■ポエム化するアニメ■
メガミマガジン 5月号 発売中
●声優さんインタビュー
内容に関しては、ノーコメント。
一応、スケジュールさえ合えば、こういう小さな仕事も請けてます、ということで。
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怪作『空を見上げる少女の瞳に映る世界』の最終回で、画面では壮大なエフェクト・アニメーションが展開しているのに、主人公の少女のモノローグだけで物語やテーマが「解説」されるのを聞いて、失笑した。「私たちの未来が」とか「信じる気持ちが」とか……まあ、OVAの再編集モノだし、話がまとまらなかったのかな、程度に思っていた。
ところが、『とらドラ!』『ガンダム00』の最終回を見て、モノローグで「思い」を説明するのが、ひょっとして流行ってきているのかと不安になった。
キャラクターが意志表明しないと、お話が終りづらくなってきている。そういうアニメが増えた、というより、そうしないと分からない人たちが増えてるんじゃないだろうか?
『とらドラ!』に関しては、長めのモノローグは「ポエム」と揶揄されているようだ。ただ、「原作がライトノベルだから、ある程度、仕方ないのでは」という意見を読んで、やや納得した。だけど、『ガンダム00』は「ポエム」で逃げおおせたよね。劇を組み立てる意志が感じられなかった。
『鉄腕バーディー:02』のラストで、バーディーが時空の彼方へ消えてしまった恋人に「私、待ってるよ」と呟く。このセリフを「伏線になってる」「第3期につながるんじゃないか」と解釈している人がいて、だいたい何が起きてるのか分かってきた。キャラクターの言うことを、額面どおりに受け取っているわけだ。
もう恋人に会えないと覚悟しているバーディーに、あえて「待ってるよ」と言わせるのがドラマなんだよ。なのに、はっきり「もう会えないのね」と言わせないと、キャラの感情をつかめない人がいる。そういう人たちが増加するとしたら、「ポエム」はどんどん流行ると思う。
これは、アニメの表現がどうとか言うより、コミュニケーション・スキルの問題だろう。
ちょっと思い出すのは、紀里谷和明監督の『CASSHERN』。あの映画でも、登場人物が今の自分の感情をポエティックに説明するのだが、紀里谷監督が言うには「ここまで喋らせないと、伝わらないもの!」 結果、『CASSHERN』は15億のヒットとなった。
『LIMIT OF LOVE 海猿』は、絶対的危機状況の中で、主人公が携帯電話で恋人にプロポーズするシーンが延々と続いた。失笑必至のシーンだが、それでも、71億円というメガヒット。
『CASSHERN』が04年、『海猿』が06年だから、ひょっとしてアニメ界に今、そういうウェーブが来ているのかな、と冗談半分に思う。
だけど、そういう時には、必ず別の何かを獲得しているはずなんだよね。それが何かは、まだ分からない。
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最近見たディズニーアニメは、ゼロックス・プロセスを初導入した『101匹わんちゃん』。ゼロックス・プロセスはマシントレスと同じような意味かと思ったら、ようはコピー&ペースト。 一度描いた原画を、同じカットの中にコピーしていく。ちょうど、ウォーホルがキャンベルスープなんかを描いていた頃ですよ。それを考え合わせると、ゼロックス・プロセスの導入自体に、時代の空気を感じる。
ゼロックス・プロセスの欠点は、コピーした原画の線がかすれてしまうことだが、『101匹わんちゃん』はそれを見越したポップな絵柄になっている。背景に実線があったり、わざと平面的な絵づくりにしているのがカッコいい。
これは、別セルに分けるなんて無理だろうから、同じセルに数匹の犬をコピーして、斑点の位置だけ変えて複数に見せてるんだろう。アニメの考え方って、50年前からデジタル的だったんだよね。
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