■The living thing■
ライアンという名のその馬は、昼飯を食べ終わったばかりだそうで眠そうな目をしていた。だが、僕が近づくと鼻をならして頭を摺り寄せてきた。なんと優しく、静かで――神秘的な生き物なのだろう。
そして、ライアンの背中に乗ったとき、どうして僕がここに来たのか、ハッキリと分かったような気がした。また「高さ」だ。この生き物に乗ると、否応なく目線が高くなるのだ。「視線はまっすぐ、遠くを見るように」とインストラクターが言った。その言葉が、呪文のように僕をとらえる。
そして、小さな練習場はまたしても円形。観覧車も円形ならば、展望台も円形。高さと円の間には、なにか神聖な意味が込められているように思えてきた。高いところは、丸いところ。
そんなことよりも何よりも、別の生き物と呼吸を合わせてひとつの運動をするということの面白さを、僕は持ち帰ってこなくてはならない。馬のことを知るのに馬の本を読むのは、もうウンザリなんだ。
ヘリのことを知るのにヘリの本を読みたくないので、明日はヘリに乗ってくる。そういえば、ヘリのローターも円形じゃないか。
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