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2007年5月20日 (日)

■エロゲもロックだ?■

もう時効だと思うので軽く聞き流してほしいんだが、僕は美少女ゲーム、いわゆる18禁ゲームの企画をやっていた。なんで僕のところにそんな依頼が来たのかは、いまだに分かりません。確か、エロゲをよく知らない人だから新鮮な企画が出せるんじゃないかとか、そんな理由だったと思う。

あ、思い出した。そのメーカーがプレステ用に恋愛シミュレーションをつくっていた頃、シナリオのデバッグをやらされたんだ(笑)。当時は『ときメモ』とか、もう徹底的にバカにしてたんだけど、そのデバッグやったゲームの中に一本だけすごく泣かせるシナリオがあって……でも、俺が気に入ったそのシナリオは、オタク(その頃は、かろうじてオタクという言葉が「男性名詞」であって、いわばまあ、電車男みたいな二次コン的な童貞青年のことを指していたように思う)には評判が悪かったらしい。まあ、とにかく俺はその手のゲームを初めてやって、初めて泣いたんだ。認める気になったんだ。
その時のことを覚えててくれたのかな、だいぶたってから今度は18禁ゲームやるから、アイデア出してくれ、と。僕はエロゲをプレイしたことなかったけど、二次コン的な嗜好はあるし、案外と楽しく企画書を書いた。でも、メーカーさんには「面白いじゃないの」と受けが良くても、クライアント、監督、シナリオ作家が入ってくると、「この企画は、ユーザーの神経を逆なでする」と言われて、毎回えらく難航した。

俺はたとえ二次元のエロゲであろうと、恋愛やセックスを描くからには「実体験」という裏づけが必須だと思っていた。だから、プロットやキャラの性格づけは、とぼしい実体験をベースにしたはずなんだ。……あのねえ、どうもそれがいけなかったらしい。そんな自然主義的な考え方、エロゲという妄想最重視のジャンルには無用の長物で、「ユーザーの神経を逆なでする」以外のなにものでもなかったんだ。
当時は、『痕~きずあと~』がヒットしていたんじゃないかと思う。ただ、俺はプレイしなかった。そんなことより、実体験をどうアレンジするかが大事だと思っていた。バカだね。
その頃、エロゲならではの絵の志向だとか(例えばエロ漫画とはユーザーの好みが違うんだとか)、独特の構図や塗り方だとか教わりはじめたんだけど、「なんか好きじゃないな」と一蹴してたようなような気がする。「この表現形式なら、もっと“リアルな”ストーリーが展開できるはずなのに!」とか文学青年のようなことをよく口にしていたと思う。
壮大な勘違いだよね。日活ロマンポルノかっての。
果たして、エロゲという形式から生じた文学が『ひぐらしのく頃に』なのだと気がつく。もちろん、俺がイメージしてたエロゲ発の文学というのは、『ひぐらし』とはぜんぜん違っていて、もっと実体験的で……って、ホラね。気がつくと「実体験」という言葉を使っている。それがアカンのですよ。それがオヤジなのですよ。
だから、俺の考えたゲームは売れなかったみたい。賢いプロデューサーが制作費を節約してトントンだったのが一本あったぐらいじゃないだろうか。

相変わらず不勉強な僕は、エロゲというものが今どうなっているのか知りません。離婚した今も、買ってみようとは思いません。
ただ、あの頃すでに若いオタクとは徹底的に感覚がズレていて、奥歯で銀紙を噛んでしまったような、あの嫌な感触は今でも続いている。そしておそらく、その嫌な感触を消すまいとどこかで思っている……周囲の同世代人は、違和感を消そうと若い人を教育しようとしてるけどね。80年代がいかに豊潤だったか、その歴史のありがたさやなんかを。
けど、僕は奥歯で銀紙を噛み続けるだろう。つまり、若い世代に負け続けていこうと思う。それは、僕が実体験でしか世界を感じられないから。「嫌だ」と感じたものには、ほぼ間違いなく大事な何かが隠されているような気がするのだ。

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コメント

私も「オヤジ」ですね徹底的な(笑)

「実体験」に基づくストーリー大好き(笑)

投稿: yuki | 2007年5月20日 (日) 12時50分

■yuki様
ある年齢をすぎると、「実体験」重視になるよね、どうしても。
男女を問わず(笑)。

投稿: 廣田恵介 | 2007年5月20日 (日) 13時14分

自分もエロゲはやらないですね。
まぁ、Macだしw
メガゾーン23エロゲ版とか出たらやってしまいそうですがw

投稿: ギムレット | 2007年5月20日 (日) 22時50分

■ギムレット様
エロゲに関しては、どっかの年齢でパキーッと絶対境界線があるように思います。

>メガゾーン23エロゲ版とか出たらやってしまいそうですがw

ううむ…ノーコメント(笑)

投稿: 廣田恵介 | 2007年5月21日 (月) 00時48分

私はバーチャル派です。
実体験は「嫌だ」と感じるんですね。
ある層の女子に「やおい」がどうして好まれるかをずっと考えています。

投稿: 眼鏡屋 | 2007年5月21日 (月) 01時09分

■眼鏡屋さま
既読かも知れませんが、月刊「創」連載の岡田さん×唐沢さんの対談より、岡田さんの発言を転載します。
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昔、僕がやおいのお姉さんから聞いた説明は、男女の恋愛を描くと本音が出てしまう。でも小説の中では理想を書きたい。でもその理想に嫌な本音が入ってしまうのは耐えられない。つまり彼女たちは「女が嫌い」だからではなく、「本音が嫌い」だから男同士の恋愛を描くんです。
---------
これって、男性のエロゲ嗜好にも転用可能かも知れませんね。

あと、僕は実体験が異常に不足している人間です。妄想力が足りなかったから、代わりに実体験を補給しなきゃいけない。ただし、それを他の人には強制しない。「負け続けてこう」というのは、そういう意味なんです。

投稿: 廣田恵介 | 2007年5月21日 (月) 01時37分

 お久しぶりです。大学生活のため転居以降、ようやくネット環境が整いましたので、せっかくですので。

 昔「廣田恵介」で検索した際にエロゲのスタッフ欄に発見してしまった記憶があります。当時は確か18歳ですらなかった気が(笑)。

 都会に出てきて、毎日のように流れる深夜アニメを見流していると、実体験による裏づけの無さをどっかで蔑みながらも、妄想集積がイキイキと画面上を飛び交っているのを真正面から楽しめるってのにも、少し羨ましがってみたりと。
 個人的にはこういう文章を読むとむしろ「妄想」と「実体験」の間にある連続点みたいなものを捕まえてみたくなるような気にも…。

投稿: 朝の銀狐 | 2007年5月21日 (月) 02時26分

■朝の銀狐さま
ああ、ご無沙汰です。ついに大学生になりましたか、うらやましい。いっぱい遊んでください。

>昔「廣田恵介」で検索した際にエロゲのスタッフ欄に発見してしまった記憶があります。

普通は、みんなエロゲの仕事はペンネームでやるんですよ。僕はそれが「逃げ」だと思ったので、すべて実名を出しています。
思えば、そのこと自体がこのメディアに対する勘違いだったのかも知れないですね……

>「妄想」と「実体験」の間にある連続点

妄想は実体験をサンプリングしたもの、と考えがちなんですが、どうもそうではなく、アニメやゲームで「お約束」と呼ばれているパターンそのものが、実体験と同等の重みを持つ場合があるらしい。
妄想をサンプリングした妄想。それが実は最も強力な表現であり、そのため、あちこちで断絶が起きている。そのことを一概に「嘆かわしい」と僕にはいえません。

投稿: 廣田恵介 | 2007年5月21日 (月) 10時22分

「現実」と「理想」があるとして、私の場合は
アニメやゲームには理想を求めますね。

「虚構だからこそ、リアリティを追求するべき」という考え方と、
「虚構だからこそ、現実を想起させるものに触れたくない」
という考え方があるのかなと。

私は「設定」はリアリティがあってもなくても良いです。
「人物の心理」がリアルでさえあれば。

投稿: 眼鏡屋 | 2007年5月21日 (月) 11時25分

■眼鏡屋さま
>私は「設定」はリアリティがあってもなくても良いです。
>「人物の心理」がリアルでさえあれば。

まったく同意見です。その通りなんです。
誤解されると困るのですが、僕は毎日ゲーセンに通ってましたし、お気に入りの恋愛シミュレーションはいまだに捨てられずに持ってます(笑)。
ただ、たまたま今の僕は実体験を求める時期に入っている。その方がより虚構を楽しめるような気がするんですね……

投稿: 廣田恵介 | 2007年5月21日 (月) 13時19分

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