■深夜の密会■
昨夜のことらしい。
僕も寄稿している同人誌の編集長が、とあるモデラーと電話で話しているうち、20年前つくられたガレージキットを手渡しすることになった。時間が折り合わないので「今から届けましょう」という話になり、編集長の彼は、極寒の深夜の国道をバイクで飛ばしたそうである。深夜のファミレスで、ガレージキットや古いアニメの話に花を咲かせたという。恋人に会いに行くより、よほど素敵な夜だ。
こちらは酷い二日酔いだったので、録画してあった映画を見ながら、うたた寝してしまう。目が覚めたら、犬童一心監督『二人が喋ってる。』の冒頭あたり。しゃべくり映画とでも呼ぶべき、セリフの掛け合いオンリーの映画。舞台の上で、大阪の街中で、えんえんと漫才が続く。主役二人のしゃべくりは加速していき、とうとう映画の半ばを過ぎたあたりで、ミュージカルになってしまう。
深夜に「思いがけず」映画と出会う、という経験はまた格別で、リュック・ベッソン『サブウェイ』は夜中にテレビをつけたら、たまたま放映されていた。タイトルも分からず、ただ映像のカッコよさに呆然と見とれた。ところが、タイトルを知ってからレンタルで見直すと、たいして面白くない。眠りという生理のはざまに、何の作為も目的もなく忍び込んでくる――映画との密会は、一度きりだから甘美なのかも知れない。
続けて、田中麗奈を見るために録ってあった『暗いところで待ち合わせ』。天願大介監督のデビュー作『妹と油揚』は、非常にエロチックな作風だったが、この映画は淡白だ。田中麗奈は真っ白なカンバスのような女優で、映画の無色なトーンそのままに、朴訥と喋り、表情は薄い。『夕凪の街 桜の国』のベタベタな暑苦しい演技とは、対極的だ。依り代のような女優で、監督の世界観をストレートに体現してしまうような怖さがある。ちょっと追求してみようかな、と思いはじめている。
あとはアニマックスでアニメ鑑賞。出口の見えないRPGのようになってきた『黒塚』、どこまでも中学生の妄想世界に没入させてくれる『鉄のラインバレル』など。『ザブングル』はホッター老人の回で、ウォーカーマシン「センドビート・タイプ」のデザインに唸る。どの角度、どのサイズでフレームに入れても立体感の出る、奇跡的なデザインだと思う。
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