■下敷きをスキャン■
歩いて10分のところにアニメスタジオがあるので、原稿の合間に素材もらいに行ったりできる素敵環境。それが三鷹。ペルシャとかマミのポジを借りてきた。ブロッコリーの会長さんは、やはりカッコよかったぞ。(どうせ誰も読んでないだろうけど)「フィギュア王」103号に載せられなかった富野監督の言葉が頭をよぎった。確か、こんなやりとりだった。
「でも、『リーンの翼』のDVDが売れないと監督は困りますよね?」
「なんで困るの? 僕は『リーン』が百年後に残ってくれれば、それでいいもん」
「百年ですか?」
「少なくとも、十年後に残す勢いでつくらないと、みんな2~3年で忘れちゃうから」
まあ、今は半年前の作品ですら覚えきれないけど……今、オタクに必須なのは知識や教養じゃないんだよ。別に『ヤマト』なんか見てなくても平気だから。本気で、昔のアニメを見る必要なんかないと俺は思う。そんなことより、イベントや握手会に並ぶことの方が大事だって。そのライブ感というか即時的な“現場感”をいかに早く濃く味わうかが、今のオタクにとっての課題なんだよ。
それを「間違っている」などと言う権利は、誰にもない。残酷なことを言うけど、声優さんが亡くなるたびに泣くのは旧世代だけでいい。
今回はかなり無理をして古い作品の画像を集めていて、スタジオにポジがない場合は当時売られていた「下敷き」をヤフオクで落札してスキャンという荒業も駆使している。アニメ文化って素晴らしいよね。黒沢映画の下敷きなんかないもんね。
で、ヤフオク使ったのは初めてだったけど、これなら絶版になった萌えフィグが買えるじゃん! 絶版っていっても、半年とかそのぐらい前のだよ。PVC完成品ですよ。(←こういう年代ものは、地方の模型屋で丹念に探した方が楽しいぞ)
だから、ヤフオクもそうだし、スピードだよ。今のオタクが獲得しなきゃいけないアビリティは。
きっと十年後、「あの頃のアニメは、やけに数が多くて、DVDなんか買ったそばから売ってたよね」と懐かしむ時代がくる。それだけのことだよ。だから、アニメっていう異端だった文化も、立派に時代の影響、時代の風を受けるようになったんだよ。どんどん使われて、どんどん忘れられていくのは健全だと俺は思う。たまに、気のくるった人が「百年後に残す!」といってつくるんだから、それでバランスがとれてるの。
取材続きの中、どこへ行っても「アニメ雑誌ってのは面白いんですかね?」という話題になる。ネット配信の時代に、月一冊だからね。俺はジジィだし、業界周辺で食べさせてもらっているので買ってますけどさ。これ、上にハチクロの10巻でも乗せないと恥ずかしくて買えないよ、やっぱり?
もうひとつ、今のオタクの課題は「モテ」なんじゃないかと思う。結婚観や恋愛観なんて、昔のオタクは話さなかったんだ。今は「ヲタとモテ」は不可分になっている(もちろん、モテない方のモテ)。メイド喫茶が出てくるのは必然だったんだよ。あれは、もっと厳粛に受け止めないと。
メイド喫茶にしてもレイヤーにしても、今のヲタは自意識が強いんだよ。雑誌は、それをもっと敏感に受け止めないとさ。高見からエサ投げる時代じゃないんだよ。
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