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2009年7月31日 (金)

■女の子と一緒に行って、失敗した映画■

アニメージュ オリジナル Vol.4 本日発売
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●夏を描く技 part 2 『崖の上のポニョ』
●夏を描く技 part 3 『夏のあらし!』

この2本が並ぶというのも、何だかすごいですけど、どちらも近藤和久さん(作画監督)のインタビュー、新房昭之さん(監督)と大沼心さん(シリーズディレクター)のインタビューが、そんなに多くはありませんが、載っています。

●「映画」をつくり、つくり終える、ということ。
『空の境界』公開直前ということで、岩上敦宏プロデューサーと近藤光プロデューサー、それぞれ別々のインタビューです。いかにもufotableらしい、無駄に豪華なカットが楽しいです。

●尾石達也の演出
8ページにわたるインタビューです。もちろん、『化物語』中心ではあるのですが、オープニングの仕事も、ちゃんと網羅してますからね。誰がバラしたのか知りませんが、ご本人に私のブログの存在が知られており、『101匹わんちゃん』のマシントレスの話題で盛り上がったりしました。

●作家・河森正治の足あと 第三回
私が京都まで旅行したのは、キャバクラ目的ではなく、このページのためだったのです。これぐらい取材しないと、説得力が出ませんから。

以上を担当しましたが、インタビューは記事の「裏づけ」として必要だったから入れたのであって、基本的には「ややメイキング寄り」の企画の方が、多いはずです。やっぱり、「これを聞きたい」「こういう記事にしたい」という確信を持って取材しないと、インタビューって穴埋めみたいになってしまう。もうひとつ、インタビューすると、原稿チェックの名のもとに、根底から別の意図をもった文章に書き換えられてしまうリスクが生じます。
まだまだ理想には遠いのですが、「アニメージュ オリジナル」、頑張っていますから、よろしくお願いいたします。


一昨日は藤津亮太氏と、飲みながら雑談する連載の収録日であった。途中で編集者も加わり、「女の子と一緒に行って、失敗した映画」の話題になり、これがすげえ面白かった。
僕は、『王立宇宙軍』の3回目を、女の子と観に行った。上野公園のボートの上で、「コンピューターのことを電子頭脳って呼ぶ、そういう世界なんだぜ!」と一人で盛り上がって、「?」という顔をされたのを、よく覚えている。それでも強引に観に行ったのだから、たいした度胸だ。

あとは、『スター・ウォーズ ジェダイの復讐』に行ったとき、上映が始まるまでの間、『新た090729_12520001なる希望』と『帝国の逆襲』のあらすじを、10分ぐらいかけて、一気に説明した。映画が終わったあと、「それで、“ジェダイ”って結局、なに?」と聞かれて、一言も答えられなかったことも、忘れられない。
(↑『帝国の逆襲』を絶賛する庵野さんはカッコいいのう)
その後、『グレムリン』『ブレードランナー』とつづき、「どうして、こういう映画ばかりなの? もっと普通の映画が見たい」と言われたんだっけな。
大学は映画の大学だったから、今度は、相手の方が詳しかったりするんだ。「『ホテル・ニューハンプシャー』が好き。ああいうのを、映画っていうのよ! あなた、映画をなめてるんじゃない?」と言われて、呆然としたっけ。その頃から、だんだん知恵をつけて、「絶対に外さない映画」「インテリっぽい映画」「通っぽい映画」と、狙いをしぼっていく。……実に、つまらんよなあ。
やっぱり、「コンピューターを電子頭脳と呼ぶ、そういう世界観なんだよ!」と力説している方が、絶対に正しいよ。あの時の俺を、今の俺は否定できないもん。

アイドル時代の工藤夕貴のファンクラブに入ってみたりもしたけど、そういう10代の頃の恥ずかしい選択って、絶対に正しい。今、あれこれ迷ったすえに選びとるものより、絶対に「己」に近いものを選んでる。

余談だが、いま、工藤夕貴って、すごい美人になってるんだなー! 画像検索して、腰を抜かした。17年ぶりに出演した邦画『春よこい』、TSUTAYAにあるかな? やっぱり、10代の頃に好きだったものに、ハズレはないってことだな!


夕方寝てたら、同人誌に協力してもらう予定の編集者から電話があり、「今晩、どうで090729_23390001すか?」と言うので、居酒屋→居酒屋→キャバで、朝まで。

どうして、『エヴァ破』に、マリなんていうお邪魔なキャラクターが必要なのか、えんえん聞かされたけど、あれを思い出した。『バーチャロン』二作目で、「アジム」という理不尽なほど強いキャラが加わったんだけど、プロデューサー曰く「アジムのような、ゲームをしっちゃかめっちゃかにしてくれる存在は、絶対に必要」と。そうじゃなきゃ、「二作目なんだ」という、強い押し出しにならない。
おそらく、人生にも「アジム」のような、ルールを無視したような存在が必要なんだろうね。

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2009年7月28日 (火)

■男の戦い■

自主制作特撮映画『亜空間漂流ガルダス』第3話完成、と聞いて、日曜日、ワンフェスに行ってきた。
090726_14350001桜文鳥さんのフィギュアを、初めて間近で見た。けっこうデカい。やっぱり、模型というのは直に見ないと、意味がないね。
あと、前に行ったときも思ったけど、怪獣つくってるお兄さんたちは熱い。もう、映画なんてなくても、死ぬまでゴジラ作りつづけてやる!みたいな。ここを先途と戦う人たちの仕事(趣味だけど)は、見ていて圧倒される。「今さら、怪獣かよ」などとは、口が裂けても言えないのである。

さて、『ガルダス』ブース。
090726_14400001前回とは違って、けっこう人通りの多い島にあり、なぜか、ボークス製の1/8スコープドッグが置いてあった。『ガルダス』と『ボトムズ』、絶対関係ないのに、なんで置いてあるの、と(笑)。よく、無意味にぬいぐるみが大量に置いてある薬局なんかがあるけど、ああいうムードなんだよね。特に、理由はない。
なんかこう……この場で誰かに勝ちたいとか、今この瞬間、話題をさらってやろうとか、そういう狙いが一切ない。セーブしてるとかじゃなくて、最初からない(笑)。無意識ほど、強い武器はないですよ。

さて、帰宅してから、『ガルダス』第3話本編を見た。
090726_22230001個人的に一番ウケたのは、前話ラストで思わせぶりに登場した、謎の新型ロボの扱い。またしても、コイツが戦闘に介入してくる。主人公は、この正体不明のロボのことをどう思ってるのかな?って見てたら、「てめえ! もう少しで俺に、弾が当たるところだったぞ!」って、ロボがロボをボコってる(笑)。もう、子供のケンカそのもの。
普通、二度も謎のロボが出てきたら、そろそろ敵か味方か、ヒントぐらいは与えるでしょ。そんなことより、ヒロインの「私の元カレが~」発言に主人公が傷ついたり、そっちの方が大事。それが『ガルダス』。
つまり、巨大ロボと綺麗なお姉さんが、最優先の世界。で、男って、ロボ(趣味と言いかえてもいい)とお姉さん(美少女でも恋愛でも、何と呼びかえてもいい)の二大要素があれば、ひょっとして、それでお腹いっぱいじゃないの? 『ガルダス』って、それに気がついているような気がする。その上で「いや、男の人生、それだけじゃないよ」とか、「男として生まれた以上、家庭を守らなきゃ」とか、見る者に考えさせるような……というか、俺は考えちゃったよ。

この先、どんなグダグダになろうと、『ガルダス』に最後まで付き合ってやろうと思ってしまうのは、意外に「男の生き方」という古風なテーマに、さらっと触れているせいなのかも知れない……って、スタッフは、そんなこと、露ほども意図してないだろうけどね。 


『エヴァ破』について、「アヤナミが食事会の提案をしたところで、泣けた。萌えとかじゃなくて、俺がアヤナミ自身のように感じた」と熱弁したら、「廣田さん。もうちょっと、人間の流れの中で、暮らしてみたら」と、難しいことを言われた。「お前、離婚して、好き勝手に一人暮らししてないで、ちゃんと社会人らしく生きろ」みたいな意味かも知れない。
ちゃんと生きれば、僕も『エヴァ破』を見て、「ドラマ構造が、破綻している」「演出が、甘い」などと言うようになるのだろうか。

映画を見る時も、旅行に行く時も、あるいは人と会う時も、僕は驚きを求めている。得も損もない。驚ければ、それでいい。そしておそらく、心が欠けているから、驚きたいのだろうな。

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2009年7月25日 (土)

■エヴァ破について、ちょっとキモい感想でも■

いやあ、『エヴァ破』三回目、行って来ましたよ!……と言いたいところですが、見てもない090724_15100001のに「CUT」だけ買ってたり、うじうじイジけて、昨日まで見てなかったのです。

当初の予定では、小学校以来の友達二人と、はやばやと見に行くはずだったんだよ。ところが、そのうち一人に理不尽な言いがかりをつけてしまい、「今は、お前の顔を見たくない。また、今度な」と言い残して、僕だけ欠席。彼を許すまで『エヴァ破』は、絶対に見まいと誓って。バカだよね。
でも、こうして、一人で見に行けたのは、もちろん、彼への親しみが蘇ってきたから。だから、つたない字(しかし、ちゃんと女の子らしい字!)で、食事会の手紙をせっせと書く綾波の姿に、一人で超然と突っ張っていた自分を、重ね合わせてみた。彼女の言う「心がぽかぽかする」ってのも、今の僕の気持ちに、ずぶりと柔らかく突き刺さった。あのセリフから以降、もう目元が潤みっぱなしですよ。

トウジが、友達二人にアイスをおごる。アスカが、鍋で何かつくっている。自分だけでなく、誰かの、友達のために。人とゴハンを食べることが、この世界では、ゼーレの謎なんかより優先されている――でも、それって当たり前の幸せだよね?
こんな中学生日記みたいなプロットに、「もっと友達を大事にしようよ」と言われたような気がして、42歳、心の奥で号泣。だから、「これから見る人は、友達と一緒に行きなよ」と、ちょっとキモいことを、かなり本気で言います。
綾波は、何度か「ありがとう」と言うけど、あれだれ一日に何度も「ありがとう」と言えてるか? 言えてる人、いる? 俺は、言えてないねえ。
帰宅してから、例のプチ喧嘩していた友人に、まっさきに感想をメールしましたよ。彼は、「手の平かえして、絶賛しそうだな」と予期してたけどね(笑)。でも、それすらも、嬉しいことです。

もちろん、映像ビックリ箱の連続には唖然としたし、タイムシートを見たい超絶作画もあったし、逆に10年前から進歩してない部分に多大な不満もあるんだけど、映画も僕も、生き物です。こういう生々しいタイミングで、『エヴァ破』を見られたことで、今の僕は満足。
考えてみれば、春エヴァも夏エヴァも、友達と見に行ったんだった。たまたま、二人とも音楽をやっていた。そのせいか、反応もダイレクトだったな。


長らく、このブログでも話題にしていなかった自主映画『亜空間漂流ガルダス』。なんと、第3話の予告編がUPされていました。
やっぱり、この映像を見てしまうと、応援せざるを得ないんですよね。「えっ、タケハル氏にアクションさせるの?」って、小さいけれど、大きな驚き(笑)。『エヴァ破』で、シンジくんが「ブハーッ!」って血をはいてましたけど、『ガルダス』第1話を思い出したのは、日本で僕だけでしょうね。
日曜日のワンダーフェスティバルは、また『ガルダス』ブースのレポートのため、行ってみたいと思います。宅番はB16-15ですからね。皆様もぜひ!


『ギャラクティカ』情報。やっと、シーズン3後半のDVDが届きました!
090724_14330001いつも、デザインのいい外箱を捨てられずに取ってあるわけですが……。
あと、『RAZOR/ペガサスの黙示録』のDVDには、なんと『RAZOR FLASH BACKS/第一次サイロン戦争』も収録されるそうで。
イベント企画(ゲストあり!)も進行中だそうですが、まだ秘密みたいですね。


本日のティンカー・ベル。
090724_15340001小物入れというか、裏を見たら、クッキーの空き缶なんですね。でも、デザインがいいし、僕は購入して満足。
やっぱり、前髪を強調してある絵は、信用できる。

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2009年7月23日 (木)

■お台場ガンダム、ジオラマ感覚■

シネマガールズ 4 発売中
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●「人でない役」に、キュンとくる!
もともと、この記事のアイデアは、谷村美月が『死にぞこないの青』『おろち』等、人間以外の役ばかり演じていた頃、「この時期の彼女の活躍は、記録しとくべきだろう」と思ったことが、発端です。だから、ラストは谷村でしめくくりました。
この夏、谷村美月は、2本もアニメに出るんですね。ひょっとして、今度は「そういうサイクル」に入ってしまったのか? ……と、本当にヒヤヒヤさせてくれる女優です。


コメント欄で、有意義なやりとりをさせていただいたので、再び、お台場ガンダムのこと。↓の動画なんて見てると、カメラは人ばかり映してる。あと、イントレ(足場)とか。

こういう周辺物、対比物を使ってスケールを感じるのって、ジオラマ(情景模型)だよね。そう言えば、『ガンダム大地に立つ!!』って、タイトルからしてジオラマっぽいじゃないですか。
この第1話では、ガンダムはトレーラーに寝ていて、トレーラー周辺に施設があって、ちょっと離れた樹林からザクが見ていて……この空間設定が、まるっきりジオラマ。その模型的広がりの中、ザク視点のカメラがコロニー、施設、ガンタンクの部品へと、どんどんフォーカスを絞っていく。絞りきった時に、やっとガンダムが出てくる。ガンダムは、いきなり、つっ立ってるわけじゃないんですよ。ジオラマの一部だから、そこに居られるんです。
それに似たスケール感を、お台場ガンダムで追体験しようとしたら、作業員やイントレに囲まれた、建造途中の状態を見るしかないわけだ。

『ガンダム大地に立つ!!』では、パイロットが盛んに、ザクから乗り降りするよね。あれもジオラマになっている。執拗に人間と絡ませることで、モビルスーツのスケール感を意識させている。だから、おSgmdx06gds6834_04台場の場合、作業員役のキャストが、一日中、クレーンの上からメンテしてる演技してないと、大きさは伝わらないねえ(笑)。
(←このガンプラ、僕にはちゃんと18メートルに見えるのです)

コメント欄にも書いたけど、ジオラマ感覚というか、スケールモデル感覚があるかないかで、お台場ガンダムへの感想は、まるで変わってくる。
戦車のプラモデルに、最初に歩兵のフィギュアを付属させた設計者は、世界が「関係性」で成り立っている事を、よく理解していたのだろう。
人間の目って、それほど便利じゃない。だから、「演出」が必要なんだ。上に貼らせてもらった動画のラスト、おじさんがジョギングしてるでしょ。ガンダムより、そのおじさんの方を、はるかに大きく手前に入れている。だけど、「ああ、確かにガンダムが居るな」と実感できる。アドリブだろうけど、優れた演出。


ジオラマ感覚といえば、宮崎駿も、模型ゴコロの分かる監督さん。
155ramuda1どうして、左のラムダが「在る」ように見えるかは、説明するまでもないでしょ。ビルの窓ガラスに、奥の風景込みで映っているから。ラムダそのものが問題なのではない。物体がガラスに映るという事象、ラムダと風景の「関係性」が、このカットに迫真性を与えている。
こうした、関係性の生み出す演出効果によって、僕らは「この世にない物」を、あたかも実在するかのように、錯覚したがっている。そう錯覚したほうが、気持ちいいから、だよね?


本日のティンカー・ベル。
090722_09120001表参道で見つけた、クリアファイル。126円だって、安っ。デザインは良くないけど、これは買ってもいいでしょう。
昨日、知り合いからメールで「どの辺りまで、ティンクのグッズを集めるつもりなんですか?」と、判断基準を聞かれたけど、うーん。
「本物」は、フィルムの中にいるからねえ。

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2009年7月20日 (月)

■『化物語』は、映画史と交差している■

『メガゾーン23』への愛に貫かれた同人誌、『フェスティバルタイムズ Vol.1』の情報を、もうちょっと。
1228343276_25左は、R-AREAによるマンガ『メガゾーン23 SECRET GAMES』の、予告カット(本編のコマを繋ぎ合わせたもの)。結構、ガーランドが出てくる模様。あと、ロゴがカッコいいですね。原作のイメージ残しながら、新しくしようとしている。

今回の本は、きみづか葵さんによる表紙、原健一郎さんによる裏表紙(80年代を意識させるハードジョークになってます)のみカラーで、中身はモノクロ。その代わり、ページは増えています。
12377参加メンバーを列挙します。R-AREA、魚谷 潤、Adrian Lozano、きみづか 葵、ギムレット、佐伯 ゆずる、正太、トーマス107、Tomson、中村 征太郎、ナンディ小菅、原 健一郎、廣田 恵介、ぷぅ、めがってぃ、Yacolog(敬称略)。
今回はスタッフ・インタビューがない代わりに、資料性のあるページが用意してあるとのこと。8月16日、東京ビッグサイト・コミックマーケット76の3日目、西館「西地区/ほ‐24a」にて、販売。サークル名は【時祭組】。

周囲の人に勘違いされるのですが、僕が個人でつくっている同人誌は、また別です。
そっちを少しずつ作っていても感じるんですが、やっぱり、他人と話した方がいいですね。未完成のテキストでも、とりあえず読んでもらうと、すごく大きなヒントをもらえます。


『化物語』、第3話。これは一体、何が起きているのだろう。
前話まで、蟹にとりつかれていたヒロインが、主人公の横に座る。「蟹」という漢字がインサートされ、右上の「刀」だけが消える。主人公は、ヒロインの胸を見る。「刀」という部分を失った「蟹」の字は「触」に変化している――まるで、エイゼンシュテイン。
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古い/新しいで言うと、『化物語』は、意外に古典的な演出をやっているような気がしてきた。カットを重ねて意味を持たせる、という基本に立ち返っている。先にあげた漢字の分解など、主人公の心理を効率的に伝えるため、「仕方なく」やっているんじゃないだろうか。だから、やけにビビッドというか、鮮烈に伝わってくる。
ヒロインの胸元を見て、ポッと主人公が赤くなって「さ、触りたい」なんてモノローグ言わせても、そんなもんは演出じゃない、と『化物語』は言っているように思う。そんな演出は、マンガからの借り物だ。

ブレッソンが、演劇が映画に侵入したことを嫌ったように、尾石達也は、マンガの技法がアニメ演出に根を下ろしている現状を、けっこう警戒しているんじゃないだろうか。『化物語』の原作は、絵に頼ったライトノベルではないので、陳腐化した演出法をリセットするのに、格好の題材だろう。


時間がないので、短い映画を見たいと思い、オムニバス『TOKYO!』を借りてきた。
ミシェル・ゴンドリー、レオス・カラックス、ポン・ジュノという豪華な監督陣。カラックス、まだ映画を撮ってたのか。『ポンヌフの恋人』を楽しみに待っていた頃が懐かしい。やっぱり、この人はジュリエット・ビノシュがいないと、ダメだねえ。作家って、そういうもんだと思う。

ミシェル・ゴンドリーの作品は、相変わらず、軟弱な恋愛ヘッポコ映画で、藤谷文子も加Tokyomain2_jpg_rgb瀬亮もグダグダしっぱなしで、可愛くてしょうがない。加瀬亮のグダグダ度は、他の映画に比べてもダントツ。藤谷文子、いい顔になったよなあ。後半でばっさり脱いでますけど、なかなか良いおハダカしてらっしゃる。
ポン・ジュノは、『ほえる犬は嚙まない』『殺人の追憶』『グエムル』、すべて面白かったが、今回は、蒼井優という素材を手に入れた割には、ちょっとなー。やっぱり、この人の映画には、ペ・ドゥナが出てないとアカン……と、勝手な法則を立ててみる。

ゴンドリーは今回、藤谷文子にベタ惚れだったそうで、監督と女優って、そうじゃなきゃいかんよな。だって、ジュリエット・ビノシュと恋愛関係だった頃のカラックスの映画は、生き生きしてたものな。


TSUTAYAが百本の作品を百円でレンタル、というキャンペーンをやっている。Tポイント欲しさに、ある作品のレビュー書いちゃいました。もし見つけても、見なかったフリをしてください。


本日のティンカー・ベル。
090616_14470001アパレルとか、寝具とかに手を出したら、もう泥沼だと思うんだけど、これはポーズと表情がいいので、つい、うっかり買ってしまったTシャツ。
Tシャツも、いいヤツはメチャクチャいいんだよね。

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2009年7月17日 (金)

■「俺が誰であれ、俺の望む男は、それだ」■

ガンダムの常識 モビルスーツ大全 Z&ZZ&逆シャア編 本日発売
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このワンコイン本も、早くも5冊目です。僕は主に『ZZ』を担当。

『ZZ』は、アイデアが固まりきる前に、見切り発車しちゃった感がいいのです。あと、照れもなく、貪欲にOVAの要素を取り入れてた部分も(プルツーがクィン・マンサに乗る絵づらなんて、『イクサー1』そっくりだもんね)。
妹萌えの元祖みたいなこともやってるし、ハマーン様がコスプレみたいな衣装になったり、ビキニ姿になったり……その厚顔さを、僕は愛する。
グレミーの反乱後の展開とか、素直にカッコいい部分もあるんだけど、たまにポッと出てくる「こうすれば、受けるかも」的な恥ずかしさがね。キュートで、たまらんですよ。
やっぱり、「恥」は「愛」に通じるね。


『バトルスター・ギャラクティカ』シーズン3、最終回。『イデオン 発動篇』に匹敵する、混沌と狂気。いやー、狂ってるね。こういうラストになることは、ネットの情報で、漠然と知ってはいたんだけど、まるで深淵の渕に立たされたような、異様な宙吊り感で「つづく」となった。
僕のもっとも好きなタイ大佐の「俺はソウル・タイ。コロニアル艦隊の将校だ。俺が誰であれ、俺の望む男は、それだ。今日死ぬとしても、その男として死にたい」に、しびれた(なんか、ちょっと訳が変だけど、見た人は分かるよね)。
深く内面に沈み、後悔と自責に貫かれた、重苦しいシーズン3。この『ギャラクティカ』というドラマと人生をともに出来て、心から幸せに思う。
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そして、前々から「何らかの形で公開します」と知らされていたスピンオフ作品『RAZOR』は、9/5放映決定……だが、宣伝会社さんから送られてきた二つ折りカラーチラシ(写真)によると、「イベント上映会開催決定!」 やっぱり大スクリーンで見たいよね!


『ギャラクティカ』関連で。
主演のエドワード・ジェームス・オルモスが『ブレードランナー』で、胡散臭い刑事役をやっていたのは、上記チラシにも書かれている。
「彼は『ブレードランナー』の頃に比べて、いい歳のとり方をしたよね」と、仲のいい編集が言うのです。「いろんな苦労をすると、いい顔になるもんだね」と。その言葉を聞いてから、いっぱい苦労しようと思った。
ツライな、理不尽だな、恥かいたな~と思っても、「でも、これでイイ顔になれるもんね」と頑張ることにした。それは、女にモテるため(だけ)じゃないよ。自分の顔に納得して、死にたいからだよ。


本日のティンカー・ベル。
090716_11170001ドールは、顔が似てない商品が多いんだけど、このハスブロ社製「スクリーンファッションドール」は、そこそこではなかろうか。
ただ、惜しいことに『ピーターパン2』からの製品化なんだよね。急にパチモノっぽく見えてきちゃう。
まあ、出来がいいから、気にしちゃダメか……。

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2009年7月14日 (火)

■40代からのモビルスーツ入門■

EX大衆 8月号 15日発売予定
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●小倉優子 グラビアポエム執筆
「裏テーマ」のないポエムは、難しいです。
小倉優子なので、もう『クレープのマミ』で行くか、と思って、原宿、アイドル、クレープでまとめました。「コクのある甘さで40年が経ち、通ごのみのサッパリ感で50年、シナモンがふわりと香って64年。昭和が終わった。」――こんな感じ。


例の1/1、やっと見て来た。「でかいガンプラ」と言ってる人もいたけど、それも分からないでもない。
なんでかって言うと、初期ガンプラと悪戦苦闘していた人と、最近のキットをパチ組みしている人とでは、評価が違う気がするから。僕は、1/100のオモチャ・キットにハンブロールで色を塗って、航空機のデカールを貼っていた中学生だった。
090713_13170001_2企画・事業としては素晴らしいんだけど、俺らのモビルスーツ幻想は、そう簡単には、消えてくれない。
(←俺的ベストアングル。これぞ巨大ロボ)

ようは、初期のガンプラをいじっていた人は、「こう塗れば、もう本物だろう」とか「こういうディテール入れれば、文句は出まい」って、自分の中のモビルスーツ幻想を、納得させようとする意志を持っていた。つまり、理想があったのよ。
富野監督がグレメカDX5で言ってた「とりあえず、ザク5機!」 あれが本音なんだよね。モデラーとしては。

今回は、不特定多数に「ガンダムだ」「本物みたいだ」と思わせる試みだったから、意図は成功したと思う。しかし、それ以上に、俺らの中に植えつけられた巨大ロボ幻想に、カタをつけてくれなかったことに、むしろ感謝した。
Gunhed_2巨大ロボ幻想といえば、『ガンヘッド』の1/1もそうだったね。
「やっぱり、巨大ロボってのはウソなんだよ」って、死ぬまで、そう思っていたい。だから、模型をつくるのが楽しい。模型というのは、「実現不能」をカタチにしたものだから。美少女フィギュアも、「不在」をカタチにしたものでしょ。何度も何度も挫折するから、ずっと作っていられるの。

「ないもの」を「あるかのように幻視する」のが模型なら、今回の1/1も最大公約数的な大衆模型。だから、「でかいガンプラ」と言われるのも、間違ってはいないし、もっともっと模型を作りたくなったよ。アンサーではなく、メルクマールだったことが嬉しかったな。


先日告知した『メガゾーン23』同人誌とは別に、廣田の個人誌(というか、商業誌で出来ない本)も、ゆるゆる進んでます。
090712_20370001(←これ、いいでしょう? でも、もっといい絵が来たからね)
普段、俺、仕事では萌えとかやってないと思うんだけど(たまにメガミマガジンに書いてますけど)、この本では、たぶん「オタクのセクシュアリティ」みたいなものがテーマになります。ちょっとしか、刷らないけど。

で、例のパンプラ(パンツのモールドしてあるプラモ)も、新たに資料を集めているところです。写真も、すべて撮り下ろしになります。カラー印刷だとお金もかかるだろうし、しばらくキャバクラ自粛……マジで、そうしないとな。


本日のティンカー・ベル。
090616_15500001セガのプライズで、「HGフイギュア Ver.2」。未開封。やっぱり、日本人の造形だね。ちなみに、箱の4面にティンクの絵が刷ってあるんだが、これがどれも可愛い。パッケージで買ったようなもんだね。

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2009年7月12日 (日)

■時祭組、再起■

夏コミで、【時祭組】による『メガゾーン23』トリュビュート・マガジン『フェスティバル・タイムズ』のVol.1が発売されます(前号は、実はVol.0だったのです)。
12377今回、なんと表紙は、きみづか葵さん。背景は撮り下ろし、画像加工です。
内容は、ガーランドのイラストで有名なR-AREAによる漫画『メガゾーン23 R-Vision』が目玉です。今回のエピソードは『シークレット・ゲーム』といって、ちゃんと『メガゾーン』の時間軸に沿った話となっています。
他には、ロフトのイベントにも来てくれたエイドリアンさん、いつも見てますYacologさんも参加。前号にも参加したナンディ小菅さんは、『メガゾーン』オリジナルTシャツを使った企画をやっていたり、かなりカオスな本になってます。
僕は、短編小説『前奏曲~プレリュード~』を書きました。いま流行のプリクエル物で、どっちかというと、いつも書いてるグラビア・ポエムの延長みたいなもんですね。
8月16日(日)、「西地区“ほ”ブロック-24a」、サークル名【時祭組】にて、販売します。


『化物語』第2話。言語をもって、言語を絶す。こりゃ、松竹ヌーベル・ヴァーグだな。いや、横尾忠則、つげ義春……視覚の記憶みたいなものが、無理やり引きずり出されてくる感I02_01じ。新しい表現は、ほぼ間違いなく暴力的だ。
荒俣宏が、図像学の番組で、ぴたりと止まった図鑑の絵をしきりと「優れた映像」と言っていたのを思い出す。映像をもって映像を越えようとしているように、『化物語』は見える。

そこまで突っ込んでいるかどうかは別にして、7/31発売予定の「アニメージュオリジナル」 Vol.4では、シリーズディレクターの尾石達也さんに1万文字インタビューを行ないました。必読!


神田の丸石ビルへ、『北島敬三写真展 ヘンリー・ダーガーの部屋』を観に行く。
090710_13220001何だか、林海象の映画に出てきそうな、レトロなビル。
写真展は、個人事務所を使ったものなので、小規模だったが、解説書が充実していた。

ダーガーの奇想の舞台となったこの部屋は、00年に取り壊されたのだという。祭壇、画材、タイプライター、雑誌の切り抜き。10年後の僕の部屋は、たぶん、こうなる。唯一の違い、それは彼が謙虚で、心の澄んだ創造者であるということだ。僕は、そうは、なれそうもない。


本日のティンカー・ベル。
090709_10320001ジム・ショア氏の作による公式フイギュア。羽を入れて12センチぐらいだけど、顔の造形センスが抜群。特に、眼球の立体感。
こういう写実的な「絵の解釈」を見せられると、日本のフィギュアは、良くも悪くも「線」を手がかりに立体化し、「線」が見えなくなる事を怖れているんだな、と思う。

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2009年7月 9日 (木)

■餃子の羽■

月刊アニメージュ 8月号 明日発売
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●『東のエデン』 神山健治×羽海野チカ 対談
この仕事の依頼を受けたとき、「もう、死んでもいい」って、電話口で口走ってました。
だって、あの羽海野チカ先生とお会いできるなんて……「一生、会えない人リスト」に入っていた方ですから。しかも、すごく学べたんですよ。短時間に、人間の見方とか、人生の楽しみ方みたいなものを。実践的に。
だから、このページはぜひ見て欲しいですね。絶対、勉強になりますから。


先日まで、ちょこちょこやっていた「人類は、いかにしてプラモの金型にパンツを~」ってやつ。あれ、今ごろになって反響というか、「こんなの、知ってますか?」って、ガレージキットを見せられたりして、いかに中途半端なことをやっていたか、思い知らされた。
さらに「あれ、増補して同人誌にしたら?」みたいな話を、少なくとも二系統から提案されて、やることにしました。
ただ、あのパンツ話だけでは何なので、商業誌では出来ないようなネタを集めた本になります。
090708_21570001(←昨日、デザイナーと打ち合わせたら、もうキャラが出来てきた。『プラモのモ子ちゃん』のパロディで、この髪型、この服ってことは……)
餃子を焼いていて、「羽」が出来るお店があるでしょう。あの羽みたいな本になるんじゃない? 僕の本業は、あくまで餃子を焼いて売ることなんだけど、このブログを見ている人は「羽」を期待しているような気がしてね。


「形式としてはアニメなんだけど、カッコよく見せてね、驚かせてね」ってオーダーに答えてくれた人が、尾石達也さんだった。最初に見たのは、『ネギま!?』のオープニングと第5話か。その尾石さんがシリーズディレクターを務めるんだから、『化物語』は、もう見る前から傑作確定だよね。「どう失敗しても、傑作」というのはある。北野武の遺作とか、まだ企画も立てられ090708_23450001てないだろうけど、傑作に決まってる。もう、見る前から分かる。
(←ちょっと、この感覚に似てる。宮崎駿演出というだけで、見る前から盛り上がっている庵野秀明……『アオイホノオ』第二巻より)
天井桟敷の芝居を観に行くようなもんで、席についた瞬間、もう何か充実している。「目の中に文字が刻んである」とか、そのワンカットで「完璧! おそるべき完璧な尾石演出、100点!」と。『アオイホノオ』からの引用ばっかで悪いけど、僕はそういう目線で『化物語』を楽しんでます。


本日のティンカー・ベル。
090616_10230001ラバー製のユーティリティ・マット。ガレージとかキッチンとか、汚れるところに敷け、って書いてあるんだけど、敷くわけないじゃない。
でも、黒目までゴムで抜いてあって、すごくいい出来だよ。

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2009年7月 6日 (月)

■大人のジブリ■

早めに取材したほうがいいな、と思い、日曜昼間、男一人でジブリ美術館(三鷹市民は、思い立ったその日に、当日分のチケットを買えるのです。予約不要)。
090705_12110001周囲の目も気にせず、レイアウトや動画(原画はあんまりなかった)にかぶりついて一時間半ほど。常設展はスルーして、スパッと帰宅。
やっぱり、女性と行くと、相手のペース気にしちゃうでしょ。「屋上のロボット兵も見たいだろーなー」と思って連れて行くと「あっ、巨神兵!」なんて言われちゃう。あれは、どうフォローすればいいの?
あと、ポニョ展を見ているうち、ちょっと涙ぐんじゃったんだけど、そういうのもキモがられずにすむし、男は一人で、週末ジブリ。スコッチ片手に、ポニョ鑑賞。
……さ、記事、書かなきゃ。


夏アニメが、いろいろ始まった。やはり、『化物語』は別格だね。ようするに、俺は「驚きたい」から、映像を見るわけで、「面白いアニメを見たい」のとは、ちょっと違う。
出来れば、それを見てしまったがゆえに、取り返しのつかない事態になることを期待して見る。『化物語』はねえ――例の、スタイリッシュな演出パートについては、取材で、お話を聞いてきたんですよ。むしろ、俺がゾワッと来たのは、こう、女性キャラの妖しげな表情に、作画でぐーっと寄るでしょ。ズームじゃなくて、作画で寄る。あのねっとりしたエロティシズムは、実写には出来ないですよ。
こういう作品こそ、本能で見ないと。「冒頭のパンツの意味が分からない」なんてのは、ゴダールの映画に、セリフの意味を求めるようなもんだよ。

あと、『うみものがたり』見てるよ。見逃しませんよ、俺は。
P_tyogyogun_0617_2マリンちゃんが、魚群に包まれて変身するのは良いアイデアだけど、本物の魚群予告(写真参照)のほうが迫力あるだろう、断然。
それをあんな、灰色のサンマみたいのをチョロッと出しといて「魚群だ」って説明したって、ぜんぜんアツくないよ。「客を期待させる」という役割は同じなんだから、本物の魚群予告に勝つつもりで、お願いしますよ。
アニメ『うみものがたり』のライバルは、ただひとつ、パチンコの『海物語』なんだよ。今週も必ず見るから、がんばってください。


サークル【時祭組】の『メガゾーン23』同人誌『フェスティバルタイムズ Vol.0』が、いよいよ海外通販開始。なんだか、意図するともなしに海外を向いちゃってるという。国内の同人誌ショップには、委託しないようです。


本日のティンカー・ベル。
090704_14490001瀬戸ノベルティと呼ばれる陶器。羽が折れそうで、とっても怖いんだが、横顔がすごく似ているし、好きなポーズなので、箱にしまっとくのは勿体ないんだよねえ。

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2009年7月 4日 (土)

■キャラ化の果てに/シリーズ「人類は、いかにしてプラモデルの金型にパンツを彫りこんできたか」最終夜■

『ポニョ』DVDが家に届いた頃、ちょうどジブリで取材でした。
090703_18560001何だか、ジブリ美術館のポニョ展も、取材に行かなきゃならない雰囲気。
あそこには、さすがにオッサン一人で行ったことはないので、広報のお姉さんに案内してもらおう、とも思ったのですが、一人のほうが気楽なので、一人で行ってきます。


さて、全国で4人ほどの読者に期待されている、「いかにして~パンツ」シリーズも、今夜で終了です。
こうして80年代を、「美少女フィギュア」という視点から振り返ると、どうしてもバンダイの暴走・迷走ぶりに話が終始してしまう。前回の「アーマード・レディ」で、大手メーカーが、いかに安易にアマチュアリズムと結託し得るかを、ご理解いただけたのではないかと思う。

さて、090703_07460001バンダイ発行の定期刊行物「B-CLUB」は、バンダイ関連の各アニメ・特撮作品および、そのプラモデルやガレージキット、個人作品を縦横に掲載していて、バンダイの中に、さらに「B-CLUBカルチャー」とも言うべき、独自の文化圏を形成していた。
この14号は、87年公開の『スケバン刑事』映画版の最新情報が載っているが、同時に、主演の南野陽子、相楽ハル子らを模型化して掲載する……という、ちょっと一言ではコンセプトが説明しづらいというか、ようするに、やりたい放題の雑誌であった。
何しろ、「完成させた南野陽子のフイギュアを、モデラー自身が、撮影現場に持って行って、女優に見せる」というストーカー的企画を、白昼堂々と行なっていたぐらいだ。

090703_07320001もちろん、B-CLUBブランドでガレージキットも展開。
写真は、『スケバン刑事Ⅲ』の浅香唯である。余談だが、あの海洋堂も、当時は『さびしんぼう』の富田靖子をキット化していた。無許諾で『時をかける少女』の原田知世も発売していた。この「実在芸能人リアル再現系」フイギュアは、アニメ美少女とは別の系譜へと、枝分かれしていく。
090703_07330001気になる人のために見せておくと、B-CLUBの1/12スケール・浅香唯のスカートは「埋め式」である。
「ラムちゃんは、スカートが別パーツだったのに、何で?」と首を傾げられるかも知れないが、これはコストの問題。その一方、「パンツまで彫ったら、その芸能人を汚すことになる」「芸能人に失礼だ」という心理が、「リアル再現系フィギュア」には、込められていたような気がする。つまり、「アニメと現実の区別」が、歴然とあったのだ。

ところが、B-CLUBカルチャーによって、その境界線は崩壊する。
「B-CLUB」を中心に活躍していたモデラーの石井和夫氏は、フィギュアというより、手足の関節が動くドールを自作することで知られていた。それ以上に石井氏は、「南野陽子を作ったとしても、アニメ顔にアレンジする」作風で人気を博していた。「リアル芸能人のフィギュアは、ちょっとキモい」というファンも、石井氏のフィギュアには納得していたはずだ。
090703_07380001ただ、それは飽くまでも、石井和夫という個人の作品だったの。何しろ、手足の動くドールは、量産するとパーツも多くなってしまうし……。

だけど、バンダイは玩具メーカーだから、プラキャストに頼らずとも、「人形」として量産するノウハウがあったんだ。だから、アイドル・ブーム、『スケバン刑事』人気、石井和夫という原型師……いろんな条件が、パッと揃うの。天の配剤か、悪魔の姦計のように。
この「バンダイ ラブリー・ギャルズ・コレクション」シリーズには、他に『ダーティ・ペア』や『魔法の天使 クリィミーマミ』がラインナップされていた。ようするに、他のキャラはアニメばかりだった。これまで見てきたように、ファンはアニメ・キャラだったら、ヤスリで削って水着姿にするんですよ。アニメ・キャラに対しては、容赦しないの。
そのアニメ・キャラのシリーズに、実在の芸能人がラインナップされちゃった。しかも、アニメ顔にアレンジされて。俺は、バンダイから最悪のメッセージを受信したね。「君たち、これは南野陽子じゃないから。麻宮サキっていう、"キャラ"だから、好きにしていいよ」と。

だから、こういう仕様になるんです。
090703_07410001左の写真は、パッケージ横より。モノクロで分かりづらいけど、布製のパンツを一枚、着用しているだけ。もう、パンツはモールドではすませない。布製だから、着脱自由。さすがに胸の先端には何もないよね?と思いきや、色さえ塗ってないけど、突起がある……今回、撮影のために開封してみて、そっちの方がショックだった。嬉しくないよ。傷ついたよ。
「対象年齢:10~ADULT」と書いてあるけど、アダルトすぎるだろう、玩具店に置くには。

ようは、道徳心や公共心によってセーブされていたアイドルに対する欲望が、石井和夫氏のアニメ風アレンジとバンダイの量産技術によって、開放されてしまった090703_07420001んだ。布製の服は、脱がせること前提の仕様でしょう。
小さい頃から、リカちゃん人形で遊んでいた女性からすれば、「布製パンツぐらい、当たり前じゃない?」と思うかも知れない。
でもね、俺たち男は、いくつになっても童貞的情動を持ち続けているんだよ。だから、傷つく。ラムちゃんのキットが発売される前、カミソリを送ろうとした童貞テロリストたちの気持ちが、俺には、今、ようやく分かった。

せめて、アイドルには神秘でいて欲しい。俺たちが童貞だった頃、宇宙の真理は、アイドルたちが有していた。男子というのは、脳と股間の直結した単純な生き物なんだ。股間を蹴られた瞬間、脳が破裂するぐらい、か弱いんだよ。
だから、アニメ・キャラを水着姿に改造することに、背徳を感じる。プラモデルに彫刻されたパンツに、怒りと恥ずかしさを覚える――それはね、俺たちの体の中には、宇宙の真理なんて、そんな崇高なものは流れていないという証拠なんだ。
俺たちは、自分の肉体が薄汚く、無価値である事を、ずっと前から、知っている。

いま、ネットを見ていても、ため息が出るほど美麗かつ、エロいフイギュアが並んでいるでしょう。あれは仏像を彫るのと同じで、女性の中に、俺たちケダモノが知らない真理があると信じ、それを顕現させようと努力するから、ああまで美しいわけ。そして、煩悩があるから、パンツまで彫るわけ。
脳と股間でフィギュアを見るとき、俺は信仰に近い情欲を覚える。あるいは、情欲とは、信仰そのものなのかも知れない。性なるものの向こうに、聖なるものがあると、少なくとも俺は信じている。

語りきれなかったことは多いし、連載用に買った商品もまだ残っているけど、ひとまず、この話は、ここでやめておく。

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2009年7月 2日 (木)

■同人感覚/シリーズ「人類は、いかにしてプラモデルの金型にパンツを彫りこんできたか」第6夜■

ここのところ、取材ラッシュで、尊敬していた方に「ブログ、見てますよ」と言われて、愕然としたりする。こんな、パンツがどうだとか、欲望がどうしたとか……こんなブログ、見ないでくださいよ。もうちょっと、頭よさげなこと書きたいですよ、俺だって。
しかし、誰も記さないことは、どこかのバカが記録しておかねばならないのです。シリーズ、続行します。

さて、前回はガレージキットの複製技術によって、落書きレベルのフィギュアまで「商品」として出回りはじめたことを書いた。
090701_13120001ちょうど年号が入っているから引用すると、左のようなイラストが、模型雑誌「ホビージャパン」に寄せられるようになったのも、この頃。少なくとも、82年ごろには、「ロボットの外装を、どこの誰でもない女の子が着用する」イラストが、一ジャンルとして定着していた。

この「ロボ鎧モノ」のルーツは、ガンプラの一種として発売された「MSV」に封入されていたデカール「グフ・レディ」とされている。
グラマーな女の人が、モビルスーツの装甲を鎧のように着ている。これが人気を呼び、ガレージキットとして立体化された。「ホビージャパン」1983年10月号の「ムラタ模型」の広告を見ると、9,800円で売られている。(C)が無いから、無許諾商品だった模様090701_13280001 (ガレージキット創成期は、無許諾商品なんてザラにあった)。しかも、商品名が書いてない。「グフ・レディ」なんて書いたら、確実に版元から怒られるから。

でもね、こういうのは無許諾で、個人商店が勝手に売ってたりするから、面白いわけね。オフィッシャルになってしまうと、ガレージキット特有の「遊び心」が、そがれてしまう。
ところが、ユーザーの意識を汲み取りすぎるメーカー、バンダイは、ちゃんと版権とって、プラモデルにしてしまったんだよね……「ロボ鎧モノ」を。
090628_09160001090628_09150001それが、この「アーマード・レディ」シリーズ。ガレージキットではなく、インジェクション成形です。
左が「ガンダムMk-Ⅱレディ」、右が「マクロス バルキリーレディ」。ガンダムMk-Ⅱは『Zガンダム』のメカだから、85年以降の製品だ。巷のガレージキットのクオリティも、かなり向上していた時期。

なので、「ガレージキット感覚の新しいプラスティックモデルキットです」と、苦しい言い訳がしてある。ようは、手足の間接がバラバラなので、好きなポーズに組めますよ、と言いたいらしい。
090628_09170001090628_09200001そんなこと言っても、中身がこれじゃあ……。別パーツになっているフトモモなんて、明太子みたいな形。
そんな明太子のくせして、やたら説教くさい説明書なんだよね。「まずは単純ではあるが決まるポーズを鏡の中の自分、もしくは写真の中、アニメのひとコマ等から見つけ出すことが大事。フィギュアモデル造りは奥が深いのですぞ!」って、この底の浅いキットに、そんなことだけは絶対、言われたくないよ。なんか、腹立ってきた。

「1/12 ハイ・スクール ラムちゃん」で、パンツに飾りをモールドしたバンダイは、確実に当090628_09190001時のガレージキット・シーンに衝撃を与えた。スカート別パーツなんて、インジェクション成形でないと、出来ない(当時の技術では)。そのバンダイが、今度はガレージ・キット・ブームに便乗している。「形から入っている」「形だけ真似ている」の典型例でしょう? 
もしチャンスがあったら、ガレージキットの実物を見てごらんなさい。写真ではなく、パーツ状態のものを手で触ったほうがいい。ものすごく、形に対して貪欲なんですよ。自分のリビドーを、全解放している。そこには「恥」がある。「恥」が感じられないものは、すべてニセモノです。
そして、バンダイの、パンツ履いたラムちゃんには「恥」があったんだ。高価なベリリウム銅の金型に、職人の「恥」を刻印した。素晴らしいよね。

だけど、今回紹介したキットは「恥知らず」ってやつですよ。
どれだけ、自分の恥をさらせるか。人間の価値も、プラモデルの価値も、それで決まるような気がする。
最近の、緻密なガンプラを組んでいると、「たかがガンプラに、こんなに本気になっちゃって、まあ」と苦笑してしまう瞬間がある。そういう時、バンダイへの愛おしさを感じますけどね。「ガンプラの、ここが恥ずかしい」というノロケ話も、いずれしてみたい。


あまりに友達が熱心に勧めるので、早起きして『スター・トレック』鑑賞。現バウスシアター、旧ジャブ50にて。
090629_10320001最後にジャブ50で観たのは、イタリアン・レアリズモ特集の『無防備都市』だった。20年近く昔のことだ。
今まで、どの映画やテレビを観ても、なかなかノレなかった『スタ・トレ』。今回は、OVA版の『宇宙の戦士』同様、未来なんだけど、風俗は50'sという素敵な世界。農地の真ん中に、いきなり宇宙船の造船所がある「絵」には、ガツンとやられた。

SF設定的には、難解すぎる部分があったけど、キャラクターたちは若々しく、愚かなまでに前向き、すがすがしい。その後、夜中近くまで取材だったけど、元気でいられた。

邦画も、『プラネテス』ぐらい実写化しようよ……宇宙工学を前提にした、ちゃんとしたやつね。


この一ヶ月で、部屋がこんなになってきた。
090701_02570001ティンカー・ベルのコレクターは多いので、僕は、このジャンルではB級でかまわないんだ。

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