« ■メルモちゃんに思う■ | トップページ | ■リスクヘッジはしません■ »

2008年5月16日 (金)

■(仮)のもの■

EX大衆 5月号 発売中
Ex_08_05●愛ドルのリコーダー 中村知世
●桜井まり
●大島麻衣
●相沢真紀

それぞれ、グラビア・ポエム執筆。よく「そんなことやらないと、食えないんですか?」という顔をされるが、文字数以外、内容に何の制約もない自由な仕事なんて、ほかにないよ? それに「好きなように書いていいです」と言われると、意外に書けないもんだ。しかも、それをお金のもらえるレベルにしなきゃならない。

たった今、押井守監督のインタビュー起こしをやっているけど、面白い。こんな面白い話が聞けるってだけで、アニメ好きで良かった。
どうせみんな掲載誌なんか読まないんだから、この取材テープをアップロードした方が、世のため人のためになるんじゃないの?と職業倫理を投げ捨てたくなるぐらい、面白い。だって、みんな見事に本を読まないもん。渋谷陽一が書いていたように、インタビューって上を見れば際限がないぐらい難しい。テクニックが必要。でも、どれぐらいニーズがあるんだろうかと考えてしまう。好んでインタビューを読む人は、もはや特殊なお客さんではないのか。
電車に乗ったら、みんな携帯かPSPを開く。本を開く人がいると「おっ」と感心してしまう。日本人はモニター依存症になってしまった。訴求力で言ったら、やっぱり文字より映像の方が強いんだ。
それも理由のひとつだけど、「書く」ということに僕は何の幻想も持っていない。お金をもらえる文章と、そうでない文章との差は歴然とあるけど、それすら絶対的なものではない。別に魔法を使って書いているわけじゃないし、ライターに免許なんかないんだから、ケースバイケースではないだろうか。
伝達だけが目的だったら、ネットの方が有効だと思う。事実、僕が仕事で書いた文は読まれてないのに、このブログはあっちこっちで叩かれてる(笑)。それでも、読まれているだけマシなのかも知れない。「読まれない」という事実に対峙しないと、僕の仕事には緊迫感が生まれない。「読んでくれるに決まってる」と思って書くと、たちまち内容が弛緩する。そういうヤツの文章は、一読しただけで分かる。
現実を直視しないと、その先の理想も野心もリアルにならないんだよ。まずパンチを食らわないと、こっちの一打は出せない。痛いから殴り返せるんだ。

と思っていたら、友達が「本って、いいもんだよね。たまに読むと、安心感があるよね」なんて080516_05280001 言う。持ち運べるし、人に貸せるし……と言う。「それは、紙とインクだからだよ」と俺は答えた。「本ってのは、物体だから」。
すると、こうしてネットに書き付けている文章というのは、「まだ印刷される前の文」とも考えられる。ネットの中のものは動画、音声、すべてバーチャル。文もバーチャル。電源を引っこ抜いたら消える。すべて仮のもの。この考えは、ちょっとだけ僕を安心させる。
でも、「もっと本を読め」とか「ペンの力は偉大だ」とかいう石頭をどっかで捨てないと「次」が来ない。「次」というのはネットで読む文学とか、人気ブログが書籍化などフォーマットのことではなく、「どう伝えるのか」っていう根源的なコミュニケーションの手段のこと。それが見つかったとき、僕はブログをやめるんだろう。

|

« ■メルモちゃんに思う■ | トップページ | ■リスクヘッジはしません■ »

コメント

え?
たたかれてたんですか。存じませんが(笑)。

ま、私ていどでも2ちゃんで死ね死ね言われましたからねぇ。

さておきいつも楽しみに読んでおりますよ、このブログ。

インタビュアーは難しい仕事ですよね。

その昔、ロッキン・オンの渋谷ヨウイチさんがキース・リチャーズにインタビューをした記事が印象的でした。
渋谷さんが若い頃の武勇伝など、よく知ってるもんだから、キース真っ赤になって照れていたと最後に書いてありました。

投稿: 平田英明 | 2008年5月16日 (金) 17時03分

■平田英明様
この記事は、平田さんの先日の記事がヒントになったんです。一度、自分の仕事について思うところを書いとこうと。

ネットって、匿名だろうと実名だろうと意見を書いた瞬間、どこの誰に狙撃されてもしょうがないシステムになってますからね。「スナイパー文化」って呼んでます。みんな、安全な物陰から撃つのが好きなんですよ。
僕や平田さんみたいに、実名丸出しで書いてること自体、「どっからでも撃ってください」と言ってるようなもんです(笑)。

僕は、聞き手の個性を殺したインタビューの方が好きです。渋谷陽一さんは、逆なんですよねー。対談みたいになっちゃってるんで。

投稿: 廣田恵介 | 2008年5月16日 (金) 19時05分

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: ■(仮)のもの■:

« ■メルモちゃんに思う■ | トップページ | ■リスクヘッジはしません■ »