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2008年6月11日 (水)

■ラジオとパズル、楽園のありか■

本日から配信の『談話室オヤカタ』に出てます。「とりとめなく何でも書くライター」と紹介されているけど、僕の定義では「ライター業で家賃光熱費を払い、日々生き延びている人がライター」。黒田硫黄さんがクイック・ジャパン誌のインタビューで「描きたいことがなくても描くのがプロの漫画家」と言っていたけど、「それで食っている」以外にプロの条件はないと思う。食えてない人は、プロでもなければライターでもない。

閑話休題。
どうやら来週の沖縄一人旅まで仕事漬けになりそうな気配なので、公開二日目のレイトショーで『神様のパ080609_00330001ズル』を鑑賞。三池崇史、今回はいい方向へ原作をクラッシュしてくれた。
市原隼人の演じる主人公が双子という設定になっているのに首をひねったけど、「ひょっとして、双子って物質と反物質の比喩?」と気がつけば、色々と納得がいく。市原が交響曲第9番を歌うという破れかぶれのクライマックスも、谷村美月に「父がいない」という設定にちゃんと繋がる(説明が難しいけど、注意深く見れば分かる)。
細かいところでは、関東・東海の大停電という非常事態に総理大臣が駆けつけられない理由が「母親の誕生日」。その日、谷村は「宇宙を誕生させる」実験をしていたのだから、ナルホドである。谷村演じる天才科学者は、「父」の存在を確かめるために「母」を誕生させようとしていたと解釈できる。とにかく、バラバラになりがちな難しい題材を、裏側からカチッとネジで締めるような工夫が、あちこちに仕掛けてある。映画自らが作り出した法則を、最後まできっちり守っている。誠実だ。こういう映画を、あなどってはいけない。
ただ、お目当ての谷村美月は、市原隼人の名調子っぷりに食われてしまった感があるな080610_05580001 ぁ……。やたらタンクトップからのぞく谷間に話題が集まっているが、三池監督がそんなストレートなエロスに本気であるはずもなく、むしろ足。ふくらはぎの肉をつまむ、足の指の間に手の指を通す……など、ねっとりした足フェチぶりを見せる。出世作『カナリア』でも、顔よりも棒みたいな足が印象に残ったからね。この女優は「存在感」というよりは、肉とか骨を感じさせる人。「映画で見た」というより「会った」気にさせる女優。
しかし、「天才」という設定は役者を殺すと思った。どんな名優が演じても、「天才」と「狂人」はうまくいった試しがない。『地獄の黙示録』のマーロン・ブランドぐらいじゃないだろうか。まあ、俺にとって谷村美月は20歳になろうが30歳になろうが「将来、楽しみな役者」であり続けるだろうから、良しとしたい。
あと、巨大建造物マニアの方には、架空の量子加速器「むげん」が、かなりツボにくるはず。

『アクビガール』、相変わらず至福の5分間。主である「るる」があくびをしないとアクビは出てこれないんだけど、るるはストーリーに脈絡なくあくびをする。悩んでいる最中ですら、あくびをする。それはもちろん脚本の都合なんだけど、別の見方をすれば、るるは何のキッカケもなくあくびが出るほど「満たされている」わけだ。幸せすぎて、あくびが出ちゃう。楽園は、きっと退屈なのだね。毎日、それを感じられるだけでも『アクビガール』を見る価値はある。

この世は楽園ではない。楽園は存在しないのかも知れない。だが、われわれは楽園を探さなくてはならない。

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コメント

はじめまして。廣田さんの文章を楽しみにしている者です。

告知にある、談話室オヤカタを聞きました。

ここに書くべきか迷いましたが、ラジオの続きを楽しみにしています。では。

投稿: 浜長 和正 | 2008年6月13日 (金) 01時48分

■浜長和正様
はじめまして、書き込みありがとうございます。

>告知にある、談話室オヤカタを聞きました。

どうもありがとうございます。文筆業志望者には、まるで役に立たないことばかり話していますが、来週はもっとその傾向が強くなります。
ちょっと調子に乗りすぎましたので、お手柔らかに……

投稿: 廣田恵介 | 2008年6月13日 (金) 02時31分

ラジオ面白かったです。
流石の廣田さんもああいう所でまで浮世離れした台詞は言わないんだなあ、とか失礼千万な感想が頭を過ぎりました。
後編も楽しみにしてます。

投稿: 朝の銀狐 | 2008年6月13日 (金) 05時02分

■朝の銀狐様
そりゃあ、人前で浮世離れしたことばかり言っていたら、フリーで仕事なんてとって来られないですよ。
グレメカ編集部では、かなり変なこと言っても許されてますが……

ただ、ラジオの反応はゼロだと思っていたので、実は嬉しいです。

投稿: 廣田恵介 | 2008年6月13日 (金) 15時16分

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