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2009年6月27日 (土)

■OVAの時代/シリーズ「人類は、いかにしてプラモデルの金型にパンツを彫りこんできたか」第4夜■

今日から忙しくなるので、さらっとインジェクション・キットを紹介しておきます。
前回紹介した、ニットー(日東科学)の『タッチ』。実はアニメ放映は、キット発売の翌年、1985年。だから、アニメではなく漫画のキャラクターを商品化したわけ(パッケージも、あだち充のイラストを転用)。同じ年に、やはりアニメ化されていない漫画『やるっきゃ騎士』なんかも発売していたぐらいだから、どこかバンダイとは、別の方向を向いていたのだと思う。090626_07370001
090625_09200001_2そんなニットーが、唯一、アニメ作品のキットを発売した。それが、この『幻夢戦記レダ』。テレビアニメではなく、OVAだ。1985年発売で、キットもそのタイミングに合わせたはず。
85年ともなれば、OVAも「半裸のお姉ちゃんで売っていこう」という商業性が明確になってきたからね。そういうキットを出したいメーカーにとっては、いいネタだよね。

その「ビデオ」という媒体との一体感を示すのが、キットの内箱。まずは見て欲しいんだけど、なぜかVHSカセットを模したもの。大きさも、本物のVHSとま090625_09210001ったく同じ。……ちょっと、意味わかんないよね。
OVAからのキット化は前例がないから、気負ったんだろうけどね。ビデオデッキの普及した頃だし、VHSカセットのデザイン自体が、何か新しいメディアの象徴のように捉えられていたのかも知れない。でも、だからって、プラモデルのパッケージに使うことないだろ……。

090626_08480001090625_09240001_2さて、キット内容は、1/12の「17歳 朝霧陽子」と1/20の「エアバイク ステード」のセット。
「エアバイク」という肩書きは分かるとして、「17歳」って何だよ。とにかく、80年代は万事がそうなんですよ。歌謡番組では、松本伊代が「伊代はまだ16だから」と歌っていたし、女子大生ブームから女子高生ブームへの変遷期だったことが、17とか16とかの数字から、伝わってくるよね。
せっかくの半裸のお姉ちゃんのプラモデルなのに、ポーズも直立不動だし、足なんか棒みたい。ビキニ型鎧の宝石部分を、クリアパーツで再現してるけど、それはセクシーとかエッチとかとは関係ないし。
他メーカーでは、今井科学が「1/12 リン・ミンメイ」なんかを発売していたけど、中空のモナカ構造のやっつけキットで、特筆すべきところはない。発売は83年か84年のはず。
インジェクション成形の美少女フィギュア・キットでは、とにかく、バンダイほどツボを心得たメーカーは、皆無といって良かった。

さて、オマケとして、1997年にバンダイがリミテッド・モデル・ブランドで発売した『ファイナル090626_09270001 090626_09260001ファンタジーⅦ』の「エアリスゲインズブール」を紹介しておく。
さすが、バンダイ。15年経過しても、パンツ健在。
ただ、完成品フイギュアでも、パンツ成形が当たり前となっていた時代のキットなので、なんか気迫が感じられないよね。
こうして見ると、プラモデルってメーカー発信の「表現物」なんだと実感する。表現である以上、受け手を傷つけても構わないと、僕は思う。
バンダイのパンツ成形に、パンツ用デカール……すごく、嫌だった。でも、嫌悪感を持たれるってことは、ユーザーのセクシュアリティに触れているわけで、たかがプラモデルに、俺たちは心の恥部を見透かされた気がしたんだ。
80年代、一番、プラモデルにして欲しくないものを、バンダイはプラモデルにした。「表現物」として、エキサイティングだった。(バンダイのキットには、あと一度は登場してもらう予定)


友人と、『ターミネーター4』を鑑賞。
090624_19170001こりゃ、『ターミネーター』シリーズ(第三作は除く)へのラブレターだね。とにかく、シリーズを深く理解しようという愛情だけは感じた。一本の映画としては未完成だけど、ラブレター度で巻き返した。
シリーズの時間軸としては未来へ行っているけど、プリクエル(前日譚)だね。

プリクエルが流行っている、最近のハリウッド映画界。もともと、80年代SFX映画のプリクエルを始めたのは、『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』じゃないか? だとしたら、ルーカスは、またしても映画の流れを変えたんだと思う。そういうとこだけは、ほんと慧眼だと思う。
しかし、一度終了した物語の過去を描くだけではなく、「そこから先」を開拓しようという気概が、やはりエンターテイメントには必要なのではないだろうか。


メモ。北島敬三写真展「ヘンリー・ダーガーの部屋」、7月3日から24日まで開催。というか、あの部屋が、まだ残されていたとは! 訪ねたかったよ!
最近、気に入っている方の作品ブログ「 not, うさぎ 吸引 」。ダーガーっぽい。でも、けっこう社交的な人みたいなので、もっと病んでて欲しいなあ、と勝手な希望。

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コメント

まずは、シリーズ続行が非常にうれしい限りです。

72年生まれの自分は、80年代初期~80年代中期のいわゆるマニア向けコンテンツの勃興期が小学生~中学生の時期にあたります。
なので、冷静な俯瞰視が難しいのですが、視聴者を子供扱いしないアニメーション群の作品性(笑)に期待を抱きつつ、OVAに代表される「オタク的偏食が肯定された閉じたパラダイス」とでも言うべき作品の登場に不安と嫌悪感を抱きだした時代…でした。
(無論、当時はそこまで言葉にする事など出来ず、「なんかイヤだな」と思うだけでしたが)

「メガ80's」の「駄ニメ」等でもそのような気分を強く思い出したりしていたのですが、今回の立体物からのアプローチは、オタク史的に非常に面白いなと思いました。

「レダ」が出たところで、「甲冑美少女・戦闘美少女」の変遷も考えてしまうのですが、ちょっと広がり過ぎかもしれませんね(笑)。

投稿: べっちん | 2009年6月28日 (日) 10時28分

■べっちん様
ああ、メガ80'sの頃から、ご覧になってくれてたんですか。「ダニメ・ライブラリー」は、本にしたいって出版社がありまして……もう言っちゃっていいと思いますが、キネマ旬報さん。10年近く前ですから、今さら出す気も失せました。まあ、あちこちで没をくらう人生です。

>「オタク的偏食が肯定された閉じたパラダイス」

僕は高校生でしたけど、やっぱり猛烈に嫌悪してましたよ。今の同人誌なんかより、もっとディープというか、個人の業が噴出した、瘴気むんむんのパラダイスって感じで(笑)。
いまは40歳を過ぎたから、何とか直視できているのでしょう。なぜ「嫌だ」と感じるのかを、冷静に考えるべきなんですよ。

>「甲冑美少女・戦闘美少女」の変遷

えー、次の次あたりの更新で、ちょこっと取り上げます。これをスルーしたら、僕はウソをつくことになりますから。

投稿: 廣田恵介 | 2009年6月28日 (日) 11時34分

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