■8月のメモ「盗む」■
ツラツラ思った事をメモしておきますと、NHK-BS2の「ガンダム宇宙世紀大全」で放映された『ガンダム0083 ジオンの残光』、これ、十年ぶりぐらいに見たけど、意外や良かった。熱かった。
話は相変わらず中二ガンダムなんだけど、もう、作り手の「俺たちのガンダムを手に入れて、ここで終わらせる」覚悟が、画面からほとばしり出てる。新解釈のコロニー落としもやって、ソーラ・システムも付けてやらあ! それで富野ガンダムに無理やり繋げて、しかも「全記録抹消」で無かったことにするんだから、これぐらいやらせてくれよ!みたいな。ラストの、ガトーとコウのくどいくどいくどい、く・ど・い戦いなんて、男子一生の「悔いの残らない仕事」そのものですよ。
あの戦闘シーンを見て、何も思わなかったら、どうかしてます。
ガトーが残存した兵士に、「一人でも多く生きのびて、この戦いを後世に」ってムチャクチャを言うけど、分かる! あれは「このアニメを終わらせたくない」「忘れて欲しくない」というスタッフの叫びだ!
総メカ作監の佐野浩敏氏は、この時、30歳になるかならないかぐらい。いい仕事、残したよなあ。
キャラでは、シーマに利用されたデラーズの泣き顔ね。瞳が潤んでるだけで、涙を流してはいないんだけど……なんて純粋な心を持ったハゲなんだ、と。あの表情を見ただけで、今までの、どこか幼稚っぽい言動は、すべて許せる! みんな大人になったんだから、中二ガンダムを許容する心意気を持とうぜ!(←茶化しているようですが、けっこうマジで泣けました)
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しつこく、『化物語』第5話のカット繋ぎ。カット割り、と言った方が適切なのか、そうでないのか。
実際の画面を使って説明できないのが歯がゆいんだけど、Bパート。戦場ヶ原が長ゼリフを言う。カットが四つに分かれている。バストショットに近い正面顔、目元のアップ(動画あり)、唇のアップ(これはバンク)、閉じた目元のアップ(止め)。この4カット、セリフは継続しているのに、ぜんぜん繋がってない。同じキャラの顔なのに。
もうひとつ、ラスト近くで、戦場ヶ原と阿良々木のやりとり。単純な切り返しなんだけど、戦場ヶ原だけ、刻々とポーズが違っている。ワンカット、足元の重心移動が入るものの、「この短時間に、こうまでポーズ変わるかな?」と、ちょっと引っかかる。
これらを実写でやったら、「編集に失敗した自主映画」ですよ(笑)。普通、1分の会話シーンを、カットを割って撮るんなら、1分以上はカメラを回す。それを編集で上手く繋いで、架空の「1分」をつくるわけだ。ロングの絵とアップの絵が繋がらなかったら、その「1分」は崩壊してしまう。トータルで「1分」になっていても、それはもはや、お芝居を見せるための「1分」ではなくなっている。何か別の意味を持った「1分」なのだ。
つまり、各カットが「時間に奉仕してない」んですよ。解き放たれた絵の集まりでしかない。時間という縦方向を無視して、空間的に散らばっていく。『化物語』が観念的・抽象的に見えるのは、色や背景の効果ばかりでなく、ひたすら時間を拡散させていく、編集のせいなんじゃないかと思う。30分が、30分ではなくなっていくんですよ。
だから、見終わったとき、すげえ疲れるんだけど(笑)、でも、僕らの知らない何かが、目の前で生成されていく――それが、『化物語』の快感かなあ。友達は「泣かせるストーリーだ」って言うんだけど、僕は泣きはしないな。それは、人それぞれ。
実写の世界で、今でもそう言っているかは分からないけど、「盗む」という符丁がある。
例えば、1.5メートル離れて話していた男女を、別アングルから撮るとき、二人の距離が近すぎたりすると、「もう、50センチ離れてくれる?」と指示して、2メートル離して、芝居を継続させる。これを「盗んで撮る」という。
ようするに、空間に対してウソをつくわけだ。その「盗む」に近いことを、『化物語』は編集の段階でやっている。
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同人誌版『550 miles to the Future』、フライヤーの紙を選んで、印刷発注。
安く上げるため、余った紙を使わせてもらうんだけど、「絶対に、ベージュがいい。白はイメージじゃない」と意地を張ったら、「だったら、いい紙があります」と、奥からイメージどおりの上質紙を出してきてくれた。でかいんだけど、2枚ずつ刷って、半分に切ってくれるという。
本誌の方は……はっきり「NO」と言ってくれれば、ちゃんと別ルートへ舵きりできるのに、態度を留保する人が多くて、ちょっと困っちゃう。
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コメント
体調よければ数年ぶりにコミケに行こうかなと思ってます。
昨年のメガゾーン本は知人に代理購入して貰っちゃいまして…
裏表紙のカントクの顔が大好きです。
投稿: 北村 | 2009年8月 4日 (火) 00時36分
■北村様
石黒昇監督の、あの写真は今号でも使ってますよ(もちろん、監督の許可はおりてます)。しかも2枚(笑)。
あと、今年は【時祭組】で売り子やりますからね。僕のことを殴りたい人、全員集合です。
その代わり、一冊は買ってくださいね、と。
投稿: 廣田恵介 | 2009年8月 4日 (火) 01時00分