■旅は続いていた■
本屋でオビに書かれた文句を見たとき、「あっ」と叫びそうになった。『ヨコハマ買い出し紀行』が終わった。 部屋に帰ると、自分がこれを手にしたことの意味が、ありありと分かってきた。もう僕には、この漫画が必要なくなったのだ。だから、“終わってくれた”のだ。
北海道から帰ってきて以来、僕にとって(漫画を含む)フィクションのありようがすっかり変わってしまった。
北海道の原野を歩いているとき、はっきりと自分の内側と風景との境が消えていくのがわかった。頭で空想したものと、いま目の前にしているものとを分けて考える必要がなくなってしまったのだ。
この感覚を人に伝えるのは、大変難しい。つまり、僕が今日、『ヨコハマ』の最終巻を見つけたことも“旅の一部”だとでも言えばよいのだろうか?
『ヨコハマ』については、二度だけ書かせてもらえる機会があった。この漫画は「癒し系」などと“誉め捨て”られることがほとんどで、あの秘めやかで甘美な絶望を味わった人間は果たして何人いたのかな、と思う。
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