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2008年10月17日 (金)

■大林宣彦がポニョった■

二日酔いなのだが、無理して『その日のまえに』(主演:永作博美)の試写へ。
企画としては、『セカチュー』以降、邦画の一ジャンルとなった闘病感涙映画。ところが、老境081016_16370001_2の大林宣彦が撮ると、こんなにも怪作になるのか、と唖然としつつも泣いた。泣ければいい映画なのかどうかは、まだ僕には分からない。でも、すげぇな、この映画……いわば、大林版『崖の上のポニョ』ですよ。狂ってるけど、感動的。

大林映画でいうと、『HOUSE』に近い。いや、もっと言うなら『いつか見たドラキュラ』とか、実験映画時代の雰囲気がある。編集も例によって大林本人が行っており、そのシャープさたるや、71歳になっても衰えず。セリフのテンポ感、2時間の間ずっと鳴りやまない音楽……ミュージカルのような祝祭的な気分。でも、きっちり泣かせる。そこが凄い。
この映画、時制がバラバラで、「現在」がないんだよ。回想シーンに入ったら、もう回想シーンが「現在」であって、ひとつのカットの中に過去と現在が入り混じっていたりする。回想が、また別の回想に連鎖したりする。夢も妄想も、当価値に、ほぼ何の説明もなく出てくる。でも、支離滅裂に終わらず、伏線はすべて回収している。こんな荒業が出来るのは、キャリアの長い大林宣彦以外にいない。

あと、何がいいって、永作博美と南原清隆の夫婦が、付き合いはじめた学生みたいな雰囲気なんだよ。生活の辛さとか、そういうのが一切ないところがいい。
かつて、大林映画の予告編で「映像の吟遊詩人」というフレーズが映ると、映画館は苦笑と失笑に包まれたものだった。一時期、巨匠みたいに祭り上げられたのにも違和感があった。でも、今回は自ら「71歳の新人」と宣言し、かなりの好き勝手をやっている。やっぱり、これは大林の『ポニョ』なんだ。
永作博美の話がほとんど出来なかったけど……『人のセックスを笑うな』は、軽いお遊びだったんじゃないかと思うぐらい、愛にあふれた芝居を見せてくれた。
これが大林監督の遺作だったら、かなり美しいと思うんだけど……まだ、お元気ですね(笑)。

あ、グラビアポエム詩人は、コツコツと更新してるので一度は見てください。

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