■なりそこないの義務■
仕事が忙しくなる前、何だかムラムラしてきたので、『地球が静止する日』を借りる。とにかく大破壊シーンのある映画を観たい、という心境はアダルト・ビデオを見たいムラムラと同質であることに気がついた。どっちも「世間と隔絶して、理性を捨てたい欲求」だからな。
『地球が静止する日』ってのは、問答無用で文明を破壊しに来る話ですからね。「もう、我慢ならんよ、俺は」って、とにかくモヤモヤ、ムラムラしているのは、怪獣と変わらない。キアヌ・リーブスが、肉で出来た宇宙服を着て、地球で「生まれる」という設定が象徴的だ。それって、着ぐるみにくるまれた童貞じゃないですか。
警護用に巨大ロボットを連れてくる、というのも童貞ドリームで、良かった。
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気軽に「童貞ドリーム」と書いているようだけど、俺は否定語として「童貞」という言葉を使った覚えはないよ。非童貞は、物理的に証明できないから、精神論にならざるを得ない。あとは、童貞喪失体験が甘美であったかどうかという、やはり童貞的な思い出話になってしまう。
童貞語りそのものが、童貞的。そのパラドックスを、僕は愛する。いかにもヤリまくってます、という顔をしているやつは、みっともない。動物として優位に立っているだけで、人間的な迷走がないもん。
俺なんて、「次の童貞喪失は、いつになることやら」って、寄せてはかえす波のようなコンプレックスを20年間、感じているよ。それは、肉体の問題じゃない。朝、セックスをしても、夜には童貞になって帰ってくる。その後、二度とセックスしなかったら、一生童貞ですよ。この感覚、ヤリチンには分からないと思う。
ヤリチンの性別ってのは、男ではなく「オス」ですから。そして、過去に何があろうと、俺の性別は「童貞」。男ですらないんだよ。でも、それが俺のアイデンティティなんだ。
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コメント欄にも似たことを書いたのだが、「男のなりそこない」として生まれてきた者には、「なりそこない」なりの義務があるのではないだろうか。
つまり、社会不適合者は、「適合しなくても困らない術」を学ぶ必要がある。会社に属さないフリーランスでも、前後の流れを考えないと、仕事そのものを破綻させてしまう。そこんとこ、「上手く」やらないといけない。上手いこと、組織の外に立っていなきゃいけない。
はぐれ者の作法、ってのがある気がする。
「社会に必要とされる、完成された成人男性ではない」自覚を持ちつつも、社会とコミットしつづけること。メンドくさいけど、必要なことだよ。
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今週は『マイマイ新子と千年の魔法』イベント、多数。いま、別作品にがっつり関わっているけど、何とか行きたいなあ……。
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コメント
マクロスFやアクエリオンを見て…
廣田さん、脚本や構成に参加してあげてください!
投稿: レッドロック | 2009年10月23日 (金) 20時33分
■レッドロック様
ご無沙汰しております。かなり以前、書き込みされていたレッドロックさんですよね。
僕は、脚本とか構成とか、そういう才能はありません。『アクエリオン』はドラマCDの脚本を書きましたが、あれは番外編だったからですね。
投稿: 廣田恵介 | 2009年10月23日 (金) 21時58分
社会不適合者であったとしても、仕事不適合者にはなりたくないですし、仕事はモノにしていきたいです。
(ジェンダー論では無い)男のあり方というのを、私みたいななりそこないなら尚更考える必要があると思ってます。
投稿: ohagi | 2009年10月25日 (日) 06時33分
■ohagi様
>仕事はモノにしていきたいです。
ええ、そういうことだと思います。僕は「就職しろ」と言われ続けたんですけど、実際はフリーランスでも、誰かの役には立てるんです。選挙権もありますしね。
一時期、ジェンダーの本も読んでいたのですが、頭が固すぎて面白くなかったです。既存の「男らしさ」に対して、そろそろ反逆してもいいんじゃないかと思います。
投稿: 廣田恵介 | 2009年10月25日 (日) 13時06分