■夷の地■
徒歩5分の場所にあったキャバクラ、本日閉店。原稿が山とあるので、唯一メールの続いていたネコパンチさんに「行けなくてごめん」と謝っておいた。そうか。朝4時にあの線路下をくぐってマンションに帰る、ずぶ濡れのネコのような惨めな気分は、もう味わえないわけだ。
ネコパンチさんは、たまたまムーンライダーズの『ニットキャップマン』を知っていて、それで覚えていただけだった。ひどいことを言うと、はっきり顔さえ思い出せない。だから、店に行っても三度に一度ぐらいしか指名しなかった。王子バーに連れて行くと約束して時間まで決めておきながら、二日酔いでドタキャンしたことさえあった。
そんな捨て猫あつかいをしてきたのに、ネコパンチさんは「もし私がいなくても、お店に寄れたら寄ってね」と最後にメールしてきた。彼女は彼女なりに、自分の店を愛していたのかも知れない(※ところが、一ヶ月もしないうちに再オープンした。この業界ではリニューアルを「閉店」と呼ぶ)。
キャバクラは、女が男をだまして金を貢がせるところ、とよく言われる。数ヶ月で百人以上のキャバ嬢に会ってきたけど、あからさまに「どうしても相談したいことがあるので、今夜会いたい。ただし、お店で」なんて営業する「プロ」なんざ2~3人ぐらいしかいなかった。そもそもだ。人間というのは、出会った瞬間にある契約を交わすのだろうと思うわけ。「こいつとは仕事以外では酒を飲まんぞ」とか「会うときは誰かと三人で会うようにしよう」といった具合に、第一印象で勝手にそれぞれが決めてるんじゃないの。その手前勝手な思い込みが「契約」なのであって、だから相手が「こんど二人でメシでもどうです?」と契約違反を犯すと、腹が立ったり戸惑ったり、あるいは面白がったり。
キャバでの関係だって、それと変わんないよ。本気で惚れられてる、惚れさせてると思ってる連中は精神的童貞、精神的処女。「金さえつぎこめばヤレるんだろ、そのために通ってるんだろ」と蔑む輩は、「練習さえすれば何でも上手くなる」と思ってるお子様だね。
いずれは吉祥寺の行きつけのキャバも店を閉めて(こないだなんか俺一人しか客がいなかった)、俺の安住の地は減る一方だろう。でも、ゾーンダイクも言ってたじゃないか。「世界は滅ばない。ただ、変わるだけだ」って。
(ところでゾーンダイクの名前は、教育学者・心理学者のエドワード・L・ソーンダイクが由来らしい)
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コメント
どういう展開か忘れたけど、お店の女の子と「あか抜け一番」の話をして、それじゃあってんで、丹嶺幸次郎役をして、相手の子は雪華役をやりました。最初はだめーとか言って突き飛ばしてほしかった(笑)。自分にしてみればとってもサービスが良かったので、相手の子がすごいプロだったのか。あか抜け一番で盛り上がったせいかも、と思っているのですが、それも相手のテクニックなのかなあ。
投稿: レッドロック | 2006年10月11日 (水) 12時35分