■絵心のない人の言う「綺麗な絵」は信用できる■
EX大衆 7月号 15日発売
●愛ドルのリコーダー 古崎瞳
●原 幹恵 「昭和エレジー」
それぞれ、グラビアポエム執筆。名物コーナーだった「愛ドルのリコーダー」は、今月の連載18回目が最終回。おいおい。ただ水着のアイドルがリコーダー吹いてるだけの写真に、18本もポエム書いたのかよ。我ながら呆れるが、最終回なので、気合い入れましたよ。
原 幹恵さんの方は、編集から「四畳半フォークで」というオーダー。俺の頭の中に響いていたのは、『神田川』ではなく、あがた森魚の『君はハートのクィーンだよ』だった。これも、面白い仕事だった。
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絵心のない人の言う「綺麗な絵」は、信用できる。パチンコの企画(演出も含む)をやっていた頃、しきりにパチ好きの仕事仲間から説明されたのが、『海物語』の美しさだった。 もちろん、アニメ絵に慣れた俺からすると、ヒロインのマリンちゃんからして、ダサすぎて笑ってしまう。
でも、彼は力説するの。「この魚群予告が来ると、アツいわけですよ」「見ましたか、今のアブク。これ、すごく綺麗でしょう? このアブクが綺麗だから、打ってる側は、期待するんですよ」。
……いや、PS1どころかスーファミ並のCGにしか見えないって。でも、頭を切り替えないとダメ。打つのは、俺のようなオタクではないのだから。『海』の絵を分析して、グラフィッカに、わざとダサいCGを発注したりした。みんな怒ってたけど、一番人気は『海物語』なんだから、それを基準にしなきゃ。
何しろ、台の人気イコール、キャラの人気ですから。俺らはオリジナルで、『攻殻機動隊』みたいなセクシー姉ちゃんアクション物の、スロット企画を出したりしたが、クライアントの関心はイマイチだった。そんなオタ好きのするヒロインでは、マリンちゃんに勝てないのだ。(←近所のパチ屋のマリンちゃん像)
俺がリーチや予告のアイデアを出しても、仕事仲間は「いえ、『海』のアブクに匹敵するぐらい、綺麗なやつを」とNGを出す。デザインがダサいとか、そういう問題じゃない。打つ人は、オッチャン、オバチャンだから。
結局、僕が企画に関わったパチンコは、二台、ホールに並んだ。デザイン段階で、僕が「良い」と思った演出もCGも、ほとんど変更されていた。でも、そのダサさは、ユーザーのためのダサさ。だから、それでいいの。
さて、『海物語』10周年記念アニメ『うみものがたり ~あなたがいてくれたコト~』。監督、佐藤順一? いやいや、もうぜんぜん聞いたことのない方にお願いしたい、と俺は思ってしまう。吉田玲子、小林七郎……ダメだ、一流すぎる。もう、ローポリ丸出しの5分番組でいいではないか。こんな有名なコンテンツを、「異業種であるアニメ界」で一流にしようって考え、なんか地方行政っぽいよね。
アニメ界のセオリーが、他の娯楽産業で、そう易々と通用するものだろうか。何より、ヒロインが出てくるからといって「最低限、萌えられる」保険をかけ、送り手も受け手も、何とな~く安心していることが、非常にイヤ。
いいじゃないか、ダサく生まれたものはダサいままなのが、美しいんだから。パチならパチの美意識を、貫いて欲しいのよ。
既存アニメに準拠しすぎるから、似たようなアニメが多くなるわけでしょ。石黒昇監督の最新作『パッテンライ!! ~南の島の水ものがたり~』みたいなアニメも、必要なんだよ。
アニメに限らず、僕は、雑多と混沌を望む。
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先日、せっかく新品を定価で入手したティンカー・ベルのパズルだが、どうしてもパッケージを開ける気になれず、新たに中古品を買ってしまった。左は、ハズブロ社のフイギュア(輸入元はトミーダイレクト)。けっこう大きいのに、たった千円だった。
よく見たら、「RETURN TO NEVER LAND」と書いてある。つまり『ピーターパン2』版のフイギュアってことか……。まあ、いいか。
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コメント
!!!パチンコをやらない私が、長い間抱いていた疑問、「海物語のキャラはなんであんなにかわいくないんだ」という疑問がやっととけました、センセ、ありがとう!
コンシューマゲームのアニメ化が、何となくうまくいかないことが多いのも、似たような線なのでしょうね。。。
投稿: きゃてぃーなかぢま | 2009年6月13日 (土) 02時22分
■きゃてぃーなかぢま様
僕の脳内に「分かってない萌えキャラ」というジャンルがあるんですけど……マリンちゃんは、その中では超メジャーです。10年間も、何十万人という人に現役で愛されてますから。
>コンシューマゲームのアニメ化が、
>何となくうまくいかないことが多いのも、似たような線なのでしょうね。。。
既存アニメのフォーマットに、はめすぎなんですよ。アニメ・ファンって、いまや少数派だと思うので、どんどん狭くなっていきますよね。
これは、作品の質とは別次元の問題で、「アニメ化する」方法論、考え方が均質化してきてるんじゃないか、と危惧してるんです。
投稿: 廣田恵介 | 2009年6月13日 (土) 02時54分
昨日自分も同じ様な事を考えていていました。アニメのスタッフは理解した上でわざとダサい絵を描いたりデザインをしたり、良い意味でアホになって作らなければ行けないのではないか。そこに視聴者の想像力を引き出せる遊びが産まれるのではないか。小難しいSF考証も後付けと考える位でどうかと。
もちろんアニメファン向けの「一流」もあって良いのですが。
投稿: ハム船長 | 2009年6月13日 (土) 05時33分
■ハム船長さま
アニメ以外の媒体を取材していると、「僕がいかに苦労したかなんて、書かないでね」と言われたりします。ようは、「こいつバカだな、分かってないな」と思わせるのもテクニックのうちだと言うんです。
そうした余裕こそが、大人の「遊び」につながるのでしょう。
「あのDVDは○百枚しか売れてない」なんて話ばかり聞かされると、とてもアホのふりをする余裕はないんだな、と感じてしまいますね……。
投稿: 廣田恵介 | 2009年6月13日 (土) 06時31分
マリンちゃんは、見るたびに「ダセェ」(by『純喫茶磯辺』の仲里依紗)と思ってました。
パチンコではこの程度で「カワイイ」ってことなんだろうねぇ、と。
つまり「ダサイ」んだけど、「カワイイ」を意味してるのはキッチリ伝わった。
この「キッチリ伝わる」ってのが大事な世界なんでしょうね。
ちなみに『片腕マシンガール』の八代みなせは、三代目ミスマリンちゃんなわけで。
DVDのプロモーションに八代みなせが出てこなかったのは、ミスマリンちゃんだがらだよなぁ、と『海物語』には複雑な思いがあります。
投稿: DH98 | 2009年6月13日 (土) 16時53分
■DH98様
そうなんです、『海物語』を打っている人には「カワイイ」キャラとして伝わっているはずなんです。そうでなければ、あんなにグッズが出たり、ミスコンなんてやるはずがない。
それをスポイルしてまでアニメ化する理由が、分かりません。(もちろん、企画には大勢の意志が絡むので、誰かの一存ではないと思いますが)
「クオリティの高さ」が一方向へ向かっているようで、怖いです。
投稿: 廣田恵介 | 2009年6月13日 (土) 21時07分
このサイトさんには関係ないんだろうけど
痕跡症候群がこの記事をゆうきまさみへの嫌味や
自分への言い訳に使ってたので
改めて”ニュースサイト(笑)”の卑怯さにむかつきました。
投稿: あ | 2009年6月18日 (木) 05時29分
記事自体については
幼児的万能感に酔ったキチガイが変な具合に飛びつきそうですが
あれですね
何でも鑑定団に出てくる骨董品の話みたいなもんですね
普通、上薬がどうとか言われてもわかんね~よみたいな
投稿: あ | 2009年6月18日 (木) 05時38分
■あ様
はじめまして、書き込みありがとうございます。
まあ、「自分への言い訳」は冗談の範疇だと思いますが、
>ゆうきまさみへの嫌味
そのコメント自体は見てないのですが、だとしたら、ちょっと失礼な気がします。
>普通、上薬がどうとか言われてもわかんね~よみたいな
そうですね、似たようなものでしょう。たまたま、僕は現場にタッチできたので、「わざとダサくすればいいんだ」と気がついただけですから。最初に『海物語』のデザインやった人は、苦しまぎれだった可能性が高いですね(笑)
投稿: 廣田恵介 | 2009年6月18日 (木) 06時35分