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2008年7月24日 (木)

■下衆の勘繰り■

昨日の読売新聞・夕刊によると、父親を殺した中学生の長女が『ひぐらしのなく頃に』のコミ080724_00360001 ック版を読んでおり、埼玉県警が「長女が漫画の影響を受けていたかなど、事件を解明するカギとなるとみて詳しく調べる方針」だそうだ。もう、どこから突っ込んだらいいのか分からんのだが……とりあえず『ひぐらしのなく頃に』でニュース検索してみたら、「新作OVA『ひぐらしのなく頃に礼』がBlu-ray/DVDでリリース-全5巻で12月から発売。抱き枕カバー付きなど」なる記事がトップに来ていたので、一安心した。
未成年者による殺人事件に関連して、『ひぐらし』は何度か引き合いに出されている。うーん……フィクションに影響を受けないような人間は、最初からフィクションなんか見ないと思うんだよな。
フィクションは、人間の生理や嗜好や思想に影響を与えるもの。フィクションは、個人の人生を左右するもの。今さら埼玉県警が「詳しく調べる」までもない。フィクションとは、もともと危険性をはらんだものなのだ。
だから、この事件に関しても『ひぐらし』の影響がゼロだとは、とても言い切れない。ただし、表現の自由は守られなければならない。こんなことで『ひぐらし』のOVAが発売中止になるような国にしてはいかんのよ。
もうひとつ。容疑者が何を読んでいたか、何に傾倒していたか、ようするに他人のパンツの中を覗くような権利は新聞社にも警察にもない。作品と個人の関係は不可侵でなければならない。

僕はアメリカのスリラー映画『SAW2』を見て、あまりの残虐さに憎悪さえ感じた。しかし、それでもこの作品は、誰でも好きなときに見られる状態になければならない、と考えている。作品が、勝手に罪を犯すことはないからだ。あらゆる作品は、野に放たれていなくてはならない。どれほどグロテスクで、低俗で、下品で醜悪なものであっても。
ただ、作品と個人とが出会ったとき、そこに何が生じるかは誰にも予測はできない。ところが、それを予測して規制しようとする国会議員がいる。親殺しより、そっちの方が俺は怖ろしいんだがね……。

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コメント

自分のミクシィ日記にも書いたんですが、ひぐらしがこの長女に影響を与えたかどうかなどは『本質ではない』んですよね。
八王子の事件でもそうなんですが、マスコミが鳥瞰でみているような報道に警察や政治が追随している。
マスコミは鳥瞰で事件を捉えちゃいかんのですよ。
地に下りて本質に踏み込まないで何が報道なのか。
自ら手を染めないで何が捜査なのか。

ここ数年の事件と報道を取り巻く環境は、かつてないほどに気持ちが悪いです。

投稿: てぃるとろん | 2008年7月24日 (木) 07時08分

■てぃるとろん様
まったく仰るとおりです。「事件を解明するカギ」なんて、そんなマンガみたいな言葉を新聞記者が使っちゃいけない。それ以前に、紙面を割くほどの内容ですらない。これは「バカ」ではすませられないですね。狙ってやっていることですから。

>マスコミが鳥瞰でみているような報道に警察や政治が追随している。

ここ2~3年で、一気にそうなったように見えます。八王子の事件にしても、今度は何を規制するつもりなのかな、と考えてしまいます。

投稿: 廣田恵介 | 2008年7月24日 (木) 14時28分

同感です…情報というのは自由でなければなりません。 情報統制は一見管理されているようで国家自体が犯罪に向かうような感覚に感じます。

最近、残虐なニュースが結構チラチラします。 しかし犯罪の発生率が増加しているわけではないそうです…その根拠はここで危惧されていることの反対、さまざまなニュース事件が公表される度合いが増しているからだそうです。

残虐な映画、情報等が巷にあふれかえっても逆にそれを反面教師にする種類の人も居ると思います、情報等の貧弱な過去においても残虐な事件はやはりありました。
知る ということはすべてをカバーすると思います。 受け手の行動を支配するものが教育ならやはり残虐なものの正反対に位置するものも巷にはあふれています。 すべてを知ってすべてを把握することが最善の教育です。

投稿: hideaki | 2008年7月26日 (土) 12時35分

表層の情報が断片的に出ているにすぎないのにね。
「かってに方向性を与えるな」だよ。
「ひぐらし」しか読んでないのかよ?
DVDとかはどうなんだよ。
そもそも、本人と話してるのは、警察の人なんだからさ。
たぶん、人格障害とか心の闇とかって結論付けになるんじゃないの。
残るのは、「ひぐらし」へに偏見。

ちなみに私は、「ひぐらしの鳴くころに」は読んでいません。


投稿: DH98 | 2008年7月26日 (土) 13時44分

■hideaki様
コメントありがとうございます。
とてもいいことを書いてくださいました。メディアの発達していない戦前・戦後にも、残虐な少年犯罪は頻発しており、近年はむしろ大幅減少に向かっているんですよね。マスコミの声が大きくなったから増大しているように見えるだけです。これは非常に重要なことですね。

秋葉原の通り魔事件で「有名」になったダガーナイフを、警視庁は法改正で規制するよう動いています。本当にアッという間なんですよ。誰も反対しないでしょう。マスコミがダガーナイフを「犯人」にしたからです。
今や、国家に規制できないものなんて何もないように思います。

■DH98様
コメントありがとうございます。
少年犯罪の場合、未成年者を保護しなくてならないので、本人とは別の「犯人」を吊るし上げる傾向にあります。マスコミは『ひぐらし』を犯人にすることに決めたようですね。
原作者や識者の反対意見も出ていますが、「事件とは関係ない」というスタンスですね。そんな程度では、偏見と戦っていけないんですけど……

『ひぐらし』はアニメもコミックも出ているので、全部とは言いませんが、立ち読み程度に触れてみてはいかがでしょうか。

投稿: 廣田恵介 | 2008年7月26日 (土) 15時26分

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