« ■アニメを解体しよう■ | トップページ | ■人生のための仕事■ »

2007年3月21日 (水)

■アニメ・バブルの片隅で■

『奏光のストレイン』 waltz.Ⅱ 23日発売!
St3
●ブックレット 構成・執筆
アニメ・バブルの中で、ちょっと埋もれがちなアニメなだけに、ついついブックレットにも力が入ってしまいます。
見ていて、「ああ、80年代っぽいな……」と感じてしまうのは、『ゼーガペイン』同様、“物語る”ことに特化したアニメだから。メカはともかく、キャラクターに互換性がない。つまり、「このキャラで別のストーリーを物語る」というのは出来ないようになっている。かつて、それは完成されたアニメの特徴だったと思う。『ストレイン』は、ファンなら知ってるとおり、『小公女』がモチーフになっている。その控えめだが堂々たる“文学性の表明”に僕は好感を持つ。ただ、それが今の時代に有効なのかどうかは、正直わからないね。でも、支持している人たちは、その時代とのズレも込みで愛してくれていると信じている。

さて、アニメ・バブルの余波で埋もれっぱなしのアニメについて、面白い話を聞いた。
Pict0011←これなんすけど。『流星戦隊ムスメット』。ちゃんと公式サイトもある。 僕はこれ、ぜんぜん知らなかった。映画監督の友人が、「実写映画にしたい」と言って、嫌がるメーカーから無理やりDVDを借りてきた。この「メーカーすら隠蔽したがる」という点が、また彼の心にグッときたらしい。ようするに、作り手にとって、このアニメの存在は「ちょっと恥ずかしい」ってことだ。かつて、ダニメ・ライブラリーを義務のように書いていた俺は、思わず身を乗り出したね。
で、よくよく話を聞くと、「10人ぐらい熱狂的なファンがいる」らしい。100人じゃないよ、10人だよ。それじゃイベントも出来ないよ! でも、彼は「こんなマイナー・アニメを支持している10人のことが、すごく気になる」と言う。『ムスメット』じゃなくて、『ムスメット』を追っている「10人のファン」が、彼の創作意欲のトリガーを引いた。その10人のために、彼はクリエイターとしてリスクを背負うと言うわけ。その時点で、もう「たった10人」ではないよね。「選ばれた10人」だよ。
『ナウシカ』を好きな人は100万人ぐらいいるだろう。でも、だから『ナウシカ』の方が優れているという証拠にはならない。『ナウシカ』を好きな10人と『ムスメット』を好きな10人では、すでに「一人当たりの愛情の濃度」が違うのだ。作品にとって、どちらが幸せであるかは、もはや説明するまでもあるまい。

人と作品とは、しばしばこのような甘美な関係を結ぶ。世界でたった10人だけが『ムスメット』の聖なる秘密を探り当てたのだ。我々には感知しえない、何かを。
実際に、『ムスメット』のDVDを見た友人は「俺には、何がいいのか分からない…」とうめくように呟いた。だが、その呟きには「ムスメットの神秘」に触れている「10人」への羨望と、純粋な驚きとが込められていた。クリエイターたる彼は、その「10人」に未知の領域があることを教えられたのだ。
崇拝や信仰は、何も教会の中でだけ起きる感情ではない。宗教的な体験は、アニメ・バブルの片隅で、ワゴンセールにかけられたDVDのビニールが破かれる瞬間、そこここで起きている。……明日、東京国際アニメフェア2007開幕。果たして奇跡は見つかるか?

|

« ■アニメを解体しよう■ | トップページ | ■人生のための仕事■ »

コメント

こんにちは。
『ムスメット』夜中たまに観てました(笑)
主題歌のサビも歌えますヨ。。。


投稿: ローテブリッツ | 2007年3月22日 (木) 09時30分

11人居る・・・・

投稿: nanasi | 2007年3月22日 (木) 12時41分

ストレインの監督の邊哲とはVガン以来の腐れ縁ですので
よろしくです。でも決して奴の作品を自ら観たり褒めたり
はしないのは、奴が僕の下僕だからです(笑)先日も飯を
食べた時に、メカデザインのディレクションに関してダメ
出しをしちゃいました。

ムスメット・・・僕も何回か観ましたよ。

投稿: gakky | 2007年3月22日 (木) 13時21分

■ローテブリッツ様
主題歌なんて、一度も見たことのない僕には、遠い異国の音楽です(笑)。
もう、頭の中ではどんどん妄想が膨らんでいく……

■gakky様
いや、『ストレイン』のメカ演出はかなり良いと思います。
今度、DVD持って遊びに行きますよ。

>ムスメット・・・僕も何回か観ましたよ。

あれ、なんでみんな観てるんですか?
ひょっとして、「選ばれた10人」の一人?

投稿: 廣田恵介 | 2007年3月22日 (木) 20時19分

演出ではなく、ストレイン各機のフォルムが突き抜けていないので、
そこをデイレクションするのがお前の仕事じゃろ〜と突っ込んだの
です(笑)それによって、デザイナーのE君も経験値を得るのです。

投稿: gakky | 2007年3月22日 (木) 21時19分

■gakky様
ああ、そういう意味のディレクション。
実はブックレットをやっているとは言っても、スタッフさんの
インタビューとかやらない方針なのが残念ですよ。

投稿: 廣田恵介 | 2007年3月22日 (木) 21時41分

はじめまして。
ムスメットのDVDは声優ファン的には松本彩乃と麦人の為に買いでしょう。
私は放送時の録画データをRとRAMで保存してますからいらないですけど。
ストーリーはコミック版の方が映画にしやすいかもしれませんね、でもオトメット出せないなぁ。

投稿: 臨川庵 | 2007年3月22日 (木) 23時54分

■臨川庵さま
はじめまして。その松本彩乃さんを調べてみましたが、
まさに『ムスメット』でデビューした方なんですね。
その人と麦人さんという取り合わせが、すでに分りません(笑)

>ストーリーはコミック版の方が映画にしやすいかもしれませんね

そうなんですか、情報ありがとうございます。
もし仮にやるとしても、かなりの低予算映画だそうです。

投稿: 廣田恵介 | 2007年3月23日 (金) 03時17分

ムスメットは途中のサンバルカンもかくやの主役交代劇(多少嘘)や、思い出したかのように挟み込まれるヲタネタがたまらなかったですけどね。番組最後のイベント映像も楽しかったし。生暖かく見守るべき作品かと。
個人的には、ムスメットだけをピックアップするよりも、地球上に10人くらい居るであろう六月十三ヲッチャーを探し出して欲しいですね。

投稿: manifo | 2007年3月23日 (金) 15時45分

■manifo様
書き込みありがとうございます。
manifoさんの仰るイベント映像ですが、監督は何とか
メーカーさんから借りようとしているみたいです。
ただ、やはりメーカーはかなり嫌がっているとか(笑)

>地球上に10人くらい居るであろう六月十三ヲッチャー

そう、作品そのものより「10人」の方が気になって
しまいますよね。
でも、六月十三というくくりだと、100人はファンが
いそうな気がしますけど、どうなんでしょうかね。

投稿: 廣田恵介 | 2007年3月23日 (金) 21時09分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: ■アニメ・バブルの片隅で■:

« ■アニメを解体しよう■ | トップページ | ■人生のための仕事■ »