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2008年8月30日 (土)

■大人はわかってくれない■

新宿西口地下で待ち合わせたら、「崖の上のポニョ展」やってた。080827_19180001
080827_19220001_4 「展」というか、広場の支柱に場面写がぺたぺた貼ってあるだけ。でも、これがなかなか綺麗。うっとり見とれてしまう41歳。ラジオ『ジブリ汗まみれ』で、押井守監督が「映画の体を成していない」と言っていたけど、それは映画の形式・様式にこだわる押井さんの発言だから、まだ耳を傾ける価値があるのであってね。
「形式も様式も知ったことか」という作品が『ポニョ』だと思うので、押井さんもずいぶんと的外れな指摘をする(もちろん押井さんの発言だから面白いんだけど)。『ポニョ』は映画じゃないんだよ。たまたま映画館で上映されている、「ポニョという表現」でしかない。みんな、「映画」という枠組みは壊れない、壊しちゃいけないと思っている。でも、人間、何をするか分からない。何が起きるか分からないから、生きていく価値もあるんだよ。

そうそう、『マクロスF』。あのハッピーだった第12話以降、忍耐に忍耐を重ねて見ている。他でもない河森作品、お世話になっているサテライト作品だから、最後まで付き合うけど……それは義理ですね。
大統領を銃で撃って、その場に死体を放置、誰も何の調査もせず、犯人が「私が全権を掌握した」って、それが通用するなら、もう何でもどうとでもなる。この番組の対象が中学生で、俺が中学生だったら「バカにすんな」って怒ってるよ。そんなもん、シナリオ(を尺に合わせて進行させるため)の都合でしかないじゃないか。犯人が「大統領はバジュラに殺された」とウソを言っても、死体を調べれば弾丸が出てくるはずでしょ。どうして誰も調査しないんだろう。大人げないとは思うんだけど、声優さんやCGスタッフの頑張りに対して、この杜撰さはないぜ。

そもそも、少年少女を犠牲にしても構わない、と考える大人を、少年少女向けのアニメに出したらイカンでしょ。そんな大人は、アニメに出す前に、作り手の中で殺しておいて欲しい。アニメに出してから悪さをさせて、何か言った気にならないで欲しい。「大人は堕落してるけど、若いキミたちは頑張れるよね」って、大人が言ったらダメなんです。
スターになるのは厳しいけど、悪党になるのは楽チンな世界を描いて何になるんだろう。
この作品には参加してないけど、板野一郎さんは『メガゾーン23』に参加した時、「大人は汚い」と言いながら絵を描いていたそうです。それを本気で言える人がつくったから、あの作品からはパッションが失われない。永遠に若い。

若者より、大人の描き方のほうが難しいんだな、と思う。大人に理想を託せるのか、それとも諦めているのか、露骨に出てしまうから。若いヤツに理想を押し付けるのは、一番ラクなんだ。「お前らより、俺たちオッサンの方がすごいよ」と言えなくなったら、大人が生きてる意味なんてないよ。

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コメント

お盆休みにポニョ見ようと思いながら行けなかった…
このブログを見る度にどんな作品なんだ?と期待ばかり大きくなりますw

>板野一郎さんは『メガゾーン23』に参加した時、
板野さんはロックでしたからね。
そのロック魂をそのまま作品にぶつけたのがメガゾーン23という作品だったと思います。

アニメのジャンルで『ロック」があったら間違いなくメガゾーン23PARTIIがそうでしょう。

PART1はPOPSかな。

投稿: ギムレット | 2008年8月31日 (日) 01時08分

■ギムレット様
『ポニョ』は、見る人を選ぶ作品です。とにかく、ありとあらゆる理屈をつけて全力で否定している人も多いので、そちらの意見(?)もお忘れなく。

>アニメのジャンルで『ロック」があったら
>間違いなくメガゾーン23PARTIIがそうでしょう。

僕にとっては、無印メガゾーンもロックですよ。あのぶっちぎりのラスト。確かにセンチメンタルではあるんですけど、文句なしにカッコいい。
PARTⅡは、話は続いてるのに絵がああなっちゃった点が凄すぎる。今さらですけど、やりすぎです、PARTⅡは(笑)。

どちらの作品も、板野さんという人がいなければ出来なかったんです。「昔の作品より、次の最新作を見て欲しいんですよ!」とシャウトするところがロック魂健在ですね。火傷しそうな人ですよ。

投稿: 廣田恵介 | 2008年8月31日 (日) 01時29分

マクロスF ダークなままですねぇ。
で、
廣田さんの憤りはわかります。
話の杜撰な点も同意です。
でも、私は義理で無く最終話まで見たいと思っています。
期待と危惧と半々で。

ちなみに、第21話の終わりの部分を見て、映画版の「漂流教室」のラストを想起しました。

投稿: DH98 | 2008年8月31日 (日) 21時58分

初めて投稿させて頂きます。
毎回楽しく、時には考えさせられながら、
拝見させて頂くだけの者です。

私は『アクエリオン』で完全にノックアウトし、
『マクロスF』は放送前から楽しみで、
その気持ちは今も変わりません。

ただ、廣田さんが仰るように
今回は「ダーク」な部分が多くて
観るのがちょっとしんどいナ…
が正直な感想です。
もう少しあっけらかんとした空気が、
河森監督の味なのではないかと思うのですが。
その辺は新参者の私が語るのは、
大変おこがましい事ですが、
私は『アクエリオン』で感じた明るさが、
ツボだったので…。

後、21話は少し雑さも感じました。
製作側の大変さも分かるのですが、
ほんの少しだけ踏み込んだ
丁寧な演出が欲しかった。
最後のランカの別れのシーンが、本当に勿体無い。
あの挿入歌、作画、雰囲気は、今迄の放送で
ダントツに美しい場面だったと思うのですが…。

以前のコメントであった「河森監督ならこの嫌な雰囲気を
ふっ飛ばす『何か』を仕掛けてくれている」
という期待を私も持っています。
後残りも少ない状況ですが、
そうした期待をもつ者もいるよと、
1ファンとしての声として、
何故か言わずにおれなかった。
「義理」でと仰ったのが少しショックだったので…。
廣田さんのお仕事上、そうした目で観るのも
当然だと分かっているのですが。

場違いな上、支離滅裂な発言で、
長々と失礼しました。
お体に気をつけて、お仕事頑張って下さい。

投稿: mtym-a | 2008年9月 1日 (月) 00時20分

どうもはじめまして。『スーパーロボットコンプレックス』で感動してこのブログを読み始めました。最近の記事には同意できない部分も多々含まれていましたが、今回は膝を叩きましたね。
>俺たちオッサンの方がすごいよ
『仮面ライダー響鬼』はまさにそういうことを言おうとしていた作品で、そこが偉大だと思っていたのですが、後半は不幸な作品になってしまいました。

『マクロスF』大統領射殺シーンに関しては、あえてこんな描き方にしたのでは?という考えと、いや単に雑なだけだろ!という考えが半々です。どっちにしろ最後まで見守りますけど。文句を言われつつも次も観ようという気にさせてくれるだけでも良しとすべきでしょう。

投稿: 490 | 2008年9月 1日 (月) 01時02分

■ DH98様
映画版『漂流教室』というと、大林宣彦のやつでしたっけ。ちょっとラストは覚えてないです。すみません。

僕も、ラスト2話ぐらいで何もかもひっくり返してくれることを期待しています。「レオン三島は、実はいいヤツだった!」ぐらいはしてくれないと納得いきませんね……。

■mtym-a様
はじめまして、書き込みありがとうございます。
僕も『アクエリオン』は首までドップリ浸かっていましたから、まったく同感です。そして、どうして今回はこうなったのか「アニメージュオリジナル」の対談を読んでいたたければ少しは分かると思いますし、実はもうちょっと踏み込んだお話も、河森さんからうかがってはいます。
仰るとおり、第21話のラストは、中島愛さんの演技が素晴らしく、勿体ない感じはしましたね。

それでも、「あの河森さんが、このままで終わらせるはずがない」と期待はしているんです。その期待が裏切られたら、河森さんには正直に話します。そこまで含めての義理、ですね。

あと、なかなか私たちライターは公の場で本音を書けないんですね。簡単に言うと、もう僕のところには『マクロスF』の仕事は来ないでしょう。
でも、見えないところでコソコソつつくように批判するのは、もっと嫌なんです。そんな大人にはなりたくないよ、と。
場違いとおっしゃらず、また書き込みに来てください。よろしくお願いします。

■490様
はじめまして。えーっ、『スーパーロボットコンプレックス』がキッカケなんですか。あれは古傷だったのですが、最近になって「書いといてよかったかな」と許せるようになりました。ありがとうございます。

『仮面ライダー響鬼』は、確かにいい例ですね。劇中でも作品の上でも「大人がしっかりしないとダメだ」と訴えていたと思います。前半までは。
『マクロスF』の大統領射殺シーンは別にあれでも構わないのですが、なんでレオン三島が代理になってるんだ?と。議会もなければ、民意もない恐怖政治やり放題のデタラメな展開が、ちょっと許せなかったんです。そんな世界観でミハエルが死んでも、泣けるはずがないですよ。
ただ、ほぼリアルタイムで見てますからね。見せつづける力は感じます。

投稿: 廣田恵介 | 2008年9月 1日 (月) 01時32分

 マクロスF、ここ数話の展開で色々物議をかもし出していますけれど。自分も今回のマクロスFは歌と恋とバルキリーを主軸としてどちらかといえば明るい、変に言えばオチャラケタ、楽しいアニメに終始すると思ったのですけれども中盤戦から思いっきり方向性をずらして来た感はありますよね。
 僕としてはあの若い、80年代アニメのテンションでマクロスを作れなくなってるんじゃないかと思うんです。良い意味でも悪い意味でもマクロスも年をとってしまってあの初代の「ノリ」はもう出せないんじゃないかと。
 ただ未成熟な力の爆発がが今までのマクロスの魅力でしたが僕は今回のマクロスFでどう「成熟したマクロス」を見せてくれるのかを楽しみにしてますし、楽しみにさせるだけの力を持ってるアニメだと信じています。

投稿: セクター | 2008年9月 1日 (月) 08時27分

■セクター様
原則的に、作品に対しては謙虚でありたいと僕は思っています。頭ごなしに切り捨てるつもりはないんです。
なぜなら、商業作品である以上、制約はつき物だからですね。初代のような明るくおバカなノリで走れないのは、何も監督や脚本家のせいではない……と十分に分かっているつもりです。
ただ、物語として程度が低すぎると思います。成熟どころか、子供だましレベルの脚本ですよ。それは誰かが言わなくちゃいけないんですよ。

投稿: 廣田恵介 | 2008年9月 1日 (月) 15時46分

再度の書き込み、失礼します。
今読めば本当に取り留めない内容だったにも関わらず、
ご丁寧なコメントを頂けるとは…有難うございます。

私のような1ファンは、好き勝手に発言出来ますが、
廣田さんや製作側はそうはいかない。
それを踏まえた故での今回のブログだという事を理解しました。
後、「アニメージュオリジナル」は既に読んではいたのですが、
もう一度読み直す必要がありますね…失礼しました。

最近の展開は先が分からず、本当に終わるのか?と
思っている方もいらっしゃるようで、その中でこの21話の流れは、
特に混乱を招いたような気がします。
三島の件も、ランカの件もどこかで補完出来る余地はなかったのかナ?と…。
そこが残念です。

投稿: mtym-a | 2008年9月 1日 (月) 21時56分

>義理
観るスタイルは自由だけど、ここでもそう書けるのであれば、
スタッフ全員の前でもそう言ってくれ。

>子供だましレベルの脚本ですよ。
そういう前に、なんで脚本を担当出来る位置まで来ないの?

何かを言うのは誰でも出来るけど、行動出来る奴はそうはいないってこと。
でも何かを言って聞いてもらえるのは、行動した奴の意見だけだよ。

投稿: isshie-40 | 2008年9月 1日 (月) 22時53分

■mtym-a様
いえ、「クソ」だとか「バカ」だとか言うレベルの暴言でなければ、誰でも意見は自由に言えるべきなんです。ただし、僕のような立場だと、生活を脅かされるというリスクは伴います。

>三島の件も、ランカの件もどこかで補完出
>来る余地はなかったのかナ?と…。

これから補完してくれるんだと思います。何も作り手は、悪意でつくっているわけではない。ただ、作品と受け手の「関係」はどこでどうこじれるか分からないのですね……。
今回は皆さんの意見を読んで、かなり冷静になることが出来たので、書き込みにはとても感謝しています。

■isshie-40様
わざわざ、廣田恵介という本名で、業界の方も見られているブログで書いたのは、責任の所在をはっきりさせたいからです。どこの誰とも分からないHNで物陰から狙撃したわけではありません。
あと、
A「あの会社の製品はダメだねぇ」
B「じゃあ、お前が社長になって、お前が作れ。社長になる努力したのか」
こういうレベルの議論(?)には、ちょっと着いていけません。すみません。

投稿: 廣田恵介 | 2008年9月 1日 (月) 23時45分

ただ、「物語として程度が低すぎると思います。成熟どころか、子供
だましレベルの脚本ですよ。」ってあまりに無礼な発言だと思います。
だったら『プロのライターの廣田さん』に、貴方が書いてみせてくれ
って言うのは、コチラからすると自然な反応だと思うのですが・・・

投稿: isshie-40 | 2008年9月 2日 (火) 00時35分

■isshie-40様
正確な訳ではないそうですが、この場に相応しいので引用します。
「私は君の意見に反対だ。だが、私は君がその意見を言う権利を命を懸けて守る」。

投稿: 廣田恵介 | 2008年9月 2日 (火) 14時48分

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