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2007年9月 1日 (土)

■小人閑居して■

蜷川幸雄の『エレンディラ』を観て来た。最初は上演時間、4時間と聞いて愕然としたんだが、観て良かった。三幕目の途中から、自分にとってこの物語が抜き差しならないものに思えてきて、「芝居を見ている」感覚が薄れていった。ひとつひとつのセリフが歴史を刻むように、重く、遠く聞こえはじめる。特にラストの主演二人の会話は、もうクギを打ち付けて、そのまま時を止めたくなるほど素晴らしかった。いやー、人間ってすごいな!
070831_18230001(←彩の国さいたま芸術劇場)

その前日、『ストレンヂア』を観にいった。こっちは試写会なので気楽に。長瀬智也が、まるで昔の郷田ほづみみたいで実在感バリバリ。耳になじんだ山寺宏一の声の方が浮いて聞こえるぐらい。
ま、どんなに演技力があっても「アニメ・ファン」の皆さんはアニメ専門の声優じゃないとイヤみたいだけどね。その理由を考えてみたんだけど、みんなアニメしか見てないからだろうな。芸能人という夾雑物が入ってくるのが怖いんだろう。
お金のかかった劇場公開作品は数少ないアニメ・ファンだけを対象にするわけにいかないから、話題づくりのために芸能人を起用する。どうもその「話題づくり」がイヤみたいだね、熱心なアニメ・ファンの方たちは。「アニメはアニメ・ファンのもの」って意識が強いんだろうな。
(逆に劇場版『CLANNAD』などは、マニア限定の色合いが強いので、ヒロインの声はゲームと同じじゃないとマズイわけだよね)

普段、実写映画やドラマしか見ない観客層からしたら、アニメって珍しい存在なんだよ。俺にとって、観劇体験が珍しいのと同じだな。
いい例が先月末にテレビ放映された『ミヨリの森』。一般層とアニメ・ファンの間で、ぱっき070901_14240001 り評価が分かれた。二時間もののアニメを滅多に見ないライト・ユーザーは、損したと思いたくないから「なかなか良かった」ぐらい言うよね。さっき、俺が『エレンディラ』を誉めたように。
『ゲド戦記』を大ヒットに導いたのも、話題性に弱いライト・ユーザー層だろう。『ミヨリ』の視聴率は『時かけ』を越えたそうで、テレビ番組としては成功といっていい。そこにマニアがかみつくのは、完全にお門違い……と思うんだが、山本二三を知らないような人が、最近は「アニメ・ファン」だったりするから、話はややこしい(笑)。

俺は、一年前に「若いファンは今を楽しめ。過去作品なんか見なくていい」と書いた。研究熱心なヤツは、20年前、30年前に遡って作品を見るはずだからだ。だけど最近は、(アニメに限らないと思うけど)ファンというよりは口うるさい「消費者」ばかりが増えた気がする。作品の酷評ばかりか、配収、DVDの売り上げを笑い飛ばす。他人の失敗が楽しいんだ。雨の中から子猫を拾ってくるような愛すらない。鳥肌が立つぜ。

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コメント

自分のイメージしている物と同じでないと納得しない。人の価値観を受け入れられないという狭量を表に出してしまうのはあまり格好良くないと思いますよね。クリエイター(この単語はこそばゆくてあまり好きではないのですが、何か他にないですかね?)も柔軟な頭でいたいものです。

投稿: ハム船長 | 2007年9月 3日 (月) 06時02分

>最近は、(アニメに限らないと思うけど)ファンというよりは
>口うるさい「消費者」ばかりが増えた気がする。

この辺り、『下流社会』に出てくる「教育サービスの買い手」を
読んでいても思いました。
消費者が当事者と近い気持ちになれるところがオタク文化の良いところ
だったと思うのですが、最近はどうも変わってきているようですね。
とても気になるエントリでした。

投稿: 渡辺 | 2007年9月 3日 (月) 06時28分

■ハム船長さま
クリエイターという言葉は、確かに一種まやかしじみた響きがありますね。この場合は、ビジネス展開を構築するプロデューサーなども含めて「送り手」って感じでしょうか。
アニメ・ファンが新しいものに柔軟かというと、これがとんでもない間違いでして……

■渡辺さま
最近は被害者意識の強い人がとにかく多いですね。たとえば、アニメ映画を上映するにしてもイベントを開催するにしても「私の住んでるところではやってくれない」と、わざわざ書き込んでみたりする。
「何とかして現地に赴く」という発想がないんですよ。

>消費者が当事者と近い気持ちになれるところがオタク文化の良いところだった

まったく仰るとおりですね。変わってしまった理由のひとつは、ネットにあるんじゃないかと僕は思っています。

投稿: 廣田恵介 | 2007年9月 3日 (月) 13時32分

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