■咲の呟きに、キュンとくる■
『バトルスター・ギャラクティカ』シーズン3、まだ半分も進んでないのに、想像を絶する展開になっている。宿敵サイロンにのみ感染する病原菌が発見され、それを生物兵器として使用すべく大統領が命令を下す。作戦が成功すれば、サイロンを根絶やしに出来る。しかし、そもそもサイロンと人間との差は何なのか? 人間を人間たらしめているものは、果たして何か。このドラマは、深遠から問いを発しつづける。
地上波でやってるシーズン1に飽きてきちゃった人、何とか我慢してシーズン2へたどり着いてください。
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『ギャラクティカ』ほど同時代性のあるコンテンツって、日本にあるのかな……と嘆きつつ、『東のエデン』第2話。神山健治監督、大健闘している。惚れちゃいそう。実は第5話までシナリオを読んでいるのだが、「こういうニュアンスの映像になるのか」と唸らされる。桟橋で朗と別れそうになった咲が、「まだメアドも交換してないのに……」と消え入りそうな声で呟く。キュンとくるよね。アニメで、こういう繊細な感情の機微を出せるんだ。あの年頃の女の子の傲慢さと感傷癖とを、いっぺんに表現している。
で、咲の呟きでキュンとくるのは、声優さんの演技だけではなくて、シーン全体が丁寧に組み立てられているから。例えば、あのシーンの波、作画で動かしている。最近のアニメは水面をCG処理するのが定番化してるのに、これは手描きでしょう。結局、「映像」というのは、具体的なパーツとパーツで成り立っている。そのパーツを線の一本一本にいたるまで解体可能なところが、実写にはないアニメの面白さだ。
実写映画は「カメラの前で起きたことの記録」だが、アニメは「すでに起きたことを、ゼロから作り出す」。その倒立した構造がエキサイティングだから、僕はアニメを見ているんだと思う。
この「すでにカメラの前で起きた」という姿勢の欠落したアニメは、まったく心に響いてこない。逆を言うと、既視感さえあれば、どんなウソでも信用できるのだ。
ともあれ、神山監督に惚れこんだ僕の、「アニメージュオリジナル」のインタビューをお楽しみに(来週発売)。徹夜つづきで、クターッとなっているアニメ監督ほど、愛らしい人種はいないですよ。
ところで、『東のエデン』は一話にひとつは映画ネタを入れていくつもりらしい。単なるお遊び以上のメッセージを、そこに感じる。
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『ハイジ』に格別な思い入れはないのだが、求龍堂の「アルプスの少女ハイジの世界」、この本は凄い。杉山佳寿子のスイス旅行記、ヨハンナ・スピリの生家訪問、プロデューサーから仕上検査までスタッフ12人のインタビュー、初期デザイン、その他いろいろ載ってて1,800円。
同じシリーズで『ラスカル』もあるらしい。著者に人徳がなければ、こういう本はつくれない。
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コメント
ギャラクティカ、今後も想像を絶する展開ですよ~。
そろそろ私の好きな"Unfinished Business"にさしかかりますね。このエピソードはスピンオフ的性格のもので、少し心の休憩が出来るかと思いますが、ストーリーの理解が深まるという意味では重要なエピソードです。シーズン3はスピンオフ系のエピソードが多かったせいか、ドンパチ&ジェットコースター的展開を望むファンには評判が悪かったようですが、私は人生について考える機会を与えてくれて好きでした。
投稿: ELLIE | 2009年4月20日 (月) 05時40分
■ELLIE様
まだ、前半10話も消化してないのに、こんなに飛ばして大丈夫なのかとハラハラしながら見てます。ニュー・カプリカを脱出したのが、もう前シーズンのような気さえしてきます。
"Unfinished Business"は、次々回ですね。THE OFFICIAL COMPANIONを買ったのですが、これはストーリー部分は読まないほうがいいみたいですね(笑)。
>ドンパチ&ジェットコースター的展開
シーズン2が、まさにそうでしたね。あれはあれでエキサイティングでしたが、シーズン3は内面に潜るというか、思索の旅に出かけるような雰囲気がありますね。
投稿: 廣田恵介 | 2009年4月20日 (月) 13時42分