■永作博美はキングギドラだ■
CSで『ニライカナイからの手紙』を放映していて、こんな単純な話なのになんで泣けるんだろうと思ったら、やっぱり蒼井優がすごい。蒼井優が沖縄の離島から東京に出てきて、オシャレとはいえないダウンコートで重いカメラの機材を抱えて、東京の雑踏に立っている。蒼井の細い体が、くっきりと「東京」という街のつれなさを表現している。
彼女はカメラマンになるための修行で東京に出てきたという設定だから、そこに過剰なエピソードはいらない。表情を見れば分かる。別に寂しそうな顔なんかしてない。なぜなら、次の仕事の段取りで頭がいっぱいだからだ。映画を見て、二言目に「説明不足」という人は、自分の経験とフィクションを寄り合わせることが出来ないんだと思う。
その蒼井優が、永作博美という化け物と対決せねばならない映画。それが『人のセックスを笑うな』。蒼井と永作の間で右往左往するのが松山ケンイチって……もはや『三大怪獣・地球最大の決戦』ですよ、俺にとっては。
まず、日常会話で笑わせるのがうまい。これは半分ぐらいアドリブだと思うのだが、役者同士の掛け合い、特に永作と松山のイチャつきっぷりは笑いっぱなし。「これ脱いだら、僕、裸じゃないですか」「オー、イエス」「だから、オーイエスじゃなくて!」
状況はセックスに向かってるのに、笑いが出るというのがリアル。あと、永作はセリフを笑いとか吐息の中で言うんだよな。これがまた生々しい。同じ永作でも『四つの嘘』なんてマンガ芝居は見てられない。今の日本のドラマってのは、ぜんぶマンガだから。
松山を自転車の後部座席に乗せる前、「おしっ」と気合い入れるのも良かった。好きな映画が「テロリストの出てくる映画」ってのもグー。真面目な意味のあるセリフなんてひとつもないのに、ちゃんと魅力的。しかも、ろくな死に方はしないって顔をしているのが、また素晴らしい。もうね、生まれ変わって永作博美になりたいぐらい。
で、後半は蒼井優が松山を落とそうとする。怪獣映画だね、やっぱり。それまで被っていたニットキャップを脱ぎ捨てて勝負に出る。バッと、初めて長い髪が広がる。しかし、やっぱり迫力では永作にはかなわない。何しろ、キスひとつで動揺するような役柄だから。だけど、面白いことに蒼井優はたった一人で、映画を一本ひっぱっていけるんだよな。永作はチームプレイに向いている。キングギドラ一匹では、映画はつくれないということだな。最低二匹はピンはれる対戦怪獣がいないと。それで、永作はテレビの出演が多いのかも知れない。
読売新聞を開いたら、『スカイ・クロラ』で使われた架空世界の読売新聞が実物大で刷られていた。本当に読売の記者がつくったと自慢してるんだけど、「必至」を「必死」と書き間違えている。社は金を出したかも知れないけど、担当者は「たかがアニメ」と思って書いたんだろうね……。
今おもしろいアニメは、キッズステーションで再放送している『紅』。生きているというか、他のアニメと明らかにリズム感が違う。画面全体が呼吸している感じ。と思ったら、アフレコではなくプレスコでやってるのか。あと、レトロムードも含めて全体に趣味がいいね。
決め手はやっぱり、脇役のお姉ちゃんたち。映画もアニメも、やっぱり色気がないと話にならない。
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