タイムズ』をコツコツと出し続ける【時祭組】、冬コミに参加します!
0011新刊は、板野一郎監督ロング・インタビューが圧巻。載せてもいいものかどうか、意見を求められたけど、「商業誌じゃないんだから、自粛する必要ナシ。このまま行くべき!」と答えたよ。
板野監督のほかに、石黒昇さんのミニ・インタビュー、梅津泰臣さんインタビュー、そしてプロアマ混在のイラストやエッセイが、多数。
詳細は、いずれまた……今号は、今までで一番、スゴイです。裏表紙の写真とか、もう絶対あり得ない。これ、ホントに売るのかよ(笑)。

廣田同人誌も、ラストスパートに入っていますが、【時祭組】の卓では販売しません。ついでに買ってくれる人もいるだろうけど、それはちょっと図々しい気がするので。
その代わり、1月10日のスーパーフェスティバルの僕のブースでは、【時祭組】の同人誌も売ります。だから、コミケで買い逃しても大丈夫。スーフェスでは、『亜空間漂流ガルダス』のDVDも売ります。それは、僕が優しい、イイ人だからです。

というか、得たいの知れない俺の同人誌だけ置いてあって、一冊も売れなかったら、イヤじゃない……。


明日は、試写会です。しかし、午前中からというのはキツイなー。

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2009年11月28日 (土)

■僕には、理解し切れてない、という自信がある■

●『東のエデン 劇場版Ⅰ』パンフレット 構成・執筆
Scan20001
神山健治監督インタビューの他、いろいろやりました。
ニューヨークの地図づくりには、グーグルのストリート・ビューがすごく役に立ちました。絵コンテ、美術ボードと照らし合わせて探し歩くと、目印になる建物が、ちゃんと見つかるという。

試写には行かなかったので、映画の内容については、ノーコメントです。


『マイマイ新子と千年の魔法』、川崎チネチッタでは12月4日11日まで。でも、音響がよろしくないそうなので、ぜひ、新宿ピカデリーまで足をのばしてください。
それと、公式サイトの情報を見ると、年末から来年にかけて、上映の始まる地方(静岡、宮城、山形、岡山、鳥取、愛媛)があります。まだまだ、これから!

僕には、『マイマイ新子~』を理解し切れてない、という自信がある。では、何に共鳴しているのかというと、多分、この映画が「そう簡単には、分からせないぞ」と、見るたびに姿を変えるような、ロックン・ロールな部分を持っているからだと思う。
0085_1_00039絵も物語も、発掘すればするほど、新たな問題が提起される。
冒頭近く、新子の後ろを舞っていた蝶が、貴伊子の方へ飛んでいく……と思っていた。ところが、よく見ると、蝶は最初から2羽いた。映画のラストカットで、また2羽に戻る……と思っていたら、貴伊子が三田尻駅を出た直後にも、2羽いる。これ、どういう意味だろう?とかね。
しかも、2羽の蝶は、例の直角に曲がった千年前の川べりから出てくる。エンドタイトルで、蝶が飛ぶ背景も考え合わせると、そこに、もう一本の膨大な物語が隠されているように思えてならない。

この映画のために、アニメや映画、物語や世界に対する認識が揺らいでしまい、かなり戸惑っている。でも、安定するよりは転がっていたい体質の僕には、いいことだと思う。

12月6日の文学フリマのイベントは、深読みしたい人に向けた、かなり面白いトークになる様子。もう、抜け出せないね。この映画からは。


あちこちで『マイマイ新子~』の感想を読んだけど、「今日だけは、山口弁で」って、ぜんぶ山口弁で書いてあるブログが最高だった。
山口弁は、カッコいい。福田麻由子が教えてくれた。

あと、親子連れやオバチャンと、マニアが一緒に楽しめるアニメって、すごく貴重だと思うよ。そういう時間、空間を楽しむためにも、映画館で見て欲しい。

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2009年11月26日 (木)

■マイマイ新子、文学フリマに出展!■

『マイマイ新子と千年の魔法』 完全資料集!
Maimaidummy_3 うそうそ、冗談です。「こんなの、あったらいいよな~」と思ってパワポで作っていたら、本当にコピー本が出ると知って、ビックリ。12月6日の文学フリマで発売されるそうです。以下、マッドハウスからのプレスリリース抜粋。

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『マイマイ新子と千年の魔法』は文学フリマにてイベントも開催!

アニメーション映画『マイマイ新子と千年の魔法』や自作を紐解き、片渕監督が文学作品をいかにアニメとして翻案したのかという、本質について語ります。
『マイマイ新子と千年の魔法』より――監督・片渕須直が語る 文学をアニメ化するということ
開催日時:12月6日 17:00~18:30予定【延長の可能性もありますので、予めご了承ください】
開催場所:大田区産業プラザPiO  A、B会議室
出演者 :片渕須直【『マイマイ新子と千年の魔法』監督】、小川びい【アニメ雑誌ライター】(司会)
※整理券を12時30分より本ブースにて発券します。(なくなり次第終了)
イベント参加希望者は、必ず整理券をお持ちになって、A、B会議室においでください。
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文学フリマには、自分の同人誌を売るつもりで視察予定だったので、ちょうどピッタリ。
でも、コピー本って何だろうな。あっという間に売り切れるんだろうな……。ブース番号は、V-15、16です。
(上の画像は、飽くまで僕のお遊びですので。本物は、もっとカッコいいはず)

僕なんか、最近どうしているかというと、『マイマイ新子~』のクリアファイルやバッヂのセットをヤフオクで落とそうなどと、考えていた。400円でスタートしたのに、2000円近くなっていたので、ビビってやめた。
もう、それだけの熱心なファンが生まれているのだと思うと嬉しいし、試写室を出てすぐ、「福田麻由子に取材しないとダメだ!」と電話した日が懐かしい。
誰も、「福田麻由子の代表作」として『マイマイ新子~』を取り上げようとしない。スポーツ新聞ぐらいでしょ。アニメ雑誌からして、「ああ、なんか新人女優? また話題づくりだろ?」程度に思ってるとしたら、かなり無神経。
福田さんのインタビューを「アニメージュオリジナル」に載せるのは、いろんな意味で苦労した。なんでアニメ雑誌に?とも言われたし。

今度は、ヤフオクで「グリコの扇風機」、探してます。新子が、貴伊子にあげると言ってたヤツね。


初めて会った編集者に、「マイマイ新子を、ブログでプッシュしてますよね。見たくなっちゃいました」と言われた。そう言った以上、ゼッタイに見ていただきたい。映画情報誌も、なぜか取り上げなかったから、もう口コミで広げるしかない。

今の連作アニメ映画ブームの嚆矢となった『空の境界』には、他県から飛行機や車で駆けつけるファンが続出した。その熱気が、最終的にDVDの売り上げに繋がっている。
露骨に「劇場ではお披露目程度、さっさとDVDで回収したい」スタンスのアニメ映画もあるんだけど、『マイマイ新子~』は違う。DVDでリクープしたいんだったら、山口先行公開なんて、やんないって(笑)。
宣伝チームも、口々に「ようやく興行スタートしたので、これからだ」と鼻息荒いしね。これはDVDではなく、映画館で見るべき作品です。


昨日、押井守監督のインタビューだと思ったら、来週、またインタビュー。対押井用ICレコーダーは、おおいに役立ってます。

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2009年11月25日 (水)

■11月のメモ「舞舞虫」■

また『マイマイ新子と千年の魔法』の話題で恐縮ですが……
Maimai_logo 第5回ロンドン子供映画祭で、上映が決定したそうです。上映日は11月26日(木)、場所はバービカンセンターとのことで、同時上映は『崖の上のポニョ』。
……なんとも、対照的な二本ですね。『ポニョ』ってのは、誰も死なないのに、死の匂いが濃厚でしょう。『マイマイ新子~』は、物語開始時点で、すでに何人か死んでます(笑)。だけど、「明日」の映画。
だから、「次は、いつ見ようか」って考えてるのは、すでに僕だけじゃないし、連休中に3回ぐらい見ちゃった人も、いるんじゃない?
(追記:すでに4回見た、という人がいました)


『ポニョ』の時間は、静止している。特に大津波後、ピタリと止まってしまう。
『マイマイ新子~』は、肉親を失った者ほど、大きな変化を見せる。死が、生のダイナミズムを喚起する。
一番すごいのは、「会う前から」友達を失っている諾子だよね。諾子は、母もいないしね。

『ポニョ』の視覚的快楽は、何にも替えがたい。だけど、あれだけ映像がダイナミックに動きながらも、実は最初から最後まで、誰ひとり変化しない。最後まで「ポニョ、宗介、好き」だけ(笑)。だから、ちょっと背徳的というか、うしろ暗い快楽ではあるんだよな。
『マイマイ新子~』には、ポニョとは比較にならないほど、小さな池が出てくる。しかも、それは「壊して遊ぶため」の池なんだよ。そこには変化を受け入れる、変化を利用するというエネルギーが感じられる。
この映画が終わりそうになるとき、僕はいつも「次も見よう」と決める。どうも、そう思わせるシステムが、この映画の構造の中に隠されているみたいだ。


ブログ「佐藤秀の徒然幻視録」さんで知ったのだが、「マイマイ」にはミズスマシの意味もあるらしい。調べてみたら、「舞舞虫」と書くようだ(他に「渦虫」とも)。
新子は、水面を走る「ミドリのコジロー」と駆けっこするけど、あれは舞舞虫の新子流アレンジだったのか。
そもそも、原作に「ミドリのコジロー」なんて出てきたかな、と思ってページをめくってみる。

初日舞台挨拶の回で、貴伊子が頬に野イチゴの食べかすをつけているシーンで、場内でくすくす笑いが聞こえた。こんな何気ないシーンで笑ってくれるなんて、いいお客さんだなあ……と思いながら、防府に野イチゴあるのか?と調べてみたら、今でも自生しているようです。

それにしても、片渕監督は、日本映像学会で、貴伊子の何を喋ったのだろうか? 貴伊子ファンとしては、気になりますよ。


廣田同人誌は、あと7ページぐらい。必死にラフを切ってます。
090709_13470001第二特集は、「アニメ絵本」のレビュー(カラー6ページ)。アニメ絵本って何かっていうと、左の写真のようなものです。
幼児向けに、絵をアニメ調にした絵本。「こんなもん、売れないイラストレーターが描いてるんだろ?」と思ったら、大間違い。とんでもないベテランが描いている。俺は、この類いの絵本を30冊、持ってますからね。そのレビューをやります。

ただ、12月20日のフリマに並ぶかは、ちょっと怪しくなってきたかも……。

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2009年11月23日 (月)

■家に帰って、考えてみる■

『マイマイ新子と千年の魔法』、おおむね評判がいいようで、「誰も読んでくれない」とイジケていた「アニメージュオリジナル」のインタビューを、わざわざブログに書き写してくれている人もいたりして、いろいろ安心。というか、満足。

劇場では、念願のマイマイ・エコバッグも2つ貰えたし、何より素敵なのは↓の小冊子「お091123_04070001楽しみレシピ!」。福田麻由子と水沢奈子のミニ・インタビュー付きで、見どころポイントを解説。カラーのキャラ表も載っている。
「笑って、泣いて、楽しんだら 家に帰って、考えてみる。わかりやすいだけじゃない。だからこそ味わえる、その先の感動がある」――この一文に、グッときた。「客が入れば何でもいい」という宣伝チームだったら、こんな言葉は書かないよ。

局がつくる大作映画は、いまだに別れのシーンで、わんわん泣かせる。でも、そういう分かりやすい文脈から外れた映画はいっぱい、つくられてきた。いやむしろ、世界的に見れば、独自の文法をもった映画の方が多いんだよ。
それを「読み解く」ことが、楽しいし、人生の肥やしになるのであって。


例えば、「昭和30年代なんて俺は生まれてないから、感情移入できない」という人は、昔の邦画なんて見られないね。デンマーク映画だったら、「デンマーク行ったことないから、知らない」となってしまう。心に響いたら、調べてみればいい。引っかかったら、何度も見ればいい。

僕は、不便な思いをした方が、楽しい。分からなかったところを「マッドハウス公式チャンネル」で確かめるのは楽すぎるから、僕は、次も映画館で見るよ。
怖ろしいのは、「公式チャンネル」で見た数分間で、もう結論を下しちゃってる人がいること。楽しすぎ、考えなさすぎ。駅でエスカレーターと階段があったら、「たまには、階段で行くか」とは考えないタイプだね。
僕は『マイマイ新子~』の舞台になった、山口県防府市に行きたいと思っているけど、山口県が遠くて、よかった。山口県が関東にあったら、日帰りで行けるし、面白くないから。

僕は7回見ても、『マイマイ新子~』が分からない。結論づけられない。でも、見ていて気持ちいい。おそらく、その心地よさはテンポの良さもあろうし、絵の可愛らしさもある。音楽と主演2人の声が、いちばん気持ちいいんじゃないか、という気もしてきている。
でも、何よりも、そう簡単に分からせてくれないから、気持ちいいんだと思う。


新宿ピカデリーは音響がいいせいか、貴伊子の声が、よく聴きとれた。
初めて、裸足で草0147_2_00077の上を歩くとき、「いたた…」と言っているんだけど、鮮明に聞こえた。あと、ダムをつくるとき、重たい石を持たされて「うわっ」と驚く。だから、そういう実感的な、身体感覚っていうのかなあ……それは、昭和30年でも平安時代でも変わらないじゃない。そこを感じなきゃ、ダメよ。
裸一貫で、無知でも何でもいいから、とにかく作品に向き合う。体で映画を見る。そうしたら、きっと、裸足で草の上を歩いた時の、チクチクした記憶が蘇ってくるよ。

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2009年11月22日 (日)

■マイマイ新子、6回目と7回目■

11月21日、『マイマイ新子と千年の魔法』初日。
091121_14250001携帯カメラだけで撮るのは失礼に思え、デジカメ持参するも、ろくな写真は撮れず。最初から最後まで、記者としては失格でした。
新宿ピカデリー、14時40分の回。
前回と同じく、タツヨシが「うわあああ」と叫ぶシーンで涙が流れる。

次の回が(舞台挨拶もないのに)満席だったので、時間をつぶしてから、友達と待ち合わせ、19時00分の回へ。多分、これまでで、最適の視聴環境だった。
重要なのは、同席した小学校の同級生の意見。閉幕後、まず開口一番「深いな」。これは先日、編集者に「どこがいいの?」と聞かれて、僕が答えたのとまったく同じ。「深い、厚い」という意味だ。
もうひとつ、友人は「わざと昔のアニメっぽく、つくっている」とも言っていた。これは、予期しない感想だった。つまり、今ならCGにするところを、手描きの質感で表現している。千年前の舟の幌に、手描きのテクスチャが入っていたのに、6回目で気がついた。「俺らの世代なら、これぐらい白々しい方が、いっそ気持ちいいね」と、アニメ・マニアではない友達は言うのです。
あと、もんしろ蝶に関して、新たな秘密を発見! これは、先の楽しみにとって置く。


帰りの電車の中、「うーん、後を引くなあ」と呟く友達に、自説を言って聞かせる。「ひづる先生」と「金魚のひづる」と「貴伊子の母親」の因果関係。物理的には繋がっていないが、千年前の世界が、まるで未来のようにも思えてくる。いっそ「平行世界」と言ってしまえば、しっくりきそう。
昭和何年だろうが、千年前だろうが、僕らはただ、世界の集積の中にのみ生きている。そうした遺跡発掘のような、『マイマイ新子の~』の多重構造を、もっと理解したい。
昭和42年生まれの僕らも、膨大な堆積層の一部に過ぎない。僕らは、新子たちのように、地面を蹴って楽しむ子供たちであり、いまだ、そうなんじゃないのか。
諸星大二郎の短編のように、大人と子供が別の生物ってのは、ウソなんだよ。繋がってるよね。


エンディング、新子と貴伊子が「ざぶーん、ざぶーん」と言っていた鳥居の向こうが、海にSgmdx060416_001なる。魂が、彼方にもっていかれそうになるカットだ。その海のほうが、千年の過去よりは、むしろ遠い未来に見える。……こりゃあ、7回見ても、足りないね。
「マッドハウス公式チャンネル」が始まったけど、本編の見せ場は、やっぱり本編で見て欲しい。

それと、蒸しパンは思ったより、うまそうな色だった(長子もオフ台詞ではなかったな)。古太郎じいさんに出された魚は、二尾。他の家族は一尾ずつ。じいさん、実は尊重されていた。そう考えると、添えられたたくあんも、どこか贅沢に思えてくる。見るたび、印象はどんどん変わっていくな。面白い。
ちょっと気になったのは、長子の下駄が、やけに大きいこと(あれを履くと、とたんに長子の動きが鈍くなる)。小太郎のお古なのかな? 野良仕事しないから、下駄で十分なんだろうな、とか。


もうひとつ。友達が言っていたのは「スケールが大きい」。
僕も彼も、ほとんど記憶の途切れかけた幼少期、泥道や砂利道で遊んだ記憶がある、と確かめ合った。

『マイマイ新子~』が普遍性を持っているのは、「これは、僕らの話だ」と思わせてしまうから。そう思えない人には、永遠に遠い物語なのだろう。


舞台挨拶後、これまでお世話になった宣伝会社の人たちが、「やっぱり、貴伊子が好きですか?」 ああ、やっぱり奈子さんの貴伊子は最高よ。「なんか、新しい発見は?」 おお、いろいろあったよ。皆様、本当にありがとうございました。俺は死んでも山口に行きますよ。

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2009年11月20日 (金)

■11月のメモ「映画の記憶」■

本来なら、某劇場作品の試写会に行く予定が、外は寒いし風邪ぎみだし、何だかイライラするし、TSUTAYAに行ったら『マイマイ新子と千年の魔法』の主題歌「こどものせかい」が流れていたので……
091119_16180001その場でレンタルして帰ってきて、家でおとなしく、『バトルスター・ギャラクティカ』の記事を書いていた。やっぱり、心から愛せる作品の記事を書いてたほうが、楽しいに決まっているよね。

そして、明日21日は『マイマイ新子~』初日です。まず、プレス関係者として舞台挨拶付きで一回。夜は、小学校の友達と一緒に、二回目を見ます。やっぱり、お金を払って見ないと、気がすまないので……。

ところで、WEBアニメスタイルの原撮・動撮(2)。画面が真っ白になるのは、キャラが一瞬、フレームアウトしちゃうからなんだけど、こういうのを見ると「ああ、カメラが生きてるなあ」と、心が躍るような気分になる。


アニメ映画が、年内にまだ何本か公開されるけど、ぜんぶ見てたら、実写映画を見ている時間がなくなっちゃうね。一時期、「ハリウッドの娯楽映画なんか、どうでもいいわ」と思っていたんだけど、昨夜、サンプル版で『ノウイング』というのを見たら、眠気が吹き飛ぶほど面白かった。
あと、ケーブルで放映していた『たとえ世界が終わっても』という邦画、まったく知らなかったけど、大森南朋の怪演で、最後まで見てしまった。『尼僧ヨアンナ』もやっていたから、録ってある……なんか、学生みたいだけど、とにかく何でも見る。見返す。

例えば、僕が『化物語』を「発見」できたのは、若いころ、寺山修司にハマっていたから。あと、松本俊夫とかマカヴェイエフとか。イメージ・フォーラムに通って、いっぱい見たのよ。
だから、シャフトがどうだとか新房監督だから、という以前に、まず僕の記憶の中で、若い頃に見た実験映画と『化物語』は接点を持つ。それは、シャフトにも新房監督にも否定できないよ(笑)。
だから、自分の言葉で語れるし、逆を言えば、自分の言葉でしか語れない。それを怖れないためにも、アニメばっか見てちゃ駄目だ……と思う。


さて、廣田同人誌。
091119_01510001気がついたら、第一特集のパンツ・フイギュアが、こんなに進んでいたので、早く第二特集のラフを切らないと。

第二特集で、一本だけアニメのレビューをやりますが、「2009年の日本に、こんなアニメがあったのか」と、目を丸くします。「これ、絶対に個人が一週間でつくったよな?」と笑いながら見ていたら、実は制作会社がつくっていたので、驚きも二倍。俺みたいな人間にウケようとしてつくったんなら、こりゃあ、たいしたもんよ。
同人誌は12月20日発売予定だけど、間に合わなかったら、ごめんなさい。


こないだ取材したと思ったら、また押井守監督にインタビューすることになった。対押井監督用に、新しいICレコーダーを買うことにした。

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2009年11月17日 (火)

■アニメのグルメ■

いい加減、毎回毎回、くどいかも知れないけど、『マイマイ新子と千年の魔法』の話から。
前回、蒸しパンの話を書いたけど、これほど、おいしくなさそうな食べ物ばかり出てくるアニメ、今どき珍しいよ。ジブリの影響なのか、食べ物は何でも、綺麗な色で塗るじゃない。もう物語の流れとは関係なく、おいしそうに描けば勝ちだと思ってる。『スカイ・クロラ』のミートパイは、それほどうまそうに見えなかったと思うんだよ。そこには「退屈な日常の、退屈な食べ物」という意図を感じる。
091116_00380001逆に、『ポニョ』のチキンラーメンは、もう人類史上、最強にうまそうに見えないとダメ。それは、ポニョっていう食欲の強いキャラクターに供するから。
『耳をすませば』の鍋焼きうどんは、「絶対ウソだろ」っていうぐらい、うまそう。ジジイの手料理が、あんなうまそうなのはウソなんだけど、あのウドンは、半分ウソの、都合のいい世界観ってことで許容されている。
ジブリの食べ物は、描きこみはピカイチなんだけど、前後のシチュエーションが少々うさんくさい(笑)。魔法の食べ物すぎるんだよ。

だけど、何の意図もなくメニューと彩色で、うまそうに描くというのは、もうテンプレでしかない。どの作品、とは言えないんだけど、色指定を見て「あらら、ジブリ風料理を豪華版で出すわけですか」とため息が出た。アニメって快楽原則で出来ているから、美男美女しか出ないのと同じ理屈で、ご馳走ばかり出てきてもいいんだけどさ。飽きるよね、さすがに。
『マイマイ新子~』は、昭和30年代を意識してか、出てくる食べ物は粗末。でも、たったひとつ、絶対に美味しそうに描かなきゃいけないお菓子が出てくる。僕は、プレミア試写のとき、はしたなくゴクリと唾を飲み込んだよ。しかも、それは「子供たちにとっては」美味しそうであって、大人から見ると、たいしたもんじゃない。映画の世界観って、そうやって出来ていくんだよ。


実写映画だと、『タンポポ』なんて食品のCMみたいなシズル感を出していたよね。『ストレ516kwddrypl__sl500_aa240_ンジャー・ザン・パラダイス』のTVディナーがうまそうなのは、あんなインスタント食品を、綺麗な女の子の前で、恥も外聞もなく食べるからだよ。だから、「関係性」なの。何がうまそうかってのも。
『バベットの晩餐会』なんて、次々と料理が映されるだけで、シチュエーション不在。味も素っ気もなかったな。『ミスター味っ子』に劣る(笑)。

『ZガンダムⅢ 星の鼓動は愛』で、ケーキが出てくるでしょう。あのケーキについて何も発言してないのは、ブライトだけ。ケーキに対しては、キャラクターそれぞれ距離感が違う。戦闘アニメの中に、いきなりケーキを放り込むことで、誰が何を考えているのか、分かるように芝居を組み立てている。こりゃあ頭、いいよねえ。

091116_08060001もうひとつ言うと、本物のブランド物のお菓子を持ってきても、実写では、ああは撮れない。食べ物をうまそうに見せられるのは、いまやセルアニメの特権。デジタルで色トレスが楽になったし、色数も増えたからね。でも、だからこそ、安易に使えてしまうわけだ。
『ポニョ』で、ハチミツ入りミルクを飲んだポニョの目のハイライトが、ぱっと三つに増える。むしろ、その演出のほうをスゲエと思ってしまう。食べ物と人物が、どう関係しているか。それを描いてないとしたら、食べ物の無駄なんだ。

『マイマイ新子~』では、まず、おじいさんに出される食事の質素さにギョッとさせられる。でも、「あの時代、あれぐらい高齢の人には、これで十分なんだろうな」と想像させられる。病人だしね。つまり、食べ物の描き方ひとつで、人物のバックボーンを瞬時に説明できる。実写では難しいよ、これは。
気になってるのは、新子が映画館から出てきたときに食べてる駄菓子。酢イカだと思うんだけど、合成着色料のせいか、真っ赤なんだよ(笑)。東京から来た、深窓の令嬢の貴伊子は牛乳から始まって、あれとこれと……どんどん食べ物が変わっていく。
それを考えると、『マイマイ新子~』って、かなり豊かな「食べ物映画」なんだよ。後半、原作の『マイマイ新子』ではチキンラーメンだった食べ物が、まるで『ポニョ』へのアンチテーゼのように、姿を変えて登場する。それを食べたいとは思わないけど、この映画の食べ物の中では、一番、気持ちが入るかなあ。まずそうなんだけど、好きだな。

こんな複雑高度な、矛盾した表現ができるのって、日本のアニメだけだと思うよ。

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2009年11月16日 (月)

■11月のメモ「蒸しパン」■

『マイマイ新子と千年の魔法』の宣伝会社から、プレスリリースが送られてきた。
1114_maimaihofu01(←クリックして、ぜひとも大きい画像で見てください)
14日の、山口県での先行上映の様子なんだが、福田麻由子が、素晴らしく美しく撮れている。これで「子役」は、確かに失礼だな。
日本映画のリソースというと、すぐ監督の話になるけど、今は本当に個性的な若い俳優が増えた。谷村美月、吉高由里子、仲里依紗らの存在は、僕が邦画を見つづける根拠になっている。

山口県での先行上映は大入り満員だったそうで、まずは良かった。
確かに上映される県が片寄ってはいるんだけど、宣伝会社にメール出せばいいんだよ。最初から、あきらめちゃダメだ。僕も、公開規模の小さい実写映画の宣伝を手伝ったけど、本当に見たい客たちは積極的に「私の県には、こういう良い映画館があります。そこで上映してくれませんか」って、たった数人だけどメール出してたよ。俺は「そんなことしても、数人のために小屋、空けるかよ」って思っていたけど、ちゃんと要望のあった映画館で上映されたんだ。
僕はもう、山口県に行かないと気がすまなくなってきてる(笑)。


『マイマイ新子~』の感想で、何だかムカつくのは、「良作だけど、興行的に難しい」的な意見。業界人ならともかく、普通に試写を見た人まで、「売り方が難しい」って……。自分と、その映画が、心の中でどういう関係を結べたか。それだけなんだよ、大事なのは。
例えば、深夜放送で知らない映画を偶然見ていて、すごいショックを受けたこと、ないのかよ。そのショックが大事なのであって、「この映画は興行的にどうなのか」とは考えないじゃん。映画との出会いを、自分の外部に置いてる。それは、愛情の手抜きなんだよ。「お前一人しか知らない映画でも、愛してやれ」って話だよ。
社会的容認が、そんなに大事なのかよ。誰に何と言われようと、自分が観て良かったんなら、それでいいじゃない。最後の最後まで、味方でいてやれよ。

『マイマイ新子~』の話に戻ると、農道を走るスクーターを見て、新子が「新型じゃ」と呟くシ0273_001ーンがある。その時、おにぎりを食べてると思ったんだけど、オフ台詞で、「蒸しパンがなくなってる」とお母さんが言っていたから、蒸しパンだったんだな。その蒸しパン、実に粗末な材料で出来ているのが分かる。そういう色で塗ってある。それを、もう一回、見たいんだよ。
そういう無数の、発見と記憶と確認の連続なの。俺が『マイマイ新子~』を見つづける理由は。
それは、俺の好きでやっているし、楽しいからやってるんだよ。


同人誌は、ようやく第一特集の「人類は、いかにしてプラモデルの金型にパンツを彫りこんできたのか」のデザインに入ってもらった。
091115_02530001これはとにかく、このブログに書いたものをコピペするのではなく、足りない資料をさらに買い足し、写真も知り合いの家で撮影して……この段階で、もう数万円、かかっている。絶対に回収できないけど、これはそういう遊びだから。
写真を撮ってくれた人の家で、夕飯をご馳走になったりして、そういう経験でチャラ。その分、サービスはしますよ、と。「パンツ・フイギュア」のページは資料性もあるだろうし、僕が怒ったり喜んだりしながら書いてるので、思春期フェロモンは、一番強いと思う。

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2009年11月14日 (土)

■11月のメモ「ストレンジャー」■

『2012』の内覧試写。予言に関する映画を山ほど見なくてはならないので、眠い目をこすって出かけたら、前半のカタス20122トロフがあまりにド派手すぎて、笑った。こりゃあ、目が覚めます。
でも、この映画の「世界」って、G8と中国(チベット自治区は除く)だけなんだよ。イスラム世界なんか、問答無用で全滅ですから。うざったい連中が滅んで、(アメリカ的には)スッキリするんだろうな。

でも、『ギャラクティカ』なんて、大統領が数万人を生かすために、子供を含む数千人を見殺しにしますからね。しかも、世界崩壊後、宗教対立はあるわ、テロはなくならないわ、難問山積み。マイナーなTVドラマと、ハリウッド・メジャーの差こそあれ、この国って何を学んだろうと、頭を抱えてしまうアメリカ万歳映画が『2012』。
まあ、「バカな映画だね」って、笑ってすませるのが粋なんだろうけどさ。


『マイマイ新子と千年の魔法』、山口県先行公開、おめでとうございます。
091028_04030001(←監督から頂いたキービジュは、壁紙にしてます)
日大の芸術学部映画学科に入ったとき、学部長が、「これで、諸君は映画の苦しみだけを知ることになり、映画を楽しむ余裕を失った」とニヤリとしていたけど、僕は映画人になれなかったから、今でも、映画を楽しめている。

でも、こういう稼業だから、映画には裏切られこそしないものの、人に裏切られることは、ままある。取材したばかりに、複雑な立場に追い込まれたりね。
でも、『マイマイ新子~』では、それはなかった。むしろ、取材後に、いい思いをいっぱいさせてもらえた。
この映画は、東京から転校してきた貴伊子という女の子が、新子という田舎の主みたいな女の子に受容されていく話。俺は貴伊子なんだと思う。取材記者は、ストレンジャーなんだ。貴伊子のように、おっかなびっくりしている。いつも、自分の居場所がない。
でも、この映画は俺を受け入れてくれた。それこそ、遊び相手になってくれたんだ。

先日の、第5回目の鑑賞では、千年前の世界のヒロイン、諾子が良かったです。一人で双六をやりSgmdx060574_001ながら、「良い目良い目~、出でよ! さて、どうである?」 カワイイっすね。このシーンでは、どたばた走り回っているのに、ちゃんと口の動きが合っているのが(そういうアフレコは難しいのだ)、素晴らしい。声をアテた森迫永依は、なんとまだ12歳。
あと、試写会から帰る女の子たちが、渋い小学生のタツヨシがいい!と言ってました。そういう、「どのキャラが好きだ」という話だけでも、十分に楽しめる。それが、アニメとの正しい遊び方という気がするよ。


さて、廣田同人誌。
67153621スーパーフェスティバル51の参加ディラーに、名前が掲載されました。カッコいいディーラー名が並ぶ中、一言、「廣田恵介」。もう、とにかく名前隠して何かやるとか、そういうの一切、嫌になった。作るのも俺なら、売るのも俺。損するのも、俺。とにかく、スタンド・アローンでいつづけたい。

ただ、売るものは、僕の同人誌だけではなく、二ヶ所から委託することになりました。そんなわけで、スーフェスは、ちょっと賑やかなブースになりそうです。
来月20日の秋葉原UDXのフリマは、オモチャをたくさん持っていく予定。その中に、僕の同人誌も混じってるかもね。

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2009年11月12日 (木)

■マイマイ新子、5回目■

好きな子と会う約束をした場所へ向かう時って、電車の中で本を開く気にもなれないよね。『マイマイ新子と千年の魔法』のプレミア試写に向かう車内、僕はそわそわしているような、それでいて安心しきったような、不思議な気持ちだった。
091111_19060001
取材以外で、福田麻由子さんを見るのは初めて(プレス関係者特権で、ケータイで撮らせていただきました)。インタビューで「子役」と書いたら「女優」と直されたんだけど、確かに、今や色気すら感じる。早く新しい映画に出て欲しい。
右の長身の美女は本上まなみさん。左は、我らが片渕須直監督。他にゲストの登壇もあって、いよいよ5回目の鑑賞スタートです。


実は、周りで普通のお客さんが笑ったり泣いたりしていたせいかも知れないけど、今回の5回目が、一番楽しめた。親子連れのほか、若い女性同士の客が多かった。いかにもマニアっぽい男性客は、2人ぐらい。マニアこそ、こういう映画を見るべきなのに。
0005_1_00070今回、自分の知りたいテーマは、新子と貴伊子の背後を飛ぶ、もんしろ蝶。蝶々も「金魚」と「赤い紙」のように、この映画を紡ぐ糸なので、注意深く行方を追ってみたら、すごーく分かりやすい着地の仕方をしてました。それぐらい、初見のときに気がつけ!というぐらい。
だから、『マイマイ新子~』は千年前と現代だけでなく、あちこちで重層的に大小のドラマが発生してる。クライマックスで、新子の選んだリアリズムを、貴伊子の想像力が凌駕していく過程とかね。ぜんぶ書くと、本当の意味で「ネタバレ」になるから、イヤなんすけど……いろいろな発見を忘れてしまいそうで、怖いんだ。

来週末から公開なので、今度は映画館に見に行きます。俺は、この映画に恋してるからね。貢ぐだけ貢ぐのさ。


廣田同人誌ですが、もし間に合えば、12月20日に秋葉原の路上で販売します……って、フリマなんだけどね。
091111_05060001さすがに、フリマで同人誌だけを堂々と売るのはどうかと思うので、専門店では買い取ってくれないようなフィギュアを格安で売ろうと思ったら、ものすごい量なんですよ。ハズブロ社の巨大な「ミレニアム・ファルコン」なんて、300円ぐらいで売るのに、会場に運べないよ。

さて、先日のつづき。
ようするに、友人2人が具体案を出してくれたお陰で、同人誌の内容はどんどん決まっていったわけ。
「廣田さんの興味あるもの、言ってみて」
「ブログでやった、パンツ・フィギュアとかかなあ」
「他にも、ダニメとかありそうじゃん?」
「ああ、今はダニメより、絵本を集めてるけど……」
「じゃあ、それも載せればいいよ。後はキャバクラ?」
「うーん、最近は飽きちゃったねえ……」
「あ、王子カフェに通ってたじゃない!」
まあ、こんなやりとりで、「このネタだったら、こういう見せ方がある」とか、ファミレスでどんどん決まってしまったんだ。会話が弾めば、その時、そこが編集会議。

もう一人の友人は、メールで「予算をこれぐらいとすると、カラーページがこれぐらい、売値はいくらで……」と、印刷屋に見積もりを出させてくれた。無償でここまでしてもらったのに何もしないような自分なら、くたばってしまえ。
ついでに言うと、同人誌のタイトルも「ブログに使ってる550 miles to the Futureって、未来へ向かう感じがして、いいじゃない」と、友人が決めてくれた。俺は、何も決めてない(笑)。

何事も、半分は神様の思し召し。神様のやり残した分を、僕らが必死にやるんだよ。

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2009年11月10日 (火)

■11月のメモ「子供映画」■

YouTubeで特報を見て以来、一目惚れしてしまった『マイマイ新子と千年の魔法』。11日のプレミア試写にも呼んでいただいているのだけど、その直前が押井守さんのインタビュー。押井さんが、キリよく話し終わったら、間に合うんじゃないでしょうかね(笑)。

何バージョンもある予告・TVスポットの中では、上のがベストかなあ。
こうして90秒間に凝縮された『マイマイ新子~』を見ていると、実は意外にオーソドックスな物語曲線を描いてるのが分かります。つまり、最初に出会った2人が仲良くなり、仲間たちを巻き込んでピークに達した直後、ズドンと奈落に叩き込まれる。そこから、力技で元気さを取りもどしていく。たいていの物語は、大小二つのピークがあって、中盤の「ダウン」から、いかにして次のピークへ向かうかで、面白みが問われる……というのは江川達也氏の受け売りですが、一見、変化球を投げている『マイマイ新子~』は、ストーリー的には、かなりオーソドックスな娯楽アニメ。

そんなアニメを、どうして僕のような変わり者が、好きになってしまったのか。
もともと、『マイライフ・アズ・ア・ドッグ』『がんばれ!ベアーズ』のような子供たちが主役の1004_4_00119映画を好きなせいもあるけど、大人の堕落であるとか死であるとか、むき出しのリアリズムを子供なりの妄想力で突破していく……実際には、監督の考証力も借りて突き抜けていく、バイタリティ。それがワンカットワンカットに、ぎっちりと満ち溢れているからだと思う。
人の死が出てくるから、大人が堕落するからネガティブじゃないんだよ。それを乗り越えていく力を肯定しなくては、生きていく意味がないということ。大人の力なんか借りなくても、子供たちは勝手に頑張る。そこが好き。
たぶん俺、40歳を過ぎて、死に近づいて、だから、この子供映画に元気づけられたんだと思うよ。


さて、子供時代を飛び越して、思春期ノイローゼ満開の廣田同人誌ですが、テキストは残り数ページとなりました。デザイナーも、3日に一度は進捗報告してくれます。
さっきの「ダウンから這い上がる」話じゃないけど、この同人誌も、僕の敗北から始まりました。早い話、小説の賞に応募したんだけど、あっさり落選してしまい(その話は、同人誌の中にも出てくるんだけど)、「だったら、同人誌で出すからいいよ」と開き直ったところを、2人の友人が「ちょっと、待った」と止めてくれたのです。
091109_19550001一人は、「小説をそのまま印刷するのではなく、廣田マガジンのようにして、その中に小説を入れたら? そうしたら、読んでくれる人が増えるよ」。もう一人は「もしここで、同人誌で小説を出してしまったら、仕事として小説を書くチャンスが永遠に失われるよ」。そうでなくとも、小説の仕事は永遠に来ないと思いますが、この2人は、それぞれ、具体案を出してくれたので、たちまち僕は説得されてしまったわけです。

だから、敗者復活戦なんですよ。この同人誌も。あのまま、同人小説を出していたら、さらなる奈落が待っていたわけで。「廣田マガジン」に舵切りしたお陰で、多くの人に協力してもらえたしね。
フリーマーケットは、条件が厳しく、ちょっと難しそう。……やはり路上販売か?

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2009年11月 9日 (月)

■11月のメモ「スーフェス」■

アニメージュ 12月号 10日発売
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●『東のエデン』劇場版Ⅰ
神山健治監督、木村良平さん、早見沙織さんへのインタビューを担当しました。横から、いろいろツッコミを入れてもらったので、それもなるべく生かしました。あと、大杉くんのファンは読んだほうが……彼に対するフォローが、また熱いんで。

この冬は『人間失格』も公開されるし、アニメ・ファンは最後まで気がぬけないですね……と思っていたら、なんと来年、実写版『人間失格』も公開するんだ。煙草屋のヨシちゃんが、石原さとみ。あの小説最大の萌えキャラなのに……アニメ版のヨシちゃんも、かなり違うよねえ。というか「ぜんぜん違うよ!」ってツッコミを入れて楽しむアニメだよねえ、『青い文学』って。


「スーパーフェスティバル51」の参加申し込み書が届いた。
091107_22380001これで、来年1月10日には、確実に同人誌をお披露目できます。ただ、ここで完売とかあり得ないし、それでは面白くないので、ワンフェスにも出店して、最終的には、文学フリマへと渡り歩きたいと思います。
それでも大量に余るだろうから、そうしたら、初めて委託販売かな(希望者には、本が出来次第、通販するようにします)。

それでも、僕が路上販売にこだわるのは、なるべく多くの人に会ってみたいから。
この同人誌には、ラーメン屋のネタが二つも載るけど、アプローチの仕方は正反対。一軒は、がっちり取材して、原稿チェックもしてもらったからね。自分で打った麵を食べてくれるお客の顔を、毎日見られるなんて、うらやましいよね。
今まで僕は通りすがりだったけど、この同人誌を一人で売り歩くことで、通りすがられたいとでも言うかな。今回の同人誌売りを「旅」にしたいんだよな。

その二軒のラーメン屋の記事なんだけど、書いたのはオタクだから、ちゃんとそういう視点からの記事になってるからね。そこは安心して欲しい。


ひさびさの、ティンカー・ベル・グッズ。
091108_16500001近所の文房具屋で、一枚だけ残っていたクリア・ファイル。前に買った図柄は大量にあったけど、これだけ残量一枚だったので、確保。
ティンクって、やっぱり子供に人気がないから、こういう安いグッズは少ない。ああ、あと『ダンボ』は異色作すぎて、単独のグッズそのものが少ない(笑)。

結局、そういうものたちを、僕は好きだ。
では、今から『アサルトガールズ』を見ます。

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2009年11月 6日 (金)

■マイマイ新子、4.5回目■

日本工学院へ、『マイマイ新子と千年の魔法』講演に行って来た。
これが、超ナイスな内容で、片渕監督がアニメに興味を持った動機(『未来少年コナン』の091106_14430001 絵コンテ持参!)から始まって、21歳の時に脚本を書いた『名探偵ホームズ』の第5話を、丸々上映。その後、『ホームズ』とリンクする部分があるだろう、ということで『マイマイ新子~』の全7リールのうち、2、3、5リールのみ上映(これで、上映時間の半分ぐらいとのこと)。

その後、3カットを選んで、BOOKやエフェクトなどのパーツを分解して解説。これが、すごく分かりやすかった。これを理解するだけで、アニメの見方がまったく変わるだろうと思うのだが……キャラと声優だけではない、アニメの本質だよね。
講演後、またまた「ここ、どうやったんだろう?」というカットが出てきたので、片渕監督に質問。その答えは、僕だけの秘密の宝物としておきます(笑)。とにかく、実験精神があって、予定調和に終わらせない映画。

もっともっと、この作品に近づきたい。


『マイマイ新子~』で貴伊子を演じた、水沢奈子の主演作『赤んぼ少女』。たまたま、昨夜、見たんだよな。
水沢は、モンスター赤ちゃん・タマミと戦いつづけるけど、やっぱり、ホラー映画のモンスターと怪獣は違うな。怪獣というのは、テレビ中継されるパブリックな存在。ようするに「犯人」なんだ。

Akanbo_shoujoタマミの攻撃から逃れた水沢は、最後にタマミが使っていた屋敷内の隠し穴を這って、古井戸の底へ出る。ようするに、産道だよね。そして水沢は、タマミを抱いて古井戸から「生まれて」くる。この場面で「おー、2人は双子だったのか」と感心するけど、一瞬なんだよ。こういう映画で、「おお、考えたな!」って感心するのは一瞬。その一瞬を、忘れてはいけない。どんなズボラな人でも、「なんだ、意外に冴えてるな!」と思ったら、そこがその人の価値だから。同じことだよ。


今日から、更新のたび、ちょっとずつ同人誌のことを書いていく。
67153621路上販売は、ショバ争いの元となるので、球場のポップコーン売りのように、歩いて販売するのはどうか。首から「同人誌販売員」と書いたタグを下げ、肩からスリングする箱には「同人誌・一冊500円」と書いておく。
これなら、いざという時、「こういうファッションなんです」「こういうアートなんです」とか言って、逃げられる。移動同人誌ショップ。これは究極ではないだろうか。

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2009年11月 5日 (木)

■11月のメモ「路上、その後」■

「コミケ落ちた」件で、何人かの方からメールをいただいた。中には、「金型にパンツを掘り込む話で、ピンときた人がいる!」という、嬉しい報告もあり。
よく、宗教法人の方が、小さなチラシを持って二人一組で立っていますが、何かを世に問うのであれば、あれでいいんじゃないか。手っ取り早い。
どこの誰とも知らないオッサンに、「てめえ、誰の許可を得て商売してるんだよ?」と言われてみたい。コミケでは、絶対に言われないよね。「なに、アニメ? フイギュア? オタクの本じゃん」とか、イケメンとJKのカップルに笑われるよ。路上では。
自分の表現物が、風に吹かれるとは、そういうことだ。

そうは言いつつも、チキンな俺は、同人誌関係ではないイベントに申し込みましたよ。個人参加なので、サークル名なんかナシで「廣田恵介」と書いたら、事務局から「間違いじゃありませんか?」と電話があった。だって、俺一人しか出ないんだから、「廣田恵介」じゃん(笑)。
67153621ただ、そのイベントは来年開催なので、12月の初売りはフリマが見つからなければ、路上だねえ(笑)。この同人誌の実質は、「私の詩集」だから。ポエムの書きかたも載っているし、新宿でよく売ってる「私の詩集」だね。
特に、7ページほどの短編小説は「私の詩集」っぽいな。
チラシの予告とはぜんぜん違ってしまって、「プラモ恋愛小説」になったんだけど、深夜のファミレスや雨に濡れた国道に痛い思い出を持つ(精神的および肉体的)童貞諸君にオススメの、殺伐とした恋愛小説だ。
やっぱり、こういう本は路上で売るべきだと思えてきた。

そんなことを考えていたら、最初に「うちの卓で売りませんか」と言ってくれたサークルの方が、「路上で売るなら、二人一組でないと、トイレに困りますよ」とアドバイスをくれた。あー、なるほどね。でも、一人で売るところがいいんだよ。


『マイマイ新子と千年の魔法』のサントラ、到着。
091105_13180001あんまり予約特典とかに興味ないんだけど、片渕監督ですら手に入らない、限定50枚の手づくり色紙がね……これが欲しかったので、CRESCENTE MUSIC SHOPで購入。
この音楽聞いてると、監督のいう「ガーリー」の意味が分かるような気がするね。すごく品がいい。

そして、明日は日本工学院にて、片渕監督の特別講義。本編上映ナシなのに、二時間もあるよ! 最近、『マイマイ新子~』のために、学校にばかり行っている。


結局、僕らの営為とは、百鬼丸のように、生まれながらに失われたものを戦いながら取りもどしているのだと思う。喪失感のない人は、よくも悪くも「戦う」「悪あがきする」という概念そのものが、生まれながらに欠落している。

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2009年11月 4日 (水)

■11月のメモ「路上販売」■

12月に向けて同人誌をつくっているのだけど、コミケには落選した。
091103_22270001もう3分の2ぐらい、デザインも上がっていて、印刷屋に入金もしたんだが……あるサークルさんから「うちの卓で、委託販売しますよ」と声をかけていただいたけど、それは図々しいので、丁重にお断りした。
そのついでに、コミケ以外のイベントのことも聞いてみたら、「ノージャンル」即売会の場合、ほとんど全て「腐」なので、孤立感がハンパじゃないとか(笑)。

いっそ、三鷹駅南口で、『ビッグイシュー』を売るホームレスの横で路上販売するか?と、ちょっと本気で考えてしまう。
67153621キャバクラ、恋愛、犬、フイギュア、絵本、食べ物、グラビアポエム……と、ここ3年ぐらい、自分が愛着を感じたもの、僕が捨てたもの、僕が捨てられたものを凝縮したような、それこそ「ノージャンル」な本なので、路上で売るのが最もふさわしいのかも知れない。
自分をリサイクルして出来た本だから、フリーマーケットとかね。
「550 miles to the Future」は、12月に「日本のどこかで」発売予定。定価500円。


ケーブルテレビで、しつこく『サイドカーに犬』をやっている。
21a56416なかば居眠りしながら見てたんだが、やっぱり、子役の松本花奈の存在感がすごい。この子ひとりで、映画一本を救っている。いや、壊している。

話の構造としては、竹内結子演じる父の愛人に、型にはまらない生き方を教わったという美談なのだが、松本花奈は、完全に竹内結子を手玉にとっている。
竹内結子が「花火を打ち上げようか」と、いかにもガキの面倒を見てやってますという芝居をする。ところが、松本花奈は怖ろしく自然に、「石がいるよね」と小石を持ってきて花火を立てる。竹内に合わせて子供のフリをしてあげてるだけで、竹内より人生経験が上に見えてしまうのだ。
つまり、松本花奈という女優から見た『サイドカーに犬』という物語は、監督や竹内結子が目論んだ『サイドカーに犬』より、ずっと複雑で秘密めいたものだったのではないだろうか。

女優の演技が、物語の目論みを凌駕する。映画に限らず、こういう革命的な瞬間を、僕はいつでも待っている。

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2009年11月 2日 (月)

■11月のメモ「メカニック」■

ガンプラの常識 4日発売予定
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今回だけ、1/288ガンダム付きなので、600円です。
初期ガンプラの、試作メカ・シリーズ(アッグとかゾゴック)までのキット解説を担当しています。
一応、最新のガンプラ事情も押さえてはありますが、カラーページは飽くまでも「こんな改造、流行ったよね?」的な思い出話です。


自分の関わった本は、必要以上に喧伝したくないんだけど、今号の「アニメージュオリジナル」は面白い。映画とアニメ、両方とも好きな人は、買って損なし。
091101_18390001どの監督のインタビューも良いのだが、渡辺信一郎の「芸術ぽい映画より、こういったアクション映画のほうが崇高なのではないか?」という発言がナイス。「崇高」という概念を持っているところが、素敵。どんなにフラれて女に失望しても、「この世には女神がいるに違いない」と信じつづけるのに似ている。自分なりの信仰を持つことは、何より大切だ。

友達の付き合い程度にしか映画を見てなくても、見た映画をすべて「面白かった」と言える人は、心が澄んでいる。映画とも人とも、幸せな関係を結べているからだ。


「アニメージュオリジナル」を読んでいたら、無性に実写映画が見たくなったので、『ヤッターマン』と『いのちの食べかた』を借りてくる。
『ヤッターマン』は、「CGがあるんだから、これぐらいは撮れて当然」という三池崇史の乾いた呟きが聞こえてきそうな、ニヒルな作品だった。
『CASSHERN』のアンドロ軍団には、紀里谷和明のメカフェチぶりが感じられた。アンドロ軍団だけでなく、人類側の爆撃機や列車、ヘリなんかもマシン・エイジ調で、すべてカッコよかった。『CASSHERN』には、紀里谷和明の、はた迷惑なまでの執着が込められていたと思う。その逆に、『ヤッターマン』のデザインにはコンセプトがない。

Big『いのちの食べかた』は、実はメカ映画ですよ。
魚や豚をさばくメカニックの機能美に、陶酔に近いものをおぼえてしまう。とてもエロチックだ。おそろしい数の、効率的・衛生的かつ残虐で無慈悲なメカニックが登場する。「神をも怖れぬ」とは、まさにこのこと。

目的があって、周囲の環境やオペレートする人間までを含めて、「メカニック」なんだ。だから、無目的にロボットが単体で稼動している状態は、メカニックじゃなくてキャラクター。
『ガンヘッド』が今ごろになって見直されているのは、キャラではなくてメカに寄っていたからだと思う。燃料の調達を、人間にやらせたりね。そういう描写が続出するのは、原田眞人監督がコンセプトを持っていたからですよ。


「よし、いっぱい映画を見よう」という気持ちになったら、幸か不幸か「予言をテーマにした映画をたくさん見て、解説を書く」という仕事が来た。予言って、ノストラダムスとか、ああいうの。
大量に破壊シーンのある映画ばかりだと、嬉しいな。

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