■自分のスウィートウォーターを探せ■
「無いパーツは、つくるしかない」。今年、最も印象に残り、来年、最も役立ちそうな言葉。出典は、こちら。逆を言えば、「つくる」ための格好のモチベーションは、何かが「無い」という状況なのだ。「つくる」こととは、際限ないプラス・オンではないと思う。「欠乏」こそが推進力になるのだ。
『グレートメカニックDX 3』に書いたシャアに関する文章、そこそこ評判いいらしいのだが、良ければ良いほど、人は何も言ってくれないものだ。
確か、『逆襲のシャア』公開時の特番で、富野監督は「40歳ぐらいの人に観てほしい」と言っていたと思う。さて、40歳になった。何年ぶりかで観て、あれこれ納得した。その成果が『グレメカ』に掲載した文章なのだが、要するに「その歳になったら、お前のスウィートウォーターを探せ」ってことなんだと思う。
スウィートウォーターに拠点を構えたシャアは、むちゃくちゃ幸せそうだった。赤いモビルスーツはあるし、強化人間、アクシズ、大人の女ナナイ・ミゲルに、ニュータイプ少女のクェス・パラヤと好きなものが全部ある。何でも揃う男の城、それがスウィートウォーターだ。
何しろ、シャアは故郷を放逐された人間だ。だから、何とかアイデンティティを探そうと復讐ごっこをしてみたり、しつこくガンダムを追い回したり、結局、20代前半では何も手に入れられなかった。20代後半は、名前を変えたのに周囲にバレちゃったり、若造に殴られたり頭を下げさせられたり、挙句の果ては行方不明。一体、自分でも何をどうしたいのか分からなかったんだろう。
それで、ヤツもいろいろ考えた。好きな色は何か。どんな女が必要で、どんな部下が必要か。欲しいアイテムは何だ。「あれもこれもと手を出さず、いい加減に絞れ、俺」と。そうして集めたものを、すべて収めたオモチャ箱、それがスウィートウォーターですよ。
どうも、「隕石を地球に落として、人類を粛清する」というのは後から考えたことのような気がする。結局、カウンターとしてしか生きられないのであれば、権力に対してイヤガラセぐらいしてやろうってことじゃないだろうか。
そんなことより、若い頃に戦ったアムロをリングに上げることの方が、ヤツにとっては大事だったはず。「あと俺に必要なのは……やっぱ、ライバルがいないと!」 そういうのを卒業したアムロにとっちゃ、いい迷惑なんだけどね。そんなこと聞き分けてられないよ、人生のリターンマッチなんだから。分かってやれよ、みんな!
世の中、キャラ萌えはあっても、「飲みに行きたいアニメ・キャラ」を語る人がいない。今度、シャア専用機のガンプラ買おうかと思う。なんか、シャアの口座に印税が入るような気がするから。
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