■『うる星やつら』に関する、ある挫折■
EX大衆 9月号 発売中
●優木まおみ グラビアポエム
●愛ドルのリコーダー 坂本りおん 妄想ポエム館
●マクロスF徹底攻略!
グラビアポエムは毎月のことだけど、最後の「マクロスF徹底攻略!」は旧作と新作の似たシーンを比較……というミニ特集ですね。濃いマニアからは「だからどうした?」と言われそうだけど、読者に合わせて記事の方向・深度を変えられないとね。
実はこの雑誌で『マクロス』やるのは二度目なんだけど、その時は河森監督や飯島真理さんのインタビューを入れたりして、お堅くやりすぎた。
招待券をいただいたので、銀座松屋へ「高橋留美子展」を観に行く。めちゃくちゃ人が多く、絵の前に立ち止まることが出来ないほど。でも、カラー原画にエアブラシが使ってあるのを見て、高校時代、『うる星やつら』のイラストを描いていたことを思い出した。70~80年代、エアブラシはハイテクの象徴だった。スーパーリアリズムはもちろん、SFXの現場でも欠かせない魔法の道具で、憧れのアイテムだったんだ。星型のマスクを切って、ラムちゃんの後ろの背景をボカして描いたりした。中毒レベルの『うる星』ファンだったんだ。
だけど、同じ『うる星』好きの友人が、高橋留美子作品の18禁同人誌を集めているのを見て、すさまじい嫌悪を感じた。さらに初の劇場映画『オンリー・ユー』の試写会が追い討ちをかけた。ラムちゃんのブラジャーが外れるシーンで、一斉にカメラのシャッター音がしたのだ。「俺は、お前らとは違うぞ」と叫びたかった。
でも、あのシーンで写真を撮った連中が悪いんじゃない。そんなシーンをつくった押井守が悪いんでもない。ただ、僕と『うる星』の「関係」は、その夜に終わった。
翌日、ファンクラブの会誌から原作本、レコードから文具から、何もかも売っぱらって、二度と『うる星』、いや高橋留美子作品には近づかなかった。そんな複雑な思いも、「高橋留美子展」会場で僕の足を急がせた理由のひとつだろう。
思春期に漫画やアニメに熱中していれば、誰でもひとつやふたつはそういう過去があるんでは……と思うのだが、意外や挫折経験は耳にしない。
それも道理で、たいていの人は深く踏み込む前に、自分でも気づかぬほど小さな挫折を通過して、あっさりと漫画やアニメから手を離したり、自然に距離をおいたりしてきたのだ。
結局、ジャンル・国籍を問わず実写映画を一日に3~6本観るという生活を経た後、ある映像制作会社で『ジャイアントロボ』の冒頭10分ほどを見せられて、アニメという表現に再び強い興味がわいた。
今年、仕事の資料として『うる星』のテレビ版最終回と劇場版完結編を初めて観た。その時の感覚は、インポテンツに近かった。あるいは、疎外感といってもいい。あらゆるアニメの中で『うる星』に対する感情だけが、ぽっかりと空洞になっている感じ。
だけど、そんな事情と関係なく読者に記事を提供できるから、俺はこの稼業で食っていけてるのだ。「好き好き大好き」だけじゃダメだと思う。何ごとも。
余談だが、二日かけて『ギャラクティカ/シーズン2』全20話を一気に見た。シーズン1は話の方向性がバラバラで抽象的な部分もあったけど、シーズン2はがっちりと「事実」だけを積み重ねていく。その正攻法のドラマづくりが頂点を迎える第9話では、声を出して泣いてしまった。「熱い」のではなく「厚い」ドラマ。シーズン2の放映は9/17から。まだシーズン1を見てない人、北京オリンピックなんて見てる場合じゃないぞ。
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