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2009年6月20日 (土)

■人類は、いかにしてプラモデルの金型にパンツを彫りこんできたか■

よろず、趣味と煩悩は、表裏一体でありまして……。
時は1980年代初頭、ガンプラ・ブームに沸いていた頃。
もう、調子にのってアレもコレも商品化していた、81年に発売されたのが「キャラコレ」。ガンダムのキャラクターを1/20でプラモデル化。アムロとかシャアとかね。その時、一部モデラーたちの間で、「軍服姿のセイラさんをヤスリで削って、水着姿にする改造」が流行ったんだけど、いわば、それがパンドラの箱だった。「それだけは、やっちゃいけないんじゃない?」という背徳的な気分は、ウエダハジメ氏が漫画にしたぐらい強烈だった。090618_16230001090618_16240001
さて、キャラコレ第三弾として発売されたイセリナを見て、「?」となった。ララァは、こういうスカートだから(写真参照)、別パーツ化するのは分かるよ。やむなく、脚の付け根までモールドせざるを得ないでしょう。でも、イセリナはパーティ・ドレスで、足なんか見えない。なのに、スカートが別パーツで、下着らしきラインが彫刻してある……。
俺は、バンダイからのメッセージを受信したね。「君たち、もうスカートを削らなくても、水着のキャラを作れますよ。ちゃんとスカートと両足を別パーツにして、パンツもモールドしときましたから」って。「ヤスリで削ってまで水着のフィギュアが欲しい」、そういう時代の欲望が、メーカーを動かしたのよ。

こうして、「完成すると見えなくなるはずのパンツ」が、世界で初めてプラモデルの金型に彫りこまれたのであった。パンチラの模型的再生である。
さて、問題は、70年代ミリタリーブームの牽引役だった田宮模型。ガンプラ・ブームの陰で、情景模型用に「動物セット」とか「ドイツ歩兵 休息セット」とか、“ソフトな”ミリタリーモデルを出しはじめていた頃だ。ようするに、反戦ムードな牧歌的なキットを出しても不思議じゃない空気が、プラモデル業界全体に流れていたのよ。田宮は、バンダイの「キャラコレ」以前に、「1/25 パットン将軍」なんていう“キャラクター・モデル”も出してたくらいだからね。

だから当然といえば当然なんだけど、あの硬派な、スケールモデル・メーカーの田宮模型までもが、「スカートは別パーツ」という、時代のニーズに勝てなかったんだよ。
090618_16190001それが、83年発売の「1/24 キャンパスフレンズセット」。
一応、1/24カーモデルの横に置くアクセサリー、という大義名分はあるものの、アイビールックの若者たちの中には、スカートを履いた女子大生の姿が……。
モデラーは大注目ですよ。だって、スカートの裾なんて、埋めてあってもいいんだもん。そういう省略された細部を「自分で工夫して作ろう」と奨励してたのが、田宮模型だったんだから。
だけど、時代の空気が、そのポリシーを曲げさせた。090618_16200001 090618_16220001
下着のラインこそないものの、スカートを接着しなければ、改造のネタは無限に広がるわけでしょ。今まで、渋い軍服姿のオッサンばかりモールドしてきた金型職人は、何を想って女子大生の下半身を、ベリリウム銅に刻印したのであろうか?

こういう、「萌えフイギュア考古学」という連載を各誌に持ちかけましたが、すべて断られました(笑)。
さっきから「時代の空気」って言ってるけど、岡田斗司夫さんの『オタクはすでに死んでいる』に書いてあるように、80年代初頭は女子大生ブームで、漫画雑誌ですら、水着のアイドル・グラビアを載せはじめた。質実剛健だった文化・メディアが、一斉にカワイイ女の子にすりより始めたのが、この頃だったんだ。

そのスタンダードが、30年も崩れてない、というのは、きっと平和の証なんだろう。思っているほど、今は不幸な時代ではない。あの時代のお気楽さ、奔放さは、まだ続いている。
裏を返せば、誰かが開けたパンドラの箱は、誰にも閉じることが出来ないってことなのかも知れない。


BS世界のドキュメンタリー『ガザに死す』。
自爆攻撃を扱った映画『パラダイス・ナウ』の舞台ともなった、ヨルダン川西岸のナブルスに始まり、ガザ地区のラファへ、イギリス人撮影クルーが、子供たちの姿を追う。カメラマンがイスラエル兵に狙撃されたことで、このドキュメンタリーは急激に美化されるのだが、すでにパレスチナ人の協力者からは、批判の的となっていた番組らしい。


ここんとこ、地味すぎる話がつづいていた『バトルスター・ギャラクティカ』シーズン3、第1649_07話『サボタージュ』。完璧な必然性に支えられた脚本、臨場感あふれる演出に圧倒される。
「習得してきたものを捨ててしまえば、かすかな希望がつかめるんだ」という、バルター博士の絞りだすような一言が、効いた。
どこか釈然としないラストも、現実と地続きな感じがして、『ギャラクティカ』らしい。

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コメント

蟹工船でしたね。「艦長厳し過ぎ!」と思いましたが、戦時下ということを違う側面で現実的に描写してましたね。流石です。久しぶりに面白かったです(笑)。

投稿: ハム船長 | 2009年6月21日 (日) 05時16分

■ハム船長さま

>蟹工船でしたね。

ああ、言われてみれば!
ああいう工場で子供が働いているのがリアルです。

チーフの言動が正攻法だからこそ、アダマやロズリンの理不尽ともいえる、指導者ならではの対応に考えさせられましたね。
あえて、黒白つけなかったようにも思います。

投稿: 廣田恵介 | 2009年6月21日 (日) 07時06分

これからシーズン3のフィナーレに向けて
一気にまたジェットコースターが加速しますから
どうぞ楽しみにしていてください(笑)。

投稿: ELLIE | 2009年6月22日 (月) 21時44分

■ELLIE様
残り、あと4話なんですよね。
今週から、またサイロンとの話が始まるみたいですね。一体どこで「つづく」になるのか、まったく分かりません……。

日本では、秋は『RAZOR』で盛り上げ、シーズン4はその後みたいです。

投稿: 廣田恵介 | 2009年6月22日 (月) 21時53分

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