■KYOUKOUGATA■
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私たちは、ごく小さな街に暮らしていた。だが、越してきて間もなく再開発とやらで駅前に小綺麗なデパートが出来た。安いマンションに暮らす私と妻は、寝具売場で買えるわけでもないベッドに横になったり、最新のデザインの冷蔵庫を品定めしたり、そのデパートをちょっとした遊び場にしていた。
小さな街だったから、知り合いにもよく会った。デザイナーの女友達は結婚前からの知り合いで、独り身だが明るく、ショートヘアの良く似合う美人だった。だが、妻は私が彼女に軽く好意を持っていることを察してか、あまり彼女と話すことはなかった。
年の瀬も迫った頃、私と妻は連れだってデパートへ向かった。もう日が暮れかけていたが、帰宅時間なので人通りは多かった。広場の一角にテントが設けられ、消費者救済云々、と書かれていた。私は何のことかと首をひねったが、妻は「あんなのサラ金じゃないの、ねえ?」と口をとがらせた。どうやら生活の苦しい人に金を貸し出す機関のようだった。私たちも暮らし向きは明るくなかったので、妻のいらだちは分かった。
デパートの2階に広場が直結していて、プラネタリウムの投影機を模した大きなオブジェが飾られていた。非常に凝ったつくりで、星座盤がいくつも埋め込まれているのが、エスカレーターからよく見える。店内に入ると、天井から『アジア映画の全貌』と書かれた看板が下がっていた。妻は、私が学生時代に映画を専攻していたことを知っていたので、「ああ、たまに上映会みたいの、やってるね」と反応した。が、私が映画に再び没入することを警戒してか、その声は冷ややかだった。私は、以前なら一人で駆けつけただろうにな、と心の中で苦笑した。
今日は寝具売場を冷やかすこともなく、エスカレーターを乗りついで屋上へ向かった。小さなジェット・コースターのような乗り物が出来たというので、妻と乗るつもりだったのだ。それを聞かされた妻は、「うん、一緒に乗ろうね」と嬉しそうに手をつないできた。確かに、生活に追われている私たちには、ささやかで久しぶりの娯楽だった。
と、同じエスカレーターに例のデザイナーの女友達が乗っているのに気がついた。彼女は相変わらず一人だったが、やはり屋上の乗り物に乗りに来たのだそうだ。好奇心に溢れ、こうした新しい刺激を一人ででも楽しもうとする彼女が、私には眩しくすらあった。妻が強く私の手を握ったので、女友達は冷やかすようなことを言って、快活に笑った。
屋上のひとつ下の階では、何とかいう南洋の魚の展示会が行われていた。女友達は、妻と私をその展示会へ誘った。それは確かに珍しい魚だった。綺麗なピンクと白のまだら模様で、エイのように平べったく、タコのくちばしに似た排水口から水を吐いて、素早く泳ぐことが出来た。私はテレビでも、こうした珍しい生物を見るのが好きだった。今日はこの南洋の魚にショーをやらせるという。魚のショーはなかなかの見ものだったが、見物客は私たち3人だけだった。飼育係の青年が、懸命に盛り上げようと、魚に何度もジェット水流をやらせていた。「さあ、もう一頑張りだ!」などと呼びかけていたが、水の中で声が聞こえるのか、魚に識語能力があるのか、私は懐疑的になった。
だが、女二人は水槽の高さに腰を低くし、「可愛い!」と喜んでいた。魚は我々の手前まで泳いできて、大きなヒレをぱたぱたと振ってダンスのような動きを見せた。彼女たちは拍手をしたが、私は魚の突き出した目が面白いなと思う程度だった。だが、彼女たちの拍手に飼育係の青年も嬉しそうに笑って、魚の名前を呼んだ。「よく出来た、○○ちゃん!」
小さな水槽の中で健気に芸をこなす南洋の魚。仲間はいない。広い海洋も知らない。
私は、妻と女友達がしているように腰を低くし、次に魚が芸をしたら、拍手をしようと決めた。
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この夢を見たのは、別れた妻と知り合うずっと前のことだった。
ここに出てくるショートヘアのデザイナーというのは、今は旅行作家になっている元・友人(結婚したときに絶縁された・笑)を百億倍ぐらい美化した感じ。
実際に、妻とその元・友人が出会うことはなかった。
鼻筋がつーんと痛み、頭の後ろをコンとやると涙が出そうだ。昨夜、離婚以来はじめて「哀しい」という心情を味わった。痛恨、という感じだ。
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「日経キャラクターズ!」06年春号
●「2006年上半期アニメ炎上6番勝負」
フジテレビ 亀山千広氏インタビュー
スタジオジブリ 鈴木敏夫氏インタビュー
●映画『立喰師列伝』記念ロングインタビュー
数年ぶり(3年ぶりぐらい?)に押井守さんに会えた・その1。
●U.C.ガンダムアームズ Vol.07
今回はドムです。
「フィギュア王」98号
●立喰師外伝 押井守×河森正治対談
数年ぶりに押井守さんに会えた・その2です。押井さんは、すごくチャーミングな人。
●ピュグマリオンの小部屋
スターの大西美奈さんを取材。人形(ひとがた)をつくっていると、本当に神様が降りてきちゃうんじゃないだろうか?
●ブロック・キングダム Vol.2
レゴビルダーの直江和由さんを取材。レゴファンの人たちは読んでくれてるんでしょうか。
●パワー・オブ・アクエリオン Vol.∞
一応、新連載に続く……という形での最終回。もうアクエリオンの連載だか何だか分からないけど、着いて来られた読者は日本に何人いたのだろう?
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栄養ドリンクを2本も流し込んで、東京国際アニメフェアへ。
石井克人と小池健の『RED LINE』というのが凄そう。というか凄かった。超絶にカッコイイ。凄いアニメは、栄養ドリンクに勝る。
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「New WORDS」
●ANIMATION in other WORDS
『ノエイン もうひとりの君へ』レビュウ
こんなお洒落な雑誌に書けて、シアワセですね。
だけど、せっかくこういう雑誌なら実写の方も書きたいです。
最近、実写で依頼があったのって『立喰師列伝』ぐらい?
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三鷹に来てから怒涛のように酒宴が続いているわけだが、そろそろ飛ばないと。
もう準備はオッケーなはずなのだ。あれこれ旅行の計画を考えても、ちっとも「飛んで」ない。地べたで物事やってる感じが、すごーくする。
もうね、何をどうごまかしてもダメ。そろそろ飛ばないとダメ。
「飛ぶ」ってのは、何も9階にあるこの部屋のベランダから飛ぶわけじゃなくて、「書く」ことによって飛べると分かって、もう半年も経つし、フライトのための準備はしてきたわけだから。
この前、編集者に「30代のうちに書け」と言われて、どれだけ自分が地べたにいるか分かった。
このまま、どんどん延期するわけにはいかない。今夜、シノプシスだけでも書こう。
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「グレートメカニック20号」
●「映像都市の文化誌」
大阪取材の成果その2。今回から、あちこち旅して書きます。
●「10年目のエヴァンゲリオン」
現象としてのエヴァ、というのも書いていますが、オススメは大月俊倫さんインタビュー。成功した人間は、きっちりその対価を払っているのです。
●「オヤヂ酒場」
劇場版『Zガンダム』と『ノエイン』について、藤津亮太さんと語っています。
「EX大衆 4月号」
●「ガンダム的脅威のメカ、一挙集結!」
これは労作ですよ。永瀬唯さんのインタビューもあるし、かなり読ませるものになっているはず。
編集者も頑張ったし、藤沢孝さんにもイラストを描いていただき、不思議と力の入った仕事になったと思う。
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ある人に「廣田さんが結婚したというのはウソだと思ってた」と言われた。確かに自己申告なので証明のしようがない。そういや、離婚届が出された瞬間、俺はその場にいなかったし、俺の語っているすべてが捏造だと言えなくもないのだ。
そもそも、このブログ自体、本当にライターの廣田恵介が書いているのか? 俺は廣田さんとは縁もゆかりもない人なのかも知れないぞ?
つまり、「自分が自分である」という証明はどこにもないのだ。自分の持ち物なんか、実はひとつもない。
自由とは不安であり、安心は不自由だ。
強いて言うなら、その場その場で自分がとった行動だけが自分を決定していく。さみしくバーで一人酒、二日酔いで打ち合わせにいく俺ってどうなのよ。
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以前に「東京湾内の風力発電機を見に行く」と宣言したが、問い合わせてみると見上げるほど近くまでは入れない、とのことだったので、近からず遠からずで茨城県の波崎ウィンドファームへ。
ここなら、なんと12基のプロペラを一望することが出来るのだ。
周囲に何もないところなので、銚子駅前からタクシーで行く。片道数千円かかる。運ちゃんは機嫌がよく、他2ヶ所のプロペラにも寄ってくれた。が、実は銚子駅から近い田んぼの中にもプロペラがずらり並んでいるのだという。もっと早く言え。
高層建築好きとしては銚子ポートタワーも見逃せないので、たった57.7メートルだが、ここにも寄ってもらう。建築物としては味も素っ気もないので、数分で降りる。
「犬吠埼まで行きましょうか?」「もうちょっと行くと“地球の丸く見える丘展望台”ですよ?」そんなものより、駅前のボロボロのオモチャ屋が気になったので、電車が来る前にそこに駆け込む。不作だった。
目を閉じると、プロペラが風を切る音がした。ローターの直径は62メートル。なんと銚子ポートタワーが丸々入るサイズのプロペラが回転しているのだ。建築物として、どちらが“勝ち”であるかは言うまでもない。
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編集者と、ライターさんとその奥さんと4人、西荻でしたたかに酔った。
ライターさんには「会ったときから、ジュブナイルな印象だった」と言われ、その奥さんには「猫のようだと言われませんか?」と聞かれた。
午前3時には解散し、僕は一人で三鷹まで歩くことにした。癖である。森閑とした夜の街を徘徊するのが癖になってしまった。![]()
夜とは、他人である。無関心という名の闇のなかを僕は行く。![]()
こんな体験が、僕にたまにあんな甘美な夢を見させる。
とは言え、こうして便利なツール(携帯電話の写真機能)を使っているうちに、夢の啓示など、どこかへ消えうせてしまうのかも知れない。
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『ノエイン』DVD Vol.3
●ライナーノーツ構成
ユウの声優さんの名前が……すみません、次巻以降気をつけます。
発売は24日なので、まだ店頭には並んでないです。
「アニメーションDVDパーフェクトガイド2006-2007 愛と戦いのロボット 完全保存版 」 ●コラム『創聖のアクエリオン』
いろいろと首をひねる仕事ではあったけど、しかし本の出来は、なかなか良いと立ち読みして思いました。
富野さんや河森さんのインタビューもあるし、買ってもいいぐらい(献本はないだろうな、この様子では)
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なんと、新雑誌の巻頭インタビューの仕事が舞い込んできた。
なので、雨の中、寝不足のまま日テレまで。
日テレは、きれいなお姉さんが多くて眼福であった。この前、フジに行ったときはそうでもなかったのだが。
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『千と千尋』の完成前に宮崎吾郎館長(当時)やロボット兵を作った鯱丸さんに取材して以来、そのまんまだったジブリ美術館。ようやく行く機会が来た。
『水グモもんもん』にはホロリときた。こういうのこそ、映画館でやればいいじゃないの。
ただ、ここに来た今日の日の思い出というのは、結局美術館の外にあるんだよ。建物の中では決して完結しない。
インパクトとか感動というものは、もっとアクシデントであったり、偶発性の中にあるんだと思う。みんな、それを操作しようとしすぎだよ。
いや、すごい贅沢を平気で言ってるとは思うけど。ここまでの施設を目の前にして。
帰りは吉祥寺まで歩き、PARCOでシャツを一本買った。帰ってきてから試着したら、一番下のボタンが取れてしまった。やれやれ。
つまるところ、こういう「思い通りにいかねぇなあ」というつまらん部分が、いつの日にかの大きな感動の下地として蓄積されていくんじゃないか。
人生って密度だから、たくさんレイヤーを重ねたほうがいいんだと改めて思った。
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