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2008年5月14日 (水)

■メルモちゃんに思う■

アニカンR 14号 発売中
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●中島愛さんインタビュー
声優さんにインタビューできる若いライターは多いが、プロデューサーや監督となると、途端に尻込みしてしまうと聞いたことがある。声優さんにインタビューするには、役のことだけ知ってればいいから……かも知れない。声優とお友だち感覚になれるのが嬉しいのかも知れない。
ところが、ランカ・リー役の中島愛のインタビューでは、歌や演技に関する専門用語が続出して、冷や汗をかいた。新人にありがちな「とにかく、がむしゃらに頑張ってます!」とか、そういう甘えたノリがない。それで、好感を持った。
『スカイ・クロラ』も、ほとんどアニメ声優を使ってないから色々と言われそうだけど、アニメ・ファンって排他的だよね。菊地凜子の声がNGなら、菊地凜子の映画を一本でも観てから言ってほしい。いいじゃないか、批判するために知らない作品を観たって。何も知らないまま「声優じゃないからダメ」というよりは、よっぽどマシだ。
そんなことを思いながら、明日は監督インタビュー。『立喰師』の時、中野のカレースタンドで取材して以来だから、もう楽しみでしょうがない。

今は三誌同時進行で、過去のアニメをネット配信やレンタルで拾い見してるんだけど……080513_20330001 『ふしぎなメルモ』のセクシャルな世界に、またもやノックアウトされた(10年前に仕事で見た時もそうだった)。絵が艶っぽいというのもあるけど、性の未分化な女の子が大人と子供の間を行ったり来たりして、しかもそこに恋愛という思春期の要素が、無理やりに入ってくる暴力的展開にクラクラする。
あと、「赤いキャンディ」「青いキャンディ」というケミカル・ドラッグに支配されているのが、またセクシャルというか不健康な世界だよね。また、この薬ビンのフタを開けるとき、ビンが「ぽよん」と揺れる。「もう! テヅカ先生のエッチ!」って感じだ。
しかも、これを見ていたのは幼稚園の頃だからね。「エッチ」の何たるかも理解してない。でも、生物学的な刷り込みは強烈だった。うちは放任主義だったから、いくらでもアニメを見せてもらえたしね。つまり、我々は環境に飼いならされた生き物だということだ。

ここで、さっきの菊地凜子の話に戻る。「アニメ声優の話をしてるんだから、菊地凜子の映画なんて観る必要ない」という人は、飼いならされたままじゃないの?と思うわけだ。自分に与えられた軌道を完全に外れることは無理でも、ちょっとは広げたり捻じ曲げたりする必要を、僕は感じる。
物心ついたときにアニメの視聴環境があった人は、習慣で、惰性でアニメを見続けてしまう。惰性に逆らえなくなった時、人はオタクになる。それはもうあきらめるとして、あとは自分の負ってしまった性(さが)をどう加工して、ちょっとは役に立つ技能・知識に育てるかだと思うんだよな……。
「バカにされたくない」でもいいじゃない、純粋な知的欲求じゃなくても。習慣にハマる教科書はあっても、習慣を捨てる教科書はないよ。

あ、そうそう。俺、『くりいむレモン』のストーリー書いてくれと編集に頼まれてるんだけど、「見たことないよ」って逃げ回ってるんだよ。それはウソじゃなくて、当時は大学生だったから、さすがに恥ずかしいと思って避けていた。だけど、ウハウハで全巻買ってるやつもいたんだよ。そいつを見て、やっぱり習慣に飼いならされた人生はキモチワルイと思ったよ。苦し紛れに逃げ回っていれば、どこかで転ぶ。その転ぶ瞬間をいつも待ち続けてる。俺の場合はね。

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コメント

懐かしい!

私は再放送?とかで見た記憶が・・・

確かにドキドキして見てたような。


「知ってから言え」というのとはまたちょっとニュアンスが違うと思いますが、でも、ちゃんと見てから判断したいなーと思いました。

投稿: yuki | 2008年5月14日 (水) 21時00分

■yuki様
『メルモ』を、小さい頃にドキドキして見てたのは普通なんです。それを延々と引っ張ってるからオタクなんです。

>「知ってから言え」

堂々と「この作品は○○にそっくりですね。私は見てませんが」と言う人がいて、えらいショックを受けました。
「知らない」「分からない」は、かつては恥ずかしいことだったんですけどね。

投稿: 廣田恵介 | 2008年5月14日 (水) 22時12分

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