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2009年2月12日 (木)

■カメラは愛し、カメラはフラれる■

歌舞伎町といえば、午前3時か4時ごろ、ようするにキャバクラが最後の客引きをしている時間に親しいのだが、なんと真っ昼間のロフトプラスワンで映画の試写会が行われたので、行って来た。
Sgmdx06img_0923『ジャップ・ザ・ロック・リボルバー』、聴覚障害者によるロックバンドの自主制作ドキュメンタリー。この作品が薄ら寒い「美談」に陥らなかったのは、監督が適度に人が悪く、「ちょっと失礼な質問ですが」と言いながら、本当に失礼な質問をしているためである(笑)。過去の都合の悪い出来事を、何でも「バンドをつづけるため」と言い訳し、答えた後で「あっちゃーっ」と頭を抱えるメンバーの姿を、カメラは容赦なく捉えつづける。意地悪にカメラを回した分だけ、じんわりと温もりが伝わってくるから奇妙なものだ。
メンバーの奥さんと娘に「お父さんがバンドをつづけていて、どう思うか」と問答をやらせる(すべて手話)シーンも良かった。奥さんとしては、「お父さん、頑張ってね」と娘たちに言わせたい。しかし、そんな見えすいた狙いが上手くいくはずもなく、娘たちは飽きはじめてしまう。明らかにNGテイクである。ところが、カメラは止まらない。止まらないのは……監督が、この人たちを好きだからだよ。
ツッコミ方は中途半端だし、構成も粗いけど、席を立ったとき、奇妙な幸福感でニンマリしてしまう、不思議な映画。5月16日(土)より、渋谷ユーロスペースにて。

さて、女優の話でも。
ケーブルで放送していた広末涼子主演の中篇『Presents 合い鍵』。一度録画して見たときは「ふーん」という感じだったのだが、夜中に再放送していて、ちょうど広末涼子が恋人にフラれるシーンをやっていた。10年近く付き合ってきたカメラマンの彼氏が、喫茶店で「好きな相手が出来たので、別れて欲しい」と切り出す。
Pre3彼氏の恋の相手が同業のカメラマンで、「初対面なのに居酒屋で7時間話しこんだ」という挿話がリアルだ。そんな話をする彼氏は、バストショットのフィックスで撮影されている。対して、急に別れ話を切り出された広末は、画面いっぱいのアップで、カメラは手持ち。この不安定なカメラの動きが、一方的にフラれて動揺する広末の表情を、余すところなく捉える。ほとんど何も言い返すことが出来ない広末は、作り笑顔をしたかと思うと、ふいに無表情になる――背筋が寒くなるほどリアルな演技だ。
「私も、写真やってみようかな」と空しい提案を口にする広末。彼氏は「そういうことじゃないんだよ」と席を立つ。ここで、カメラは広末の目線を追う。広末は喫茶店の窓の外を眺めているのだが、ピントがぼやけてどんな風景なのか分からない……が、すこしずつ風景にピントが合っていく。このピントの合っていく速度が、広末の「未練」を機能的に表現している。ここでフラれているのは、広末涼子ではなく映画だ。映画が失恋している。こういう奇跡的な瞬間を目撃したいから、僕は映画という表現物を見ているのだと思う。

さて、明日は13日。『バトルスター・ギャラクティカ:レジスタンス』の配信予定日です。スーパー!ドラマTVのHPを見るかぎり、そんな気配はないのだが、大丈夫なんだろうか。
日本テレビ版の『GALACTICA/ギャラクティカ』は、25時59分~に放送時間が安定した様子。毎週見ているけど、エンディング・テーマはきっちり飛ばしてます。番組でなく自分のためにつくった歌なら、MySpaceで十分じゃん。

【追記】スーパー!ドラマTVのページにMOVIEというコーナーが出来ました!

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コメント

「女優の話」つながりで少し。

麻生祐未について。
美人系の人だなぁ、と思っていたのですが、
テレビの「窓際太郎の事件簿」で、度の強そうな眼鏡をかけ吃音のドンくさい、けど仕事はできる役
(おまけに年齢不詳-眼鏡のせいかな-永作博美ほどではないけど)
で「良いなこの人!」と注目するようになりました。

時東ぁみについて。
女優ではないですが、ドラマ「鉄道むすめ」
で第一話(放送時は前後編に分かれてました。)の主演。
アイドルを主演に据えた作品なので期待してませんでしたが、仕事に一生懸命で肩に力が入っていて笑わない・笑うことができない駅員役が妙にしっくりきました。
放送時に後編を見逃したのを理由に暴走してDVDを買ったのですよ。
「足見るおじさんはチカン」事件のときのクールな発言で名前は知っていましたけど、まさかDVD買うとは。困ったもんだ。

ギャラクティカ見続けております。
ワクワクしています。間違いなく本物です。

投稿: DH98 | 2009年2月13日 (金) 21時34分

■DH98様
あ、『鉄道むすめ』ってドラマだったんですね。TSUTSYAの店頭で「何だ、これは?」と興味をひかれていました。
麻生祐未は、どちらかというと80年代の人だったんですよね。いま44歳だそうですが、歳の分だけ幅広い役が出来ることを証明していると思います。
やっぱり、作品が女優を育てるので、作品との出会いでしょうね。あと、食わず嫌いせずに何でも見てみた方がいいんでしょうね……。

『ギャラクティカ』は、主題歌(というか歌ってるヤツ)の悪口ばかり書いていますが、主題歌につられて見ている人もいるので「まあ、いいかな」と思っています。

投稿: 廣田恵介 | 2009年2月13日 (金) 22時55分

>食わず嫌いせずに
廣田さんが地上波テレビのドラマの質を懸念しているのは承知してます。
私事ですが、二年くらい前に約一年間テレビは天気予報とニュースくらいしか見ない時期がありました。
その後、久しぶりにテレビドラマを見て、「質が落ちたんじゃないか」という印象を持ちました。
「窓際太郎」(第一話)での麻生祐未を見たのは98年が最初です。たまたまチャンネルを合わせ見始めたのですが、麻生祐未が出てきてインパクト大でした。この頃はまだ良かったのかもしれません。話の流れは「水戸黄門」でしたけど。

映画などに使える時間は限られているので、自分の選択を信用するしかないかと思います。

投稿: DH98 | 2009年2月14日 (土) 16時27分

「ドラマとカメラ」つながりの話題で少し。

昨日テレビをつけっぱなしでネットをやっていたんですけど、チャンネルを変えるとNHKで「お買い物」(脚本 前田司郎)というドラマがやっていて、劇中でムーンライダーズ「ダイナマイトとクールガイ」が街頭BGMとして流れていました。
結局そのときはドラマが途中からだったもので、スルーしちゃったんですけど。
その後、気になってサイトであらすじを確認したら、「若かりし時カメラ好きだったおじいさん(久米明)がおばあさん(渡辺美佐子)と一緒に、20年ぶりに東京の高級カメラの見本市で〈お買い物〉」する話だったと知り、観とけばなぁと後悔しました。

廣田さんはご覧になりましたか?

投稿: ゆるゆる | 2009年2月15日 (日) 09時16分

■DH98様
山田太一の『ありふれた奇跡』は3話ぐらいまでは見ていたんですけど、やっぱり間に入るCMが嫌いなんですよ。
ドラマが人気だったから映画化、という流れも正直いって気に食わないです(笑)。そのパターンが成功しないと、邦画の隆盛もあり得ないんですけど、生理的にダメです。
ちなみに98年というと『がんばっていきまっしょい』の公開年ですね。00年前後から、邦画の質がグッと上がった気がします。

■ゆるゆる様
残念ながら、未見なんです。でも、サイトを見たら確かに面白そうですね。何だか、市川準……いや、小津安二郎が撮りそうな題材で。
こうやって「見逃した、残念」で終わってしまうところが、僕をドラマから遠ざけている理由でもあると思います。映画だったら、DVD化されるのを待つという選択肢が最初からありますよね。
ムーンライダーズが映像によく使われる理由は、もともとメンバーが映画好きであることも関連してるのかな、と思います。

投稿: 廣田恵介 | 2009年2月15日 (日) 18時05分

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