■思い出の瞳■
『劇場版 空の境界 第六章/忘却録音』 パンフレット
例によって、メイキングページを構成・執筆しました。
今回は、アバンタイトルのえらくキャッチーなカット。この映画を観に来るのは「アニメ映画のお客さん」以上に、「空の境界のファン」だから、彼らの愛するキャラをどう動かしているのかを、まず見せるべきではないか、と思う。そういう意味で今回はバッチリだったのでは(地味スゴいカットに触れるのも大事なことなんだけど)。
映画も、金曜日に試写で観てきました。第一章を観たときの、あの「なんか、ヤバいものを見てしまった」という加害者意識とは逆方向に、今回はひたすら綺麗。妖精のデザインがキモ可愛くて、クリア成形の立体物が欲しい(もちろんリアルスケールで)。
『パンズ・ラビリンス』の妖精なんかとも、また違うテイストなんだよな。たぶん、欧米人の発想からは出てこない形だと思う。あと、ラストバトルが綺麗でエロくてグーだった。
さて、話は変わって、ブックオフでは買い取り不可の8センチCDシングル。Amazonでは1円で買えたりするので、デイト・オブ・バースの『思い出の瞳』を注文。
やっぱり、8センチCDはPCで聴くには不便だ。しかも、自分の記憶とは違う歌い方だ。ジャケを見ると、読売テレビ・日本テレビ系全国ネット「悪女(わる)」テーマソングと書いてある。ああ、その時に録りなおしたのね。俺が欲しかったのは、アニメ『扉を開けて』の主題歌として使われてたバージョンなんだけど。
『扉を開けて』という映画は、キティフィルムがアニメをたくさん作っていた頃、1986年の公開の……って、僕はいまだ観たことない(笑)。キティフィルムは『うる星やつら』も製作していて、キティレコード所属のテクノポップ・バンド「ヴァージンVS」の曲が『うる星』劇中で使われた時は、狂喜したものだった。
一方、何でも知識として蓄えておかないと気がすまない当時のオタクの習性で、『うる星』ファンたちは「あの曲、何?」とキティに問い合わせた。当初は、公式ファンクラブ会報誌「うる星くらぶ」にヴァージンVSのアルバムが紹介された程度だった。だが間もなく、劇中で使われたVSの名曲『コズミック・サイクラー』は『星空サイクリング』として歌詞を変えられ、『うる星』のエンディング・テーマになってしまった。
複雑な気持ちだった。アニメとは関係なく愛聴していたバンドの曲が、当時いちばん好きだったアニメの副主題歌になった。だけど、嬉しくない。自分の世界が、ギュッと狭められたような嫌な気分。
『うる星』初の劇場映画『オンリー・ユー』でも、『星空サイクリング』は無理やり挿入され、そのためにワンシーン丸ごと削られてしまった(後からフィルムコミックを読んで知った)。そんなこと、して欲しくなかったのに。それが1983年ごろか。
デイト・オブ・バース『思い出の瞳』に話を戻すと、『扉を開けて』の公開が1986年。確かTVスポットを見て、とっさに主題歌のタイトルとアーティスト名をメモったんだ。シングルを探し回ったよ。狂ったように、毎日。
なかなか見つからないと思っていたら、12インチシングルで出ていた。ジャケットは、『扉を開けて』とは全く関係ない犬のイラストで、えらく凝った手法で描かれていた。見つけた時は飛び跳ねて喜んだよ。それこそ「擦り切れるまで聴いた」ってやつですよ。
当時、夜中にやってたPVも雰囲気が良かった。Youtubeにあったよ。
ようやく探し当てた12インチシングルに入っていたのは、このバージョンだった。ファーストアルバムに入ってたのは、また別テイクだったような……。
ようは、あの頃に所有していた「モノ」を取り返すのは、なかなか難しいということですよ。こういう時、「データ」の海はありがたいな、と思う。僕らは、明らかに二つの時代を生きてしまっている。モノの時代とデータの時代。どっちも大事だ。
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