■永作博美とサシで飲みたい■
EX大衆 4月号 発売中
●森下千里 グラビア・ポエム
●愛ドルのリコーダー 第3回 伊藤えみ
いま仕事している某誌の編集さんに、「ちょっとコンビニで買うのも恥ずかしいかもね」と言われた雑誌です。すみません、レギュラーでポエム書いてます。
前号執筆した「シネマガールズ」でオススメされていた映画『好きだ、』。レンタルしてあったので、横になって見はじめる。前半は、いまの流行りっぽい田舎の高校を舞台にした純愛ものの雰囲気だが、後半の都会編がいい。
前半で宮崎あおいの演じていた女子高生の17年後を、永作博美が演じるという無茶は、もうそういうレトリックなのだと納得する。ストーリーはほぼ不在で、役者の存在感で見せる映画だから。
永作が登場するまでワンクッションあって、主人公の男は野波麻帆演じる酔っ払い女を道で拾う。ほとんどアドリブのような芝居が何ともイキなのだが、朝とも夕方ともつかない光線の具合が素晴らしい。撮影がいいんだよな。
野波麻帆が道ばたで酔いつぶれるなら、永作も負けてはいない。居酒屋で「日本酒。何でもいいです」と頼んだ直後、「(飲みが)一周して、日本酒に戻った」とニッコリ(このセリフ、たぶんアドリブ)。もう、うわばみのように酒を飲む。素晴らしい。
次のシーン、主人公のマンションで、永作は今度はウィスキーをはじめる(おお、なんと素晴らしい飲みっぷり)。そこで、主人公が高校時代に自販機でエロ本を買った光景を、永作が思い出して語るんだ。「キョロキョロ…誰もいない。ガッシャーン…(本を)隠す。逃げる。…かっこ悪い」。この間合いもアドリブっぽいんだけど、なんたって距離感がすごい。観客との距離感が。「あ、こういう会話、前にあったような気がするなぁ」と思わせる。そう思った瞬間、カメラの前の永作と、映画を見ている俺との距離はゼロなんだ。たぶん、50年後にも同じような距離感・親密さを感じる人はいるだろう。映画って、そういう機能があるんだ。
全体として何か強く訴える映画じゃないんだけど、こう、薄明に包まれた部屋で、30過ぎた男女がサシで飲むってのがいいじゃない?
そのあとで、キスシーンがあったりストーリーの落ちがあったりするんだけど、それは俺にはどうでもいい。「こういうの、いいよなぁ」と一瞬でも思わせたら、それで映画というものは役割を果たしてるはずなんだ。
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