■合金少女の重み/シリーズ「人類は、いかにしてプラモデルの金型にパンツを彫りこんできたか」第5夜■
メガミマガジン 8月号 明日発売
『化物語』原作 西尾維新 インタビュー
いやあ、このインタビューは面白かった! メーカーからのお願いで多くは語れないし、最終誌面がどうなっているのか、見せてもらえてないのですが、話術に幻惑されるというか、インタビュー起こしをしているだけで、しゃべくり漫才になっていくんですね。面白かった。
アニメの『化物語』は、第1話を拝見しましたが、これまたカッコいい。何というか、「このアニメ、好きで見てるんだよね」と女の子に自慢できます。
ミニシアターで、得体の知れない映画に出くわした時のような、「俺の映像センス、一歩前進」みたいな感じ。関東では、今週スタート。
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さて、たった二人の読者のために、今日も始めますか。
第3夜のときに、「フィギュア趣味には、個人名がつきまとう」というようなことを書いたと思う。80年代から現在まで、個人が自らの手指で培ってきた文化、それがガレージキット。ガレージキットの話を始めると、それこそ、本一冊でもすまないので、ここでは手早く、フカヤというメーカー(というか、お店ですね)の発売したキット「マジカル・エミ 普段着タイプ」を見て欲しい。
分かりますか、この手づくり感。箱なんて、作り手が勝手に描き下ろしてる。でも、ちゃんと版権マークが貼ってあるでしょ。キット自体は、無発泡ポリウレタン(商品名をとって、プラキャストと呼んでいた)という素材で出来ている。これなら、自分の家の机の上で、自作のフィギュアを量産できる。
プラキャストは、粘土やパテをこねてフィギュアを作っていた素人にとって、「夢」だったんだ。これなら、プラモデルのように量産が出来るから(数は、たかが知れているけど)。今でも個人がイベントなんかで販売しているけど、日本各地のお店が好き勝手に作って通販してたのは、80年代半ばぐらいか。左のように、説明書も手描きのコピー。内輪受けの4コマ漫画が、ほほえましい。原型制作は、バンダイ発売前にラムちゃんを作って、雑誌で有名になっていた三星政広さん。三星さんのラムちゃんは、本当に素晴らしかった。
つまり、こういう個人が雑誌を通じて、ユーザーとメーカーを刺激していたから、大手メーカーのバンダイが、ラムちゃんやミンキーモモの発売に踏み切れたわけ。
でも、ガレージキットには、決まり事なんてなくてね。中には、こんな合金(ホワイトメタル)製の女の子なんもあったりして。ゼネラル・プロダクツ発売の「1/12 DAICON Ⅳの女の子」。女の子なのに、重たい、重たい。
やっぱり、材質って大事。プラキャストのアイボリー色って、なんか「そそる」んだよ。でも、こんな、錫合金なんて、あんた。メカゴジラじゃないんだからさ。
だって、今まで掲載してきた「肌色のプラスチック」って、なんか、造形が悪くても「うわ、やらしっ」て思わなかった? そういうもんなんです。プラキャストってのは、うっすら透きとおった質感で、そのままでも十分に、エロティックな感じがする。
それで、80年代中頃から、非版権モノというか、単なるハダカの女の子とか、訳の分かんない、落書きみたいなガレージキットも出てきた。へったくそな、SMフィギュアとかさ。上の、合金製の女の子も狂気なんだけど、むき出しの欲望が、模型界を裏から侵食しはじめて……もう、目まいがする。悪夢だよ。
ようは、便所の落書きに、値札がついてたんだ。それが上手いか下手かってだけで。「萌え」なんて甘いもんじゃないですよ。「欲」ですよ。
かくして地獄の釜がひらき、気がつけば、審判のいないゲームが始まっていたのである。次回更新につづく。
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やっと、『きみの友だち』見たけど……もう、親しい人が病死して、それで泣けるってパターンはやめにしないか? 原作は、重松清。『その日のまえに』も闘病モノだったけど、あれは大林宣彦と永作博美が、一世一代の大暴れをした怪作だったから、よし。
しかし、『きみの友だち』の廣木隆一は、日活ロマンポルノ出身の職業監督で、一般作デビュー当時から、何をしたいのか分からない人。こんな中学生日記みたいな話なのに、125分もある。ロングで長回しのカットは、悪いけど早送りにさせてもらった。
主演の石橋杏奈は、声も含めて、個性的な、いい女優だった。肝心の吉高由里子は、別に吉高でなくとも……という役どころ。監督を選ぶ女優だね。蒼井優とは正反対だ。
でも、この記事なんか読むと、ますます吉高由里子が好きになるねー。「這いつくばって監督にゴマすりすり」って、お前、死んでいいよ(笑)。もう、大好き。
廣木隆一の最新作は『余命一ヶ月の花嫁』。また闘病モノ。同監督の『恋する日曜日 私。恋した』も、堀北真紀が余命3ヶ月の末期がん。監督自身が作品を選べるとは限らないので、単に邦画が「病死ブーム」なんでしょうね。
「人が死んだから、泣けた」なんて、カタルシスとして近道すぎるだろう。
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『うみものがたり』のアニメ、始まったね。マリンちゃんの、金髪でポニーテールという髪型は、ここまでキャラを変えてもキャッチーだと思った。そこだけは、心から感心したね。
あと、3DCGの使い方がチープで、なんだかホッとした。そういう油断やスキが、作品の愛らしさに繋がることもあると思う。
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