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2005年11月13日 (日)

「祭りの日」

 三日続いた祭りの最終日であった。徒歩で十分ばかりの友人の家に遊びに行った。ゲームをしたりビデオを見たり無為な時間つぶしにも飽きた頃、友人の妻子のご帰宅となった。彼の娘は、紺色の腹掛をつけていた。子供神輿でもかついできたのだろう。

 家族が簡単な身支度を整えると、我々は祭りの最後の出し物である山車見物に出掛けた。

 沿道に立つ我々の目の前に一台の山車が止まったが、その山車は笛を吹くのも太鼓を叩くのも、おしなべて十歳以下の少女であった。学友を見つけたのか、太鼓のばちを振り振り沿道に人なっこい笑顔を向ける子がいる。一心不乱に太鼓を叩きながら、時たまちらりと視線を観客の方へ流す子がいる。大勢の人を前にして羞恥が生じたのか、それとも矜持か。いずれにしても、まるで余裕のない表情が彼女の心中に想像を向かわせた。

 しかし、特別に私の目を引いたのは、楽屋から上半身を伸ばし、舞台に散らばった紙吹雪を床に這いつくばって拾い集める少女だった。その作業が、どれほどの重要さを持つのかは分からない。ただ、彼女は一旦は楽屋に引っ込みながら、また小さな手を伸ばして細かな紙切れを周到にかき寄せるのであった。演奏の邪魔になるまいとする、その手つきの慎重さ、眼差しの神妙さが彼女の性格を曇りなく伝えているように思えた。

 私はそんな彼女の行いを友人に教えようとしたが、口がぱくぱくするだけで言葉にならなかった。

 間もなく、友人の家族と別れた。友人の娘が母親の背中から私に残した「バイバイ」は、妙に彼女が大人になった姿を連想させる響きを含んでいた。

 一人になり、再びあの少女の山車を瞥見すると、紙片を集めていた少女は路上で知り合いと――それが大人であったか同級生であったのか判然としなかったが――二言三言、会話を交わすと微かな笑みを残して足早に山車の裏側にまわり、据え付けの梯子をトントンと慣れた様子で登って楽屋に消えた。

 私は終焉の近づいた祭りの雑踏を散策した。

道なりに家の方に歩くと、またあの山車に出逢った。舞台の上は、年上の姉様方に交代していたが、歩道に緊張した一瞥を投げかけた少女だけが、まだ熱心に太鼓を叩いていた。彼女の顔は山車の支柱に遮られ、よくは見えなかった。

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今から日活映画『三徳和尚とその弟子たち』のロケ取材。ちょっとした小旅行である。
昨夜見た映画は『陰陽師Ⅱ』。感想はまた機会があれば。

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