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2007年12月 8日 (土)

■王子の行方■

大人のガンダム 完全版 発売中
Oto_gun
●上野和典インタビュー
●川口克己インタビュー

あとは、川口さんのページの前にあるガンプラの解説ページも書きました。

一時期ハマっていた王子バーが、年内で休業することになった。
知らない人のために解説しておくと、男装コスプレした女性が給仕してくれるバーで、どちらかというと女性向けのお店。一階はメイド居酒屋で、こっちの方が男性向けだった。お気に入りの王子なりメイドなりを目当てに通う、という点では、まがうことなきキャバクラの係累。
王子バー休業の一方、メイド居酒屋は営業続行とのこと。そっちの店はどうでもいいので、俺は財布に入れっぱなしになっていたポイントカードを、ついさっき捨てた。

面白いもので、このメイド居酒屋の本店は、俺が結婚している頃に住んでいた家から、徒歩数分のところにあった。離婚後、こちらに一人で越してきて間もなく、吉祥寺に支店がオープン。つまり、店のほうが俺の足取りを追いかけてきたわけだ。
人と作品は、しばしば有機的な関係を結ぶが、それは場所や店についても同様だ。俺がメイド居酒屋を嫌うのは、結婚時代の残り香を、無意識が感じとるからなのだろう。

さて、気になるのは王子たちの行方だ。
王子のコスプレさえ脱げば、彼女たちは普通の女の子なのだろうか。役者が肉体で物語をつむぐように、夜の間だけ性別を曖昧にして「王子」と化する彼女たちもまた、暮らしの大半を物語に溶かし込んでいたんじゃないだろうか。
それが不可能となった彼女たちは、これから一体、どこへ行くというのだろう。
「コスプレなんかやめて、現実を直視しなさい」などと言ってくれるな。現実なんて、直視するだけの値打ちがあるのか?

毎日を偶然のつながっただけのもの、と思いたくないから、我々は例えば恋愛によって現実を物語化する。「将来の夢」を持つことで、殺伐とした暮らしはストーリー化される。
現実が、ただそれだけでは何の価値も持たないことを、我々は知っている。だから、そこへストーリーを練りこむのである。
俺がコスプレを嫌悪しきれない理由は、そこにある。
――願わくば、王子たちが閉店後、裏口からこっそりと馬車に乗り込んで、祖国へ通じる暗い森々を走りつづけんことを。いつまでもいつまでも、夜のつづかんことを。

先日、『ブレードランナー』のユニコーンのことを書いた。昨日、駅から遠い古本屋まで歩いてみたら、「Unicorn」と書かれた外国の絵本が入荷していた。瑞兆かと思ったが、買うのはやめた。やめれば、また何かに出会うはずだから。
071208_01140002今は、夫・中島らもさんとの思い出をつづった中島美代子さんの『らも』を読んでいる。

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コメント

現実なんか直視しなくていいんですよ。
仰るとおり、夢を持って生きてる人は、他人をも巻き込みながら現実を物語に変換する力があります。
廣田さんが気にかけていた娘達なら尚更無問題だと思います。

自分もまた、そういう人間でありたいと想いながら光の速さで歩き続けている(…つもり^^;)。

投稿: てぃるとろん | 2007年12月 8日 (土) 19時06分

店が自分を追いかける・・・というのもなんか納得できる表現!

縁って・・・それを感じたときにつながっていくもんなんだなぁ。

投稿: yuki | 2007年12月 8日 (土) 22時57分

■てぃるとろん様
お店からすれば、僕は迷惑な客だったと思いますけどね(笑)。
今は殺伐とした世の中になってしまったので、僕は現実逃避を悪いこととは思いません。

■yuki様
学生時代に通っていたお店が閉まってるのを見ると、なんかドラマを感じるでしょ?
人生は、ただ生きてるだけで十分に物語ですよ。

投稿: 廣田恵介 | 2007年12月 9日 (日) 17時37分

はじめまして。

一回だけ行ったのですが、王子の一人は店の外ではバンドをやってるって言ってました。
続けてくれていると良いですね。

投稿: マクガイヤー | 2007年12月13日 (木) 23時00分

■マクガイヤー様
はじめまして、書き込みありがとうございます。

>店の外ではバンドをやってるって言ってました。

おお、そんな王子がいたのですか。
基本的に私生活の話はあまりしないお店だったと思うので、お話聞けてラッキーでしたね。

何だか、しんみりした気持ちになりました。

投稿: 廣田恵介 | 2007年12月14日 (金) 01時40分

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