■ティンカー・ベル・コンプレックス■
元旦いきなり、『ティンカー・ベル』を観に行ってきた。
少女の形をしていながら、人ならざるもの、妖精。その秘められた暮らしを描いているはずなのだが、映画は極彩色の遊園地のようで、ロマンもへったくれもない。何しろ、てんとう虫をベルトコンベアに乗せて、背中の模様を(天然素材とはいえ)ペンキで塗っているような世界なのだ……かなわんよな。
単にティンカー・ベルのデザインが好きだという人は、ディズニー・ファンでなくとも、かなり多い気がする。コレクターの世界では、一大ジャンルを形成していて、僕などは最近になってフィギュアか何かを見つけて「ちょっといいな」と思った程度のにわかファンに過ぎない。
だから、この映画の3DCG製ティンカー・ベルも造形的にはけっこう可愛いいんじゃないの?程度に思っていたのだが、翌日、どうしても違和感がぬぐいきれず、オリジナルの『ピーターパン』を借りてきた。
ティンカー・ベルの担当アニメーターは、ナイン・オールドメンの一人、マーク・デイビスで、デザインも彼によるものだという。どのカットも、素晴らしく愛らしい。
特に前髪の揺れ方が効果的。3DCGでは、前髪はガッチリと固められていて、揺れようがない。『ピーターパン』のティンクは、前髪を自分の手でパッとはらったりする。小さな前髪の動きが、このシンプルなデザインの中で妙になまめかしく印象に残る。
全身がグロー効果で発光しているばかりか、怒ると熱を持つのも面白い。自分の体温で葉っぱを焼いてしまったりする(このカットは、細部にいたるまでセンス・オブ・ワンダーに溢れている)。
しかも、彼女はマスコットでもコメディリリーフでもない。飽くまでもピーターパンが好きでつきまとったり、嫉妬のあまり裏切ったり、盛んに「女」を振りまいてるところが、またエロチック。なぜか、ティンクの愛くるしい芝居を見ていたら、涙が出てきた。よく出来たSFX映像を見て「すげぇなあ」と感動する、あの感じに近い。
特に葉っぱの陰に隠れて、(彼女の体が光っているため)ティンクがシルエットになる前後で泣いた。何という官能的な演出アイデアと撮影テクニック。これは、是非とも原画で見てみたい(残っていれば、の話だが)。ティンカー・ベルの関連本は、映画公開に合わせて狂ったように沢山でているけど、原画集とかそういう方向性の本は皆無。
作画参考用に、女優のマーガレット・ケリーがティンクの芝居を演じた写真は、5千円前後で普通に売っているけど……これは代替物に過ぎない気がする。というか、サインは別に要らないし。ディズニーの研究本なんて、目がくらむほど膨大に出版されてるんだけど、まずは一昨年のディズニーアート展の図録でも探してみるか。
ミッキーマウスはどうでもいい、ティンカー・ベルだけでいいんだよ。年頭からこんなんで、今年の俺はどうなってしまうのでしょうか。
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コメント
ディズニーアート展、行かれたんですか?
図録持ってますけど、マーク・ディヴィスの6ページ中、ティンクは1ページだけ。
めぼしいカットはないんですよね……
投稿: シモレンジャー7 | 2009年1月 3日 (土) 02時05分
■シモレンジャー7様
ディズニーなんて、つい昨日までほとんど興味なかったですよ。「基礎教養として見とけばいいだろう」程度で。もちろん、ディズニーアート展も行ってません。
それなのに、古本通販でディズニー関連本を二冊、買いました。
>マーク・ディヴィスの6ページ中、ティンクは1ページだけ。
その1ページだけ、カラーコピーさせてください。喉から手が出るほど欲しい。
投稿: 廣田恵介 | 2009年1月 3日 (土) 02時33分
どうぞどうぞ。汚さないでくださいね。汚したら6万5千円のティンクのフィギュア買ってくれればいいですけど。
いま見返していたら、眠りの森の美女のアートワークが非常に色っぽく官能的で、お好みかも知れません。同じくマークの作画です。
投稿: シモレンジャー7 | 2009年1月 3日 (土) 03時39分
■シモレンジャー7様
マーク・デイビスの担当パートだけ、意識的に観てみようかと思ってます。
>6万5千円のティンクのフィギュア
ちょっと調べたら、それどころか物凄いいっぱいアイテムが発売されてるんですよ。一点30万円とか当たり前の世界で。
投稿: 廣田恵介 | 2009年1月 3日 (土) 13時48分
記事を読んで、こちらも観て見たくなりました。
3DCGデファンタジーというとかなりのハイテクニックということになりますね。
CGworldという雑誌を毎月講読しているのですがそこいらへんで詳細な情報が得れるような気がします。
ピーターパン映画は無数にありますが
どれも、それぞれの視点で作られていて
世界中のクリエイターがピーターパンという作品に愛情を持っている気がします
それだけ幸運な戯曲なのでしょう。
映画 シネマ がシンプルな娯楽表現なのに何故こんなに繁栄しているのでしょう
ふと考えた
DVDブルーレイなど新メディアの登場にもかかわらず劇場で映画をみるのがひとつのステイタスとなっている点
多分将来とか見据えて
社会というものがいくら変貌してもシンプルな感覚というものは大切に残るそんな感じ予感がします
それにしても 新ギャラクティカが観たい
DVDボックスという手もあるが…予算が…
地球が静止する日は期待はずれだったし…
投稿: hideaki | 2009年1月 3日 (土) 22時18分
■hideaki様
う~ん……『ティンカー・ベル』は実際にCGをいじられている方から見ると、さらに厳しい評価が下りそうな気が(笑)。逆に、思わぬ見どころもあるかも知れませんし、判断が難しいですね。
>社会というものがいくら変貌してもシンプルな感覚というものは
>大切に残るそんな感じ予感がします
それは同感ですね。
『ピーターパン』など、「僕だったら、こういう感じにつくるなあ」などと想像(妄想)が広がってしまいます。
元になった戯曲も、ディズニー版とは違うそうですし。
>それにしても 新ギャラクティカが観たい
6日からの地上波放映が見られなければ、レンタルという手がありますよ!
投稿: 廣田恵介 | 2009年1月 3日 (土) 22時47分