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2008年8月27日 (水)

■僕のギャラクティカ袋■

コクピットイズム Vol.8 30日発売予定
Tps0808
●スーパーロボット操縦思想の系譜
全12ページにわたり、『機動戦士ガンダム』『機動戦士Zガンダム』『超時空要塞マクロス』『装甲騎兵ボトムズ』『無敵超人ザンボット3』『勇者ライディーン』『新世紀エヴァンゲリオン』『メガゾーン23』『トップをねらえ!』のコクピット、操縦方法を解説。あとはコラムで『戦闘メカ ザブングル』なども。
なんと、前代未聞のコクピット専門ムックですよ。こういう「ちょっとアニメを載せてみたい」という依頼が来たとき、たいてい僕は肩の力をほぐして、「軽くて浅くて、ぬる~い感じがいいんでしょ? ハイハイ」ってスタンスを取るんだけど、『コクピットイズム』は編集さんがガチで熱い人だった。各作品につけられたリードが知的で熱い。『ザンボット3』のリードなんて「ただ戦うだけでは許されない!」ですからね。そのまま番組のキャッチになりそうな勢い。
この特集の完成度は、僕の力量とは関係ない。本はやっぱり、編集者で決まるんだ。
ライターに与えられる作戦内容は、戦線ごとに違う。任務を与える指揮官だって、毎回違うのだ。初めて組む指揮官と呼吸を合わせられるかどうか。それが出来るのがプロであって、それ以外にプロの条件なんてない。

さて、なかなか日本ではブレイクしない『ギャラクティカ』のミニ特集を書いている。
080827_03410001誰に薦めても、その人にはその人なりのカテゴライズがあって、「ギャラクティカ? またアメリカのドラマですか?」と米ドラマ袋に入れる人もいれば、「ギャラクティカ? なんかSFですか?」とSF袋に入れてしまう人もいる。それはしょうがないんだけど、俺は『ギャラクティカ』序章を見た日に「ギャラクティカ袋」をつくった。翌日、『ユナイテッド93』を見て、それを「ギャラクティカ袋」の中に入れた。社会性の強いフィクションは、何でも「ギャラクティカ袋」に入り得る。
物事をギャラクティカ的視線で見るようになったと言ってもいい。そうすると、『スター・ウォーズ』なんてのは、もう失格なわけだ(笑)。偉大なる引きこもり妄想ヘタレ監督だった頃のジョージ・ルーカスは魅力的だが、もう僕の人生には必要ない。
仕事に向かって気をひきしめたい時、僕は『ギャラクティカ』を見る。たちまち自信と責任感が呼び覚まされる。それが僕と『ギャラクティカ』の関係だ。

シーズン2には、『エヴァンゲリオン』によく似たシーンがある。その場面は『エヴァ』を参考にしたのではなく、逆に『エヴァ』が『ギャラクティカ』のために用意したように、僕には見える。「ふざけんな、後から『ギャラクティカ』がパクったんだろ」と言われようとも、僕の視点からはそう見えてしまう。まるで、重たい巨石を下から積み上げてピラミッドが築かれたように、さまざまな文化が集積に集積を重ね、ある時代、ある作品が頂点に到達してしまう……。そういう現象が、あり得るんじゃないだろうか。
たった5万人になった人類が、異文化と戦ったり交じり合ったりしながら死にもの狂いで生き延びる話――『ギャラクティカ』のあらすじを簡単に言うと、そうなる――は、頂点に立つのにふさわしい物語と、僕には思える。

ここまで書いて気がついたけど、『ギャラクティカ』の魅力を説明しづらいというより、説明する俺に問題があるんだな……。
余談だが、若き日のジョージ・ルーカスは僕の中では、「ヘンリー・ダーガー袋」に入っている。快楽至上主義の誇大妄想クリエーターという点で、ルーカスとダーガーはかなり近いと思う。

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コメント

コクピット専門誌ですか~
すごい時代になったもんですね~w
読んでみたいです~

ロボットアニメのコクピットって、
わりと適当にデザインされてるので、
操縦方法は、知りたいですよねw
特にザブングルの「ハンドルで操縦」は、
どうやってるのかw

現実的に考えると、エヴァとガンバスター以外は、
実用的でない気がしますけどね…

ギャラクティカは、子供の頃、
映画だけ観た事あります
タイトルが「宇宙空母」ギャラクティカでした

投稿: たーしぃ | 2008年8月27日 (水) 10時09分

■たーしぃ様
確かにロボットアニメのコクピットはアバウトなのですが、専門誌ならではの切り口と読者に対するインパクトを併せ持った、いい特集になっていると思います。
ぜひ、お手にとってみてください。

ギャラクティカは、昔の映画はまったく忘れてしまった方がいいです。

投稿: 廣田恵介 | 2008年8月27日 (水) 15時05分

ギャラクティカは20数年前の旧作は駄作の感がありました。 スターウォーズ帝国の逆襲のためにわざわざ用意されていたあらすじが何らかの理由で盗用されたという汚点だけか゛残った子供だましの作品と思いました。
ただ、リメイクされたギャラクティカは自分はまだ未見なのですが、見た友人の話だと、旧作の設定をより練り上げてより重厚で現代にマッチした見ごたえのあるテレビシリーズとのことでした。

映画なり、ドラマなりのSFも進化していかなければなりません、ザンボットあたりからのロボアニメはらしさを前提に作っていますから、設定自体もかなり情報量が多くなっているはずです、すなわち主人公の乗るロボットのコクピットも設定的にはかなりの情報量として存在している筈なのでそういった企画も成立して当然だと思います。
ふと、思い出したのは。まだ小学校の低学年ぐらいの頃 講談社のテレビマガジンという雑誌でマジンガーZの操縦席とその中の装置とそのロボットの操縦法のテストという企画が中袋とじで掲載されていて、当時の幼かった僕には難解な内容だったのですが、それにもかかわらず熱く胸躍らせたのを覚えています。
ああいったたぐいのコンテンツはとにかく複雑化したとしても大人の鑑賞レベルにしたほうが、それだからといっても幼い子供も充分魅力に感じて付いてきてくれるものだと思います。
世の中には、ああいっものはフィクション出し絵空事だから大真面目に扱うのはどうかしているとか言う理解の無い類の人も居ますが。
哲学的な領域にまで踏み込める大切な文化だと思ってしまいます。その文化を突き詰めて取り扱うことは何より建設的でストイックで素敵です。
日本の位置づけとしてはそういったものの産業のウェイトはかなり重いはずです

投稿: hideaki | 2008年8月27日 (水) 23時36分

■hideaki様
久々の書き込み、ありがとうございます。
お気持ちは、よく分かります。かつては、幼少向きのフィクションであっても、内部図解はしっかり描かれていました。例えば、『ゲッターロボ』の合体時、数メートルの誤差でも事故が生じる……と書かれていたのです、なんと幼年向けの「テレビマガジン」に(笑)。しかも、テキストに似合う深刻なイラストが載っていましたから、編集した大人たちも本気だったのでしょう。シビレましたね。
今は「プリスクールだから、この程度でよい」といった割り切りを感じますね。あるいは「ハイティーンに受けるのはコレで十分だ」といった覚めた目線を。

思いつきで言いますが、世界史の授業で『ギャラクティカ』を見せる方が、よっぽど分かりやすい気がしますね。なぜ民族間で紛争が起きるのか、なぜ繰り返し中国がチベットに行っているような虐殺が起きるのか。なぜ世界は平然としていられるのか。『ギャラクティカ』の人々は、憎しみのあまり、敵兵への拷問もいといません。正視にたえかねますが、見なくてはならないのです。
ぜひ、新作『ギャラクティカ』をご覧いただきたく思います。何か違うな……と思われたら、また感想をください。

投稿: 廣田恵介 | 2008年8月28日 (木) 01時10分

廣田さん、はじめまして。

先程、『ギャラクティカ』第一シーズンを観終えたところです。
老若・男女・階級・種の格差を超えて、登場人物たちが愛憎を重ね、絆を結んだり切られたりするのを繰り返す「人類」(生きるものすべて)スケールの物語にただ圧倒されました。
「人類」スケールの物語が、日本のエンタメで描かれることって、富野作品以外にぱっと思いつくものがないですね。
最近は、「世代」間の対立の物語を描くだけで、観客や作り手は満足しているのかもしれない。
『ギャラクティカ』を観ると、『マクロスF』や『ヱヴァ』が物語で発揮すべきだった「無茶」を、あんなアダルトなメンツで毎回仕出かしている。その「無茶」が、「人類」スケールの物語をつくり、現実の「人類」の世界に対峙しながら、問いや希望を投げかける。
血肉になるような物語を読みたい・作りたいのなら、『ギャラクティカ』から「人類」スケールの物語の想像力を受け取るべきでしょう。

……と熱く書き込んでしまいましたが、廣田さんのブログを見なければ『ギャラクティカ』は観ていない可能性が大でした。感謝!

投稿: ゆるゆる | 2008年8月28日 (木) 02時35分

■ゆるゆる様
はじめまして。書き込み、ありがとうございます。あまりにも圧倒的で、説明しがたいのが『ギャラクティカ』です。しかし、見事に語ってくださいましたね。願ってもないことです。

>「人類」スケールの物語が、日本のエンタメで描かれること

僕も、近いものを探すと『イデオン』になってしまうのです。『ガンダム』にも、もちろん似ていますね。『イデオン』を絶賛していた方々が、『ギャラクティカ 』について口をつくんでいる理由が、ちょっとわかりません。凌駕していると思うのですが、誰もそうは言いませんね。

>『ギャラクティカ』を観ると、『マクロスF』や『ヱヴァ』が物語で発揮すべきだった「無茶」を、あんなアダルトなメンツで毎回仕出かしている。

もうね……それを言うのは酷ですよ(笑)。言っては悪いけど、比べ物になりません。
アニメに限らず、日本のドラマって何なんだろう?と思ってしまいます。完璧に、骨抜きにされてますよね。まったく見る必要はないですよ。
人類の堕落も享楽も、歓喜も絶望も疑念も希望も、すべて! 一切合財が『ギャラクティカ』の中に全て入っています。
教科書ですよ、これは。

もうね。「SFXがすごい」とか軽~く言ってる著名人を見てると、暗澹たる気持ちになるんですよ。

投稿: 廣田恵介 | 2008年8月28日 (木) 04時51分

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