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2009年8月 2日 (日)

■実写の『ガンダム』があるとしたら、監督は貴方だ!■

ちょっと前に、『化物語』の作り方は、意外に古典的なんじゃないかと書いた。
先週の放映では、カットナンバーを画面に入れてきた。それは、絵コンテの存在を意識させることだし、この作品が「作り物」であることを、視聴者に再確認させることにもなる。普通、カメラの前で起きたことを「事実」と錯覚させるよう、映画はつくられる。テレビアニメも、基本的には同じはず。カットを重ねて、その連なったカットが「芝居」「シーン」として、認識される。
090801_19310001その約束事を、『化物語』は避けているんじゃないだろうか。カットを重ねるごとに、「シーン」を解体しているかのように見えてきた。少なくとも、芝居がカットをまたぐことは、このアニメでは、ほとんどない。つまり、カットの独立性が高い。カットひとつが、過剰に意味を持たされている。
たまに「黒齣」「赤齣」が挿入されるが、これらはカットとカットを分断させる役割を持っている。それに早く気がつくべきだった。
何だか、『化物語』は、「アニメ」というピースを使って、別の何かを組み立てているように、僕には見えてきた。実に、エキサイティングだ。


去年の大ヒット映画を今ごろDVDで見るのって、ちょっと恥ずかしい。でも、書く。
矢口史靖って、あんまり好きじゃなかったんだが、『ハッピーフライト』って、何だこのメカフェチ映画(笑)。航空機って、たった一機で飛んでるんじゃなくて、人と物を組み合わせた巨大なシステムなんだな。考えてみれば、自動車だって、ガソリンスタンドや道路を含めた広域な「移動システム」だよね。やっぱり、お台場ガンダムには、カタパルトや整備士が必要だったんじゃないの?
つまり、空気や天候をもシステムとして取り込んだ、巨大な移送メカニックが航空機である。それに気がついた矢口史靖、実写の『ガンダム』があるとしたら、監督は貴方だ!

しかし、『エヴァ破』以来、変なスイッチが入ってしまい、綾瀬はるかが機内でケーキを焼いて、汚名返上するシーンで、泣いてしまった。食事シーンを大事にする映画は、無条件に肯定してしまう。
Hf_004女優的には、やはり田畑智子が最高でしょう。あのヒラメ顔。フラれたと思ったら、実は……というオチが、「ちょっとしたご褒美」って感じで、良かったね。あと、地上勤務という地味さ加減が、田畑智子という女優にピッタリ。女優という花にも、いろいろな咲きどころがあるってことだ。

とにかくね。「旅客機を飛ばす」という技術、思想、職業に対する敬意が、すみずみまで行き渡った映画だ。人類って偉大だなー、と素直に思える。こんな盲目的に、文明礼賛でいいのかなって思うけど、そのヤバさも魅力なんだよなあ。


年末に出すつもりの同人誌、フライヤーをつくってもらってます。
090801_21340001 「責任編集」という言葉だけは避けたかったのですが、デザイナー氏が入れてしまったので、「お前、逃げんなよ」的な戒めとして、残すことにしました。
あと、誌名はこのブログと同じタイトルです。なんか、新たに考えてハズしたら嫌だな、と思って。

このフライヤーは、コミケ最終日、【時祭組】のブースで配ります。

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コメント

廣田さん、『化物語』の作品紹介にとても感謝しています。
新規放映のアニメは全てチェックできない、その上見るアニメを選択しなければならない環境(私のキャパシティの問題でもあるんですが)のなかで、『化物語』を見ることができて本当に良かったです。
映像(映画)表現技術や映画史には、疎いのですが、『化物語』はアニメとしては異質な表現方法を使っているけれど映像作品としてみると特に違和感がないのです。
映画の手法を取り入れてるというのは、納得なんですが、すごくリズム感がいいですよね。映像とストーリーの流れがとても滑らかです。(私の見方が大雑把だからだというのもありますけど。)
エンディングの後もう一度はじめから見てみたくなる作品です。

「ハッピーフライト」の紹介も感謝です。
ヒコーキオタなのに見逃したので。


投稿: DH98 | 2009年8月 3日 (月) 21時24分

■DH98様
『化物語』は、素直に「泣ける話だった」と友達は言っているので、「あっ、話は泣けるんだ?」と気がつかされたりで、面白いです。僕は、ひたすらカットのテンポ感を楽しんでいるんですよ。
そこは、人それぞれだと思います。単純に見ていて気持ちよければいいわけであって、アニメのお約束なんて忘れてもいいはずですし、まして全て見る必要なんて、ありません(笑)。
「アニメ」という枠組みを自ら規定している人には、とても窮屈な作品かも知れませんけどね。

>「ハッピーフライト」の紹介も感謝です。
>ヒコーキオタなのに見逃したので。

『ユナイテッド93』よりは、航空機の飛ばし方が、よく分かります(笑)。
伊丹十三の衣鉢を継ぐ、「異業種、のぞいてみましょう」映画ですね。90分という短さも良いですし、俳優が適材適所で、とにかく飽きません。

投稿: 廣田恵介 | 2009年8月 3日 (月) 22時06分

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