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2009年6月29日 (月)

■合金少女の重み/シリーズ「人類は、いかにしてプラモデルの金型にパンツを彫りこんできたか」第5夜■

メガミマガジン 8月号 明日発売
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『化物語』原作 西尾維新 インタビュー
いやあ、このインタビューは面白かった! メーカーからのお願いで多くは語れないし、最終誌面がどうなっているのか、見せてもらえてないのですが、話術に幻惑されるというか、インタビュー起こしをしているだけで、しゃべくり漫才になっていくんですね。面白かった。
アニメの『化物語』は、第1話を拝見しましたが、これまたカッコいい。何というか、「このアニメ、好きで見てるんだよね」と女の子に自慢できます。
ミニシアターで、得体の知れない映画に出くわした時のような、「俺の映像センス、一歩前進」みたいな感じ。関東では、今週スタート。


さて、たった二人の読者のために、今日も始めますか。
第3夜のときに、「フィギュア趣味には、個人名がつきまとう」というようなことを書いたと思う。80年代から現在まで、個人が自らの手指で培ってきた文化、それがガレージキット。
090626_07440001090626_07390001ガレージキットの話を始めると、それこそ、本一冊でもすまないので、ここでは手早く、フカヤというメーカー(というか、お店ですね)の発売したキット「マジカル・エミ 普段着タイプ」を見て欲しい。
分かりますか、この手づくり感。箱なんて、作り手が勝手に描き下ろしてる。でも、ちゃんと版権マークが貼ってあるでしょ。キット自体は、無発泡ポリウレタン(商品名をとって、プラキャストと呼んでいた)という素材で出来ている。これなら、自分の家の机の上で、自作のフィギュアを量産できる。
プラキャストは、粘土やパテをこねてフィギュアを作っていた素人にとって、「夢」だったんだ。これなら、プラモデルのように量産が出来るから(数は、たかが知れているけど)。
090626_07400001今でも個人がイベントなんかで販売しているけど、日本各地のお店が好き勝手に作って通販してたのは、80年代半ばぐらいか。左のように、説明書も手描きのコピー。内輪受けの4コマ漫画が、ほほえましい。原型制作は、バンダイ発売前にラムちゃんを作って、雑誌で有名になっていた三星政広さん。三星さんのラムちゃんは、本当に素晴らしかった。
つまり、こういう個人が雑誌を通じて、ユーザーとメーカーを刺激していたから、大手メーカーのバンダイが、ラムちゃんやミンキーモモの発売に踏み切れたわけ。

でも、ガレージキットには、決まり事なんてなくてね。
090626_07470001090626_07460001中には、こんな合金(ホワイトメタル)製の女の子なんもあったりして。ゼネラル・プロダクツ発売の「1/12 DAICON Ⅳの女の子」。女の子なのに、重たい、重たい。
やっぱり、材質って大事。プラキャストのアイボリー色って、なんか「そそる」んだよ。でも、こんな、錫合金なんて、あんた。メカゴジラじゃないんだからさ。
だって、今まで掲載してきた「肌色のプラスチック」って、なんか、造形が悪くても「うわ、やらしっ」て思わなかった? そういうもんなんです。プラキャストってのは、うっすら透きとおった質感で、そのままでも十分に、エロティックな感じがする。

それで、80年代中頃から、非版権モノというか、単なるハダカの女の子とか、訳の分かんない、落書きみたいなガレージキットも出てきた。へったくそな、SMフィギュアとかさ。上の、合金製の女の子も狂気なんだけど、むき出しの欲望が、模型界を裏から侵食しはじめて……もう、目まいがする。悪夢だよ。
ようは、便所の落書きに、値札がついてたんだ。それが上手いか下手かってだけで。「萌え」なんて甘いもんじゃないですよ。「欲」ですよ。
かくして地獄の釜がひらき、気がつけば、審判のいないゲームが始まっていたのである。次回更新につづく。


やっと、『きみの友だち』見たけど……もう、親しい人が病死して、それで泣けるってパターンはやめにしないか? 原作は、重松清。『その日のまえに』も闘病モノだったけど、あれは大Sub1林宣彦と永作博美が、一世一代の大暴れをした怪作だったから、よし。
しかし、『きみの友だち』の廣木隆一は、日活ロマンポルノ出身の職業監督で、一般作デビュー当時から、何をしたいのか分からない人。こんな中学生日記みたいな話なのに、125分もある。ロングで長回しのカットは、悪いけど早送りにさせてもらった。
主演の石橋杏奈は、声も含めて、個性的な、いい女優だった。肝心の吉高由里子は、別に吉高でなくとも……という役どころ。監督を選ぶ女優だね。蒼井優とは正反対だ。
でも、この記事なんか読むと、ますます吉高由里子が好きになるねー。「這いつくばって監督にゴマすりすり」って、お前、死んでいいよ(笑)。もう、大好き。

廣木隆一の最新作は『余命一ヶ月の花嫁』。また闘病モノ。同監督の『恋する日曜日 私。恋した』も、堀北真紀が余命3ヶ月の末期がん。監督自身が作品を選べるとは限らないので、単に邦画が「病死ブーム」なんでしょうね。
「人が死んだから、泣けた」なんて、カタルシスとして近道すぎるだろう。


『うみものがたり』のアニメ、始まったね。マリンちゃんの、金髪でポニーテールという髪型は、ここまでキャラを変えてもキャッチーだと思った。そこだけは、心から感心したね。
あと、3DCGの使い方がチープで、なんだかホッとした。そういう油断やスキが、作品の愛らしさに繋がることもあると思う。

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コメント

>たった二人の読者のために

ありがとうございます。
なんというか、ステージと目が合うほどのライブハウス感ですね。客も気合入れろ!って気分で読ませていただきます(笑)。

80年代はオタク業界において、個人の作業に注視された時代といいますか、例えばアニメで言えば作画監督がスターだった時代、のように感じます。

「お仕着せのトータルクオリティ」よりも「優れた個人の目と手」重視。果ては「オレにはこう見えたから、こう描く」という無責任な自由までがプロアマ関係無く、なぜか許されていたような。

>内輪受けの4コマ漫画が、ほほえましい。

89年ごろ、高校生の自分が初めて購入した“ガレージキット”「イングラム」(海洋堂のソフビキット)でも取説はコピー印刷、説明イラストはなぜか藤田幸久氏という妙にグレーゾーン感漂うシロモノで軽いショックを受けた記憶があります。「…なんかゲリラっぽい」と。
当時としては、かなりマスプロ感が強いガレキ商材だったはずですが。

ちなみに買ったのは福岡のフカヤでしたね(笑)

投稿: べっちん | 2009年6月29日 (月) 09時23分

■べっちん様
>グレーゾーン感漂うシロモノ
>「…なんかゲリラっぽい」と。

そうそう、ゲリラ戦でしたよね。模型誌の読者投稿欄から、プロになっちゃった人もいます。
中学生モデラー、なんて人までいましたから、もう上手ければ、未成年だろうが関係ない。バンダイも、才能ある人はどんどん連れてきてましたからね。

>説明イラストはなぜか藤田幸久氏

藤田幸久という人が、模型界に果たした役割も、大きいですよね。ちょっと前に、硬派な題材に『萌える~』と、キャラを後のせした本が流行りましたが、藤田さんの『プラモのモ子ちゃん』そのままじゃん、と。

「模型文化」という筋を通すと、一気にオタク文化の始原に、たどり着くんですよ。アニメとか漫画とかアイドルとか、雑多なリフレクトを、模型文化が一括して受容していたんです。

>福岡のフカヤ

うわあ、「現場」じゃないですか。
こういう現象が、九州にまで波及していたのも凄いですね(笑)。

投稿: 廣田恵介 | 2009年6月29日 (月) 10時07分

 てっきり、そろそろ「サザンクロス」が出てくるのかと思いきや。。。出てきませんでしたね(笑)


 萌えキャラが出てくる以前は、ファンタジーフィギュアの洋モノとか、和服で座りションベンしているじめっとしたテーマのフィギュア(ガレージキット)がありましたよね。


 ガンダムキャラのプラモが出てきた当初、「ああ、やっぱりアニメキャラは3次元では再現不可能だ」と思っていたものですが、革命的だったのが、高い造形クウォリティの『Dr.スランプ』の消しゴム人形(バンダイ製、81年頃?)の登場だったと記憶しています。このゴム人形の登場を境に、「2次元のキャラの3次元化もやれば出来るじゃん」みたいな空気が出てきたように思います。

投稿: きゃてぃーなかぢま | 2009年6月30日 (火) 01時29分

■きゃてぃーなかぢま様
『サザンクロス』のキットというと、「ラーナ少尉 ロリコン」で画像検索すると、出てきますね(笑)。
あれはちょっと趣旨から外れすぎなんですよ。「和服で座りションベンしているじめっとしたテーマのフィギュア」も、あえて探して購入しようとは思いません……って、俺は何かから逃げているのかも知れませんが。
まさに、あれらのフィギュアこそ「便所の落書き」なわけですね。

>革命的だったのが、高い造形クウォリティの『Dr.スランプ』の消しゴム人形

これは、よくぞ言ってくださいました。現在の美少女フイギュアの始原は、ガシャポン人形なんです。ただ、そこへ行き着くまでの過程は、けっこうストレートなので、もうちょっと遠回りします。

投稿: 廣田恵介 | 2009年6月30日 (火) 12時49分

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