横須賀で取材で時間ができて、あまりに天気が良くて、それで一人で江ノ島へ行った。
結婚時代には、いつもあきらめなくてはならなかった(犬を連れていたため、中に入れなかった)展望灯台があることを、現地に着いてから思い出した。
広さ、高さ、ロケーションともに言うことない。何しろ、電気がなくとも歩いて昇ることが出来る。ここなら主人公たちが住める。
決めた。江ノ島に泊まって、小説を書こう。というか、一部は書いてきた。断崖に面した料理屋で、天ぷらと湘南ビールと、メモ用紙を机に並べて。
水平線が、さざなみの音を連れてくる。
誰も僕を邪魔しない。仕事のことは、明日考えればいい。
下心も煩悩も、陸地に捨ててきてしまえ。
コメント
廣田さま、
ごぶさたしております。
15年ほど前に江ノ島は訪れましたが、展望灯台がすぐには思い出せませんでした。15年前、当時ぼくは関西から神奈川に移り住み、その時付き合っていた遠距離恋愛の彼女が遊びにきたときに一緒に行ったのです。
すごく不思議な写真で、「ここなら主人公たちが住める」との言葉に、誰も知らないどこか別の場所のエノシマの風景が広がりました。
料理屋や土産物屋には、貧乏だった僕らは入ることも無く、くるりと島をまわっただけでした。
今の僕なら、廣田さんと同じようにてんぷらとビールをいただいてるなと思うと、そのときの思い出が、もう、印象に残っているフィクションに思えて、そんな気分も、別の場所のエノシマを思わせたのかもしれません。
小説、楽しみにしています。
投稿: ユキサダ | 2006年4月26日 (水) 23時47分
■ユキサダ様
ご無沙汰してますー。江ノ島が思い出の場所だという人は多いんですね。
僕は思い出ってほどのことはないのですが、異界というか聖地だと思ってます。
>誰も知らないどこか別の場所のエノシマの風景が広がりました。
フィクションとノンフィクションを、このblogではわざと曖昧にしているのですが、「書く」という行為によって虚構と現実は互いに補い合って、最も強力な表現になると思うのです。
どうして主人公たちが展望台(しかも江ノ島)に住まなくてはならないのか、ちゃんと理由は出てきます。
嘘も本当もシレッと書けてしまうのが「書く」ことの強さですから、楽しみに待っていてください。
投稿: 廣田恵介 | 2006年4月27日 (木) 17時48分