■通過点■
5月某日、銀座の路上にて、編集長がふいに言った。
「最近、萌えフィギュアは?」
「そっすねえ……ちょっと飽きちゃったかも」
「なんだ、飽きちゃったのかあ……」で、飽きた頃に←のようなものが宅急便で送られてくる。
数時間後、新宿。学生時代の友人と半年ぶりぐらいで会う。飲酒。
「こういうフィギュア、どう思うよ」
「こういうのを買うと誤解されるだろ? 現実の女と話が出来ないんじゃないかとか、離婚の原因もコレなんじゃないかとか」
「まあ、何がしかの埋め合わせなんじゃないか、という気はしてるな」
「俺はフィギュアは買わないが、脳の別のところで“フィギュア嗜好に似た性質の欲望”は感じているはずなんだ。だから、俺はコレは買わないけど、コレを買うお前の気持ちは分かるんだよ」
「俺がこのフィギュアに反応した脳の部位……まあツボとでも言おうか。そのツボはお前にもあり、誰にでもあり、単に向けられる対象が違うってだけのことかな」
「しかし、そのツボが存在することすら 認めない連中が大半さ。そういう奴らは、他人の趣味を自分のそれと置き換えて考えることが出来ない」
帰宅後、酒にも疲れ、寝る支度をしていると携帯が鳴る。もちろん、“現実の女性”からではない。“現実の男性”からのお誘いだ。
「えーっ、今から飲みに来いっていうの? 何時だか分かってる?」
断ると寝覚めが悪いので、さっさとシャツを着て出かける。某所某店にて、たちまちアーリー・タイムスのボトルが空く。
ひとしきり話した後、横についた女の子が言った。
「とにかく、前に進んだ方がいいと思う。人生、どこでどう好転するか分からないから」
「あのな。人生好転すると思って進んだ結果が、離婚だったんだが」
「そんなの、結果のひとつに過ぎないじゃない? あなたが困ったときは、きっと周りの人たちが手をさし伸ばして助けてくれるよ」
「ふぅん?」
「何だか、そういう人だって気がするのよ」
翌々日。前日飲まなかったせいか、珍しく朝早く起きる。携帯が鳴った。
「えー、実は知り合いの女性の友達が(-46文字削除-)で、(-13文字削除-)らしくて、とにかく助けて欲しいんですよ」
「俺、明日イベントなんだよ! そもそも、女がらみで、どうして俺を呼ぶよ?」
もう分かった。俺のところにやってくるものは、今後すべてトラブルである。耽溺する時期も、傍観する時期も終わった。もはやこの人生には「実動」しか残っていない。すべてに意味があり、すべてに結果が待っている。ならば、対峙するまでだ。
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コメント
こないだはどうも。アレの感想はもう少し待ってな。
そりゃそうと、こうして読むと、お互いなんかしらまともっぽい会話をしていたような気がするから、すげぇ不思議(苦笑)
投稿: ナベ | 2007年5月16日 (水) 14時20分
■ナベ様
だって、思い切り煩悩の話してたもんね。 ああいう話は若造とは出来ないし、俺は面白かったよ。
投稿: 廣田恵介 | 2007年5月16日 (水) 14時41分