« ■ラジオ、腑抜けども、ギャラクティカ■ | トップページ | ■アクビの魔力■ »

2008年6月 1日 (日)

■センス・オブ・ワンダー■

誰でも、「これ傑作!」と気に入った映画を見なおしてみて「こ、こんなはずでは……」と愕然とした経験をお持ちのことと思う。僕も、同じ映画を二度、三度と見ていた若い頃は日常茶飯事だった。幻想は、壊されるためにあるのだ。
過去、このブログで二度ほど取り上げ、「シネマガールズ Vol.2」のコラムでもしつこく「良かった」「感情移入しまくり」と絶賛した『渋谷区円山町』がケーブルテレビで流れていたので、後編だけ見る。

やっぱ、良かった。感獣移入しまくり。いじめられっ子の仲里依紗に、いつも一人で超然としている原裕美子が話しかける、その何気ないシーンからがっちりとドラマが始まっている。いや、たいしたドラマじゃないんだけど、それが「がっちり」していることが大事。
あと、こんなベタベタした話がどうして心を揺さぶるのか、何となく分かってきた。これは個人が「学校での友達づきあい」という「社会」に初めて向き合う話なんだ。例えば、「実は友達からいじめられていた」事実を受け入れた仲里依紗が、渋谷でプリクラを撮り合っている女子高生の集団を目撃してしまうシーン。自分と仲のいいフリをしていた友達のことが、いやでも頭をよぎる。それを意識させるためだろう、このカットは長めだ。それは目をそむけちゃいけないカットなんだ。だから、長いんだ。仲里依紗の「ガーン、ショック」なんて顔もなければ、芝居もない。そんな説明はない。彼女が何を感じたか、それは観客が一番よく知っている。知らないとは言わせない。そういう映画、そういう表現が好きだ。

ちょっと話がそれた。「社会」に対して盲目的に迎合することしか知らない仲里依紗に対して、原裕美子はハッキリと「社会」に対して線を引いている。もっと言うなら、「個人」と「社会」が両立可能なギリギリの境界線を、彼女は知っている。言うまでもなく、観客のほとんどは仲里依紗のように社会と馴れ合いながら生きている。本当は原裕美子のように一人で堂々と生きたいはずなのに。
だから、『渋谷区円山町』(の後編)は、単なる女子高生のナヨナヨ話ではない。いや、一面から見ると確かにそうなんだけど、同時に「社会とどう折り合いをつけるのか」という問題を提起している。そこまで噛み砕いてから、その作品を「好きだ」と言えるよう、今後は努める。

さて、先日の『マクロスF』。話としてはありふれているんだけど、クラン・クランがバルキリーをビンタするシーンで何もかも吹き飛んだ。
いま、巨大ロボットをアニメに出す意味って「ガンプラを売りたい」以上にないと思っていたんだけど、あのシーンには発見と必然があった。「巨人族と戦うために、巨大ロボットをつくる」という『マクロス』最初期のアイデアに血肉が通ったし、巨大ロボットの芝居がドラマ本編と力強く結びついた瞬間だと思う。ああいうシーンを……そうそう、センス・オブ・ワンダーと呼ぶんだったな。

|

« ■ラジオ、腑抜けども、ギャラクティカ■ | トップページ | ■アクビの魔力■ »

コメント

先ほどはGUNHEDのコラムに失礼しました。
かなり以前の記事(一年以上前)とはつゆ知らず
それでも丁寧なコメント返していただいて感謝…

ライターの方なのですね…
趣味人的にギリギリオタクの私と比べて、業界全体を見渡せている方、興味の範囲はかなり広いとお見受けしました。(楽しい記事ばかりです)。

映画というのは何度も見るものという意見はとても支持できます。気に入った映画に対してステイタスを求めてしまうのは、情報業界を仕事としていらっしゃるライターの方だけのスティタスでもないし…やはり情報に対して常にアンテナを向けながら、好き嫌いという感情を楽しんだり出来るのも高度な知的活動と思います。

センスオブワンダーという言葉は、80年代のころSF系の雑誌でよく耳にしていた言葉でした…
別にそういった意味合いだけに限定する必要がないこともよくわかりました…

なんとなくまとまりのなく意味散漫な書き込みとなってしまいました。

投稿: hideaki | 2008年7月 1日 (火) 19時14分

■hideaki様
ライターという仕事は情報が偏らざるを得ないと思います。専門分野以外、何も知らないといってもいいんじゃないかと……ただ、柔軟に作品を見られるかどうかだと思うのです。
何を見ても、ビックリできれば勝ちというか。

>センスオブワンダーという言葉は、80年代のころSF系の雑誌でよく耳にしていた言葉でした…

僕も小学生の頃、「スターログ」誌で知りました。でも、意味が理解できてきたのはずっと後になってからですね。

投稿: 廣田恵介 | 2008年7月 1日 (火) 20時42分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: ■センス・オブ・ワンダー■:

« ■ラジオ、腑抜けども、ギャラクティカ■ | トップページ | ■アクビの魔力■ »