■池脇、中嶋、よつばと!等■
本日深夜、第二話の地上波放映を迎える『ギャラクティカ』(26時14分~)、第一話は午前2時半という深い時間帯にしては、良好な視聴率だったという。ネットでも「見たけど、面白くなかった」という声が聞かれるようになり、僕はそれはいいことだと感じている。少なくとも、一部のマニアだけが大絶賛、という閉塞状況からは抜け出したわけだから。
最近、ケーブルで見たのは池脇千鶴をめぐる旅、ということで『金髪の草原』。市川準監督の『大阪物語』で池脇に一目ぼれした(はずの)犬童一心監督の愛情目線たっぷり。この3年後に『ジョゼと虎と魚たち』でばっさり脱がせたことを考えると、女優として池脇を育てた、もっと言うと「女にした」のは犬童監督に違いない。「こいつめ、こいつめ!」って感じだ。
もう一本、『あさってDANCE』で中嶋朋子に惚れた人間として押さえておかねばならない倉本聰監督『時計 Adiue I 'Hiver』。「少女が、女へと変わるまでの脚線美をカメラに収めたい」という、すがすがしいまでのスケベ根性を抱いた映画監督が物語の牽引役だ。にもかかわらず、倉本聰は中嶋朋子を女にしたくなかったのか、登場シーン自体が驚くほど少ない。クライマックスで、中嶋がアイススケートの競技で転倒してしまうのが象徴的だ。この映画で、中嶋は女になる機会を奪われてしまったわけだ。
果たして、5年後に制作された『あさってDANCE』で中嶋朋子は『北の国から』のイメージをようやく脱却する。監督の磯村一路は、7年後の『がんばっていきまっしょい』でも中嶋を起用していたので、「うまいことやりやがったなあ」と舌打ちしてしまう。監督と女優とは、結婚よりも恋愛よりも甘美な関係を結ぶことがある。傑作が生まれるのは、そういう関係が生じた瞬間だ。
(中嶋主演の『あさってDANCE』はDVD化されていないので要注意)
中野ブロードウェイをさまよっていたら、『よつばと!』が全巻、揃ってしまった。
この漫画を「オタクの夢想するユートピア」と捉える人もいるが、そう言われるのも分からないでもない。隣の家に美人姉妹が住んでいる状態をユートピアと言わずして何とする。僕は、長女のあさぎの人の悪さが気に入っている。遊び盛りの大学生らしく、ユートピアの外へ繋がるチャンネルを持ったキャラクターだ。漫画のコマの外で何やってるか分かりゃしない、そういう「嫌なキャラクター」を漏らさず描いているところに、作者の器の大きさを感じる。他に好きなのは、写実的な背景。現実が好きでなくては、ここまで描けない。その緻密な背景、世界の中で、よつばという主人公だけが極端に線が少なく、まるでネガのように反転して見える。いわば、よつばは世界を観察する視線そのものだ。
よつばは、物語の中を流れる時間から、わすがに剥離している。いわば、彼岸、向こう岸から世界に触れている。彼岸から振り返ってみれば、この世は途方もなく美しい。これは、その美しさについての漫画である。
こうした作品が、「電撃大王」というオタク文化の炉心から生まれてきたのには、何らか切実な理由があるような気がしている。すでに多くの人がこの作品を論じているので、ちょっと読んでみるか。
さて、本日は押井守演出の舞台『鉄人28号』を観劇予定。あと、時間があったら『クローンは故郷をめざす』も観ておきたい。永作博美の名前が三番目に出てるんだから、これは押さえておかないと。ヴェンダースがプロデューサーなんだ。へー。話はグレッグ・イーガンみたいな感じだな。
| 固定リンク
コメント