■キキ、48歳■
EX大衆 8月号 発売中
●アイドルのキス顔チュ! 辰巳奈都子
辰巳奈都子さんといえば「確か『スウィングガールズ』でトロンボーンを吹いていた→トロンボーンは唇で吹く→キス」という童貞的思考プロセスを踏んで執筆したミニストーリー。
誌面のあちこちに「創刊2周年!」と書いてあるので「あれ、まだそんなもんか」と思っていたら、「アイドルのキス顔」は次号で連載1年だよ。「おいおい、一年もキスシーン妄想かよ!」と我ながら驚くやら呆れるやら。
日本映画専門ブログ「Hoga Holic」
一応、アニメ&特撮担当ということで、第一回は『Genius Party』の簡単なレビューを。http://channel.slowtrain.org/hogaholic/
金曜ロードショーで『魔女の宅急便』をやっていたので、定期的にジブリ作品を放映するのは洗脳っぽいからやめて欲しいなぁ……と思いつつも、珍しく見入ってしまう。
この作品の公開は89年。当時、別の大学で映画を専攻していた年上の女性と「宮崎駿って知ってる?」という話になり、それで観に行ったんだった。その頃、まだまだ宮崎駿の知名度は一般的とは言えなかったと思う。ジブリにも、今みたいなナショナリズム臭はなかった。
それで、勢いで観に行ったあと、あまりの道徳臭さにゲンナリした記憶がある。特に、ウルスラが黒猫のヌイグルミを直す時に「交換条件」と言って、キキに掃除をさせるところ。子供が労働するのをいちいち見せるのは嫌味っぽいよなぁ、と。
ところが、今回はキキの一挙手一投足にドキドキさせられた。その思慮の浅さ、考えの至らなさも含めて、まるで目の前で息をしているかのようだった。
それはおそらく、宮崎駿がこの作品をつくっていた年齢に俺が近づいたせいだろうな、と思って『雑想ノート』の年表を取り出して計算してみると、宮崎駿は当時48歳。今の俺より、まだ歳上です。その歳で13歳の少女の悩みだとか内面なんてものを描こうなんて、嫌味でなく本当に見上げた挑戦心だ。『出発点』に収録された企画書(「KIKI 今日の少女たちの願いと心」)を読み返してみたが、どうも映画の外枠を語っているだけのようだ。キキは、作家自身が少女に“なる”ことなしには描けないよ。48歳のオッサンの脳内・身体から、13歳の少女をジェネレイトする。その能力あってこその作家なんだ。
…と、そんなことを思っていたら、『出発点』159ページに「少女は、自分の外に生きているのではなく、自分の中に飼っている自分自身なのだ」という一文が。これは83年に書かれた文章だけど、もう間違いないでしょう。キキは48年分の人生経験を持った「少女」だったわけです。それが実際の13歳と比べてリアルかどうかなんて、まったく関係ない。ちょこんと挨拶したり、フンとすねたりするあの挙動ひとつひとつに48年分の重みが加わってるの。アニメというのは「撮る」だけじゃなくて「演じる」ものでもあるんだね。
ジブリアニメが国民的映画のように扱われるようになったのは気味が悪いんだけど、宮崎駿という作家はまだまだ奥が深くて面白い。(新作が楽しみって意味じゃなくて)
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