■4シラブルのタイトル■
永井豪にも『マジンガーZ』にも超合金にも、まったく思い入れがないので、『真マジンガー 衝撃!Z編』は、割と覚めた目で見はじめた。若い人には、こういう企画がオヤジホイホイだとは思ってほしくない。
クライマックスだけを「これでもか」と盛りつけた展開を見ているうちに思い出したのは、小学校のころに大学ノートに書いていたロボット漫画だった。その頃に流行っていたロボット・アニメを片っ端からパクって、思いつくままに書いてたんだけど……あの当時は、日本全国、クラスに一人ぐらいは書いてたヤツがいたんじゃないか? 思いつきだけで、いいとこどりしたロボット漫画。適当なところで「つづく」となっていて、そのまま忘れてしまうような。ようするに、あれをテレビでやっている。そこにシンパシーを感じたので、ちょっとうらやましかった。
もうひとつ、必然的に結びつくのは、やっぱりヘンリー・ダーガーだ。彼の作品も、思いつくまま、好きなものだけを放り込んだ巨大な落書き。俺たちが小学生の頃に書いていた漫画を、ダーガーは死ぬまで書きつづけていた。これもやっぱり、「うらやましい」。彼は、子供であることをやめなかったんだ、一生。あの頃の精神状態に立ち返るにはどうしたらいいのか。子供でありつづけるには、どうしたらいいのか。それを考えるのは、社会性を獲得するのと同じぐらい大事ではないかという気がする。
■
覚え書き程度に書いておくと、例えば今期の番組でいうと『けいおん!』。遡っていくと、『とらドラ!』『みなみけ』『かんなぎ』『らき☆すた』『ひまわりっ!』『いぬかみっ!』『まほらば』『ぴたテン』『かみちゅ!』、まだ他にもあるだろう。4文字というより、4シラブル(4音節)のアニメや漫画のタイトルが増えている。丸山圭三郎の受け売りなのだが、4シラブルは日本人に最もフィットするので、略語は必ず4シラブルになる。「アラフォー」なんかがそうでしょ。4シラブルは発音しやすいから。
耳ざわりが良くて、覚えやすいタイトルは4シラブルにしろ、というセオリーが漫画界やアニメ界にあるのかどうかは知らないが、とにかく「視聴者の理解のスピードを早める」ことが至上命題になっている気がする。もっと言うなら「カンタンに分からせる」ことが望まれているんじゃないだろうか。
4シラブルのタイトルだと、警戒心が解かれるよね。『チェルノブイリ・クライシス』というドキュメンタリー映画があったけど、「チェル・クラ」って略すると、とても深刻な映画に思えない。4シラブルは魔力なんですよ。それも、最も安直な魔力だと思う。
■
ようやく仕事に余裕が出てきたので、DVDを借りてくる。ホロコーストや9.11をモチーフにした地味な外国映画ばかり。まだ、女優優先でお気楽な邦画を見る気分になれない。NHK-BSの「世界のドキュメンタリー」を録りためてあったので、そっちも見る。
富野由悠季は、なぜ『Z』から『ZZ』にかけて、「ガザ」「カブール(カプール)」など中東の地名を採用しはじめたのだろう。なぜ、あのタイミングで「アフリカ解放戦線」など出したのか、気になってきた。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント
マジカワとか、ゲキヤバなんかもそうですが、渋谷系文化だとこれが遂に2文字(しかもローマ字!)になってKYとかになってるんですね。
あと、略語ではありませんが、ガンダム、イデオン、ボトムズ、ガサラキなんかも4個節ですね。
近年でびっくりしたのは、『月は東に日は西に』。
平仮名部分だけとって『はにはに』ですよ!?
企画者の意図か、ユーザーから発祥したのか、よく見つけたわそんなん。
一時期、企画名に4個節を連想しやすいタイトルつけるのに躍起になってた時期もありました。
投稿: てぃるとろん | 2009年4月 6日 (月) 04時43分
■てぃるとろん様
KY(ケーワイ)も、音節でいうと4シラブルですね。
サンライズのタイトリングは、当時から「ワンパターン」と言われていたんじゃないでしょうか。
ただ、ここ何年かの4音節のタイトル流行りは、単なる幼児化だと思います。
投稿: 廣田恵介 | 2009年4月 6日 (月) 06時25分
新聞のテレビ欄を見て気付きました。深夜早朝に放送される番組のタイトルはほとんど再現不能なくらい圧縮されるているのです。たとえば『夏のあらし!』は「夏あらし」。4シラブルは新聞のテレビ欄対策なのではと。
そう言えばテレビ欄もラテ欄と省略しますよね。
投稿: Nishinomaru | 2009年4月 6日 (月) 14時58分
■Nishinomaru様
それはまた、目の付け所が良いですね……と納得しかけたのですが、原作付が大半ですので、テレビ欄対策とも言い切れないと思います。まず、書店に並ぶわけですから。
ただ、起点は「どうせ略されるんだから、最初から略称みたいなタイトルでいいじゃないか」だったのでしょうね。
投稿: 廣田恵介 | 2009年4月 6日 (月) 16時20分
>もっと言うなら「カンタンに分からせる」ことが望まれているんじゃないだろうか。
>ただ、起点は「どうせ略されるんだから、最初から略称みたいなタイトルでいいじゃないか」だったのでしょうね。
なんと言いましょうか、マンガにせよアニメにせよ読者や視聴者に誤解・曲解されたくない、という意識が制作者にあるような気がします。『みなみけ』の前口上はあからさまですが。
投稿: Nishinomaru | 2009年4月 6日 (月) 17時20分
■Nishinomaru様
『みなみけ』のOP前のあれは、聞き流してちょうどいいと思いますよ。
>読者や視聴者に誤解・曲解されたくない
その傾向は最近、強いですよね。
本に原稿を書いていても、「あのセリフは、そういうつもりで書いたわけではありません」的な修正は来ます。なるべく、作品にいいイメージを持たせてやって、優しく扱ってあげないとイカンわけです。「アニメって、商品なんだな」と痛感しますよ。
中には、「事実誤認でないかぎり、どう見てもらっても構わない」という大らかな方も、ごくまれにいらっしゃいます。
投稿: 廣田恵介 | 2009年4月 6日 (月) 21時05分