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2008年6月 7日 (土)

■予定調和の何が悪い?■

月刊「創」 7月号 発売中
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●日テレ、TBS、フジを中心に映画事業本格化 今や最大の製作会社TV局の課題
●星野康二(スタジオジブリ代表) インタビュー記事
●押井守(「スカイ・クロラ」監督) インタビュー記事

年に一度の映画特集ですね。押井監督インタビューは、「どうして声優でなく、俳優を使わざるを得なかったか」の部分が面白いと思う。このインタビューに関しては、11日配信のラジオ「談話室オヤカタ」で、裏話というほどじゃないけど、どんな様子だったか話してきた。とにかく話のネタとしては本当に最適の映画だし、ひさびさにドラマであるとかセリフであるとか演技であるとかについて語れるアニメ。

昨日は、所沢の古本まつりへ。帰宅後、猛烈に眠かったけど『アクビガール』だけは何とか見たんだよな。5分なら起きていられるから。
080607_03480002今回も良かった。で、このアニメの何がいいのか漠然と分かってきました。主人公の女の子(るる)が、男の子(いとしクン)に恋をしていて、アクビはるるの恋のキュービットになるべく魔法を使う。でも、いつも魔法は失敗してしまい、るるは大あわて……それが毎回のパターン。
アクビの魔法は失敗するんだけれど、いとしクンの寛容さや勘違いによって、るるの恋は「毎回、必ず」救われる。というか、るるはいつも「いとしクンと仲良くなりたい」と言っているけど、物語開始時点で二人の恋はすでに成就している。このアニメは、るるの得恋ラブラブ状態を描いているに過ぎないのだ。アクビは、るるの恋があたかもピンチ状態に置かれているかのように見せかけるためのトリックスター。だから、アクビの失敗は常に許される。
『アクビガール』の世界は祝福されているのだ。寛容と慈愛に満ちている。どれだけ失敗しても、見えざる神の手によって「ほら、これで元通り」と修復される世界。そんな優しい甘ったるい予定調和の、何がいけないっていうんだ。この物語の主人公の名前は「夢見るる」。たった5分間の夢なんだよ。

……まあ、そんなことをレンタルも始まった『ギャラクティカ』を見ながら考えた。
080607_05120001_2ミリタリーSFの装いで始まったこの物語は、少しずつ予定調和によって侵食されていく。人造人間であるはずのサイロンが、すべての出来事を「神の計画」と呼びはじめるのだ。実際、人類を裏切ったバルター博士が当てずっぽうで「神」に祈ったとたん、偶然に偶然が重なって、主人公たちは窮地を脱してしまう。最前線に立つギャラクティカの面々は、サイロンの「神の計画」など知るすべもないというのに。この薄気味悪さも、また『ギャラクティカ』の抗いがたい魅力のひとつだ。
いまや「論理的に説明のつく客観的事実」(バルター博士のセリフより)の世界に、われわれは住んでいない。だから、どんなに不条理であろうと「神」や「予定調和」が物語に介在した方が納得できるというか……努力によって克服される物語は、もはやリアリティを持っていないと思う。この何十年か有効だったフィクションの常識が通用しなくなってきているんじゃないだろうか。

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