■ヨーコ、ロズリン、ドリル■
昨夜は『天元突破グレンラガン 紅蓮篇』の試写会。正直、僕は「テレビが面白かったから、それで十分じゃん」派なんだけど、意外やクライマックスが熱かった。ちょっと背中を押された。その瞬間に、単なるダイジェスト映画を越えたんだよね。それは、僕が誰かに声をかけて欲しかったから響いたわけだよね。映画と個人っていうのは、そうやって「関係」を築いていく。
で、個人的にはヨーコのエロさというか肉感(まあ、どっちも同じか……)が、カミナの死で変化するのが面白かった。もちろん狙いもあったんだろうけど、カミナの死後、ヨーコの体は棒みたいに見える。カミナ生前は、あんなにムチムチだったのに。「なんだ、面白くないなぁ」と思っていると、シモンがカミナの死を受け入れて復活したのと時を同じくして、戦闘中のヨーコのブラジャーが外れる(笑)。
つまり、男たちの汗臭さによってヨーコの女っぷりが上がる。いや、気のせいかも知れないけど、現実でもそういうことはあるじゃないですか。肉感とかエロスとかいうのは、関係性で成立してるんだな、と。
以上のようなことを書くと、ちょっと前のエントリー中の「ラムちゃんのブラがとれたシーンで、嫌悪感を感じた」体験と矛盾する。だけど、ようは人間って抵抗するんですよ。深層心理でひっかかる対象をこそ、攻撃したくなる。あるいは、避けたくなる。
だから、激しく拒絶反応をひき起こしたものは、時間が経ってからでもいいから、じっくり考え直してみると、意外に自分と向き合う経験になる。
すると、先日、『マクロスF』の大統領暗殺→レオン三島、代理に就任で「おいおい、それはあまりに杜撰だろう?」と俺がリアクションした理由も分かってくる。『ギャラクティカ』です。
『ギャラクティカ』のローラ・ロズリン大統領は、最初はただの教育庁長官で、主人公格のアダマ艦長に「たかが学校教師」と呼ばれ、政界に顔の広いバルター博士に「えーと、どなたでしたっけ?」と忘れられてしまうような、死期の近いおばあちゃんです。
ところが、人類の宿敵サイロンの全面攻撃で大統領以下の閣僚がすべて死んだことが分かってくると、まず録音されていた緊急放送が流れる。それを聞いたロズリンは、たまたま乗っていた旅客機(というか旅客宇宙船)のパイロットに暗号コードを打ってもらい、一通の電文を受け取る。「政治は苦手なのに」と疲れたように苦笑するロズリン。そして、その旅客機の中で簡易の大統領就任式が行われる。電文は、「全閣僚が死んだから、あなたに大統領の継承資格が回ってきましたよ」という内容だったわけだ。
まず、ここまでがロズリン大統領の誕生。その時、人類は5万人しか生き残っていなかった。サイロンは執拗に追ってくる。まったく希望のないロズリン政権の発足。
さて、本題はここからで、第3話にトム・ザレックというテロリストが登場する。囚人船をハイジャックしたザレックは、「ロズリン政権を解散し、生き残った5万人で大統領を選びなおせ」と要求する。ロズリン大統領は民衆に選出されたわけではないからだ。しかし、テロリストの要求は呑めないので、ギャラクティカは海兵隊を囚人船へ派遣する。普通なら、ザレックを撃ち殺して万事解決ですよ。
ところが、交渉にあたっていたアポロ大尉はザレックの命を助け、選挙を行うことを約束する。アポロ大尉はロズリン大統領の軍事顧問だけど、ザレックの言う事は、もっともじゃありませんか、と。そして、七ヵ月後の大統領選で、ロズリン政権の是非が問われることになる(それは、シーズン2で描かれます)。ものすごく周到なの。薄っぺらな悪党は出てこない。
『マクロスF』も同じようにしろ、と言うつもりは、もちろんない。
ようは、『ギャラクティカ』を見ちまった俺が悪いんですよ。「大統領暗殺」でスイッチが入った。中学生でも理解は出来るはずだから『ギャラクティカ』も見て欲しいな、と。政治も倫理も崩壊した「今」を見据えるには、ピッタリですよ、と。
何度も繰り返してきたことだけど、フィクションと現実は無関係ではいられないと思う。今の『マクロスF』は、「だって、お話はお話じゃん」と言っているように、僕には見える。
悲しいことに、回答はいつも自分が持っている。いろいろな作品を見たり、人と話しているうちに、たったひとつの答えに気がついてしまう。孤独だよ、これは。誰も支持なんかしてくれないよ。さっきのラムちゃんとヨーコの話もそうだし、矛盾の中に真実が見つかることだってある。それは、認めなくてはならないの。そうしないと、自分が完成しないの。……ああ、そういうことを思っているから、昨夜の『グレンラガン』は胸に突き刺さってきたんだ。納得。
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